第834話 半分を少し過ぎたって感じだな?
夕食を終えて部屋に戻ってきた。
「それじゃあ、今日も勉学に勤しむとしようか」
「この平静シリーズによって得られた高揚感が、どう影響するか……」
「まっ! 俺としては体を思いっきり動かしたい感じもしなくはないけど……この沸々と湧いてくるヤル気さえあれば、いくらでもできるって気がしてくるぜ!!」
「ほほう、それは頼もしいものだな?」
「まあ、とにかく始めるとしましょうか」
「よっしゃあ!!」
こうして俺たちは勉強を始める。
ちなみに、平静シリーズを装備することによって本当に勉強のヤル気がアップするかっていうのは……う~ん、微妙なところだね。
だって、そもそもはランニング用のアイテムなんだからさ……
とはいえ、この煮え滾る情熱を上手く利用することができれば、あるいは……そんな可能性が平静シリーズにはある。
なんてことを思いつつ……俺も勉強に対する集中力を徐々に上げていく。
そうやって頑張っておけば! エリナ先生に補習をしてもらったとき素晴らしい理解力だって感じで、いいところを見せることができるかもしれないからね!!
そんなこんなで、今日も2時間ほど勉強に取り組んだ。
「……ふぅ、とりあえずこんなもんかね……お前たちはどうだ?」
「ええ、ちょうど一区切りついたところです」
「すんません……俺はこの問題をを解くのに、もうちょっとかかりそうです」
「いや、焦らなくていいぞ?」
「しばらく考えて答えが出せなければ、一緒に考えるとしよう」
「どうもどうも、そんときはよろしく……だけど、俺ならできるはず! こんな問題に負けてられっか!!」
「うむ、その意気だ!」
「頑張れ!」
なんて声をかけつつ、ケインが納得できるところまで進むのを教本の続きを読みながら待つ。
「……ふぃ~っ! なんとか、俺だけの力で……やり切った……ぜ……!」
「……ん? おお、お疲れさん」
「ナイスガッツ……といったところだな、ケイン」
「おうよ!」
20分近く頭を悩ませていたようだが、ケインは無事やり遂げたようだ……おめでとう、だね。
そうして、次はマジックバッグから地図を取り出して広げた。
「ふむ……見たところ、メイルダント領まで半分を少し過ぎたって感じだな?」
「ええ、そうですね」
「そういや、もう半分を越えてたんだっけか! いやぁ、昨日今日とメッチャ頑張ったもんなぁ!!」
「うむ、昨日よりペースも少し上がっていたしな……俺から送る魔力にお前たちの苦手とする光属性が混ざっていたというのに、よく頑張っていたと思うぞ?」
「我々としても、アレス殿のご厚意に少しでも応えたいと思っておりますので……」
「まっ! そういうこったな!!」
「そこで、明日は……さらに光属性の魔力を多く混ぜてみてもいいが……今日と同じか、むしろ少なめにしてペースを上げて進めば、夜ぐらいにはメイルダント領に到着できるかもしれないな……」
「そうですね、私とケインの頑張り次第では……アレス殿のおっしゃるとおり、我がメイルダント領に着くことができるかもしれません」
「俺らの鍛錬が一番の目的なら、光属性の割合を増やしてもらったほうがいいんだろうけど……やっぱ、トードマンに返事をする期限まで時間が残ってそうだとはいえ、早めに到着しておいたほうが安心だよなぁ……?」
「そうだな……トードマン側が待ち切れず、返事を急かす可能性もあるだろうからな」
「……ッ!! た、確かに……あり得ない話では、ないでしょう………………ミカル……」
その場面を想像してしまったのだろう……ワイズが悲痛な表情を浮かべた。
まあ、これは最初から答えが決まっているようなものだったね。
「まっ! ここはやっぱ、ペースアップ一択って感じですね!!」
「うむ、議題に挙げるまでもなかったな」
「アレス殿、ケイン……私のために、重ね重ねかたじけない」
「気にすんなって! ですよね? アレスコーチ!!」
「ああ、まったくもってそのとおりだ」
「……ありがとうございます」
「それよか、ワイズ! こっからお前の人生を左右するぐらいの勝負が始まるんだ! もちろん、トードマンなんぞはたいした問題じゃねぇだろうけど! お前自身がミカルって子とどうなりたいのか、今一度しっかり考えるんだぜ!?」
「ケインの言うとおりだな……方法はいくらでもあるのだし、お前が本気であるなら! 俺たちも協力は惜しまん!!」
「今一度しっかり考える……はい、そうします!」
「くれぐれも、つまんねぇ遠慮はナシだぜ? あくまでも、お前自身の心の声を大事にな!!」
「ここまでのあいだにも熟考に熟考を重ねてきたのであろうが……今晩と明日1日! 全力で考え抜け!!」
「心の声を大事に……全力で考え抜く……」
こうして明日からの方針が決まったところで……
「さて……それじゃあ! 今日も魔力交流、行ってみようか!!」
「よっしゃ! 明日のペースアップのためにも、思いっきりやってやんぜ!!」
「ミカル……もうすぐ会いに行くぞ……」
というわけで、左右の手をそれぞれ隣の相手と合わせて円になって座る。
この努力が明日に活かされる……そんな気持ちを込めて俺たちは就寝までの時間、お互いに魔力を交流させるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます