第819話 旅の安全を祈っていますよ
「お前なら大丈夫だろうとは思っているが……気を付けて行ってこい」
「ええ、アレスさんにダメージを負わせることができる者など極々限られているでしょうからね……そうは言っても不測の事態が起こらないとも限らないので、旅の安全を祈っていますよ」
「ま、こっちのことは僕らが上手くやっとくから、安心して行ってくるといいよ!」
「セテルタさんの言うとおりだ! ビッシバッシ鍛えてやるぜ!!」
「僕らだってそれなりに指導力が磨かれていっているわけですからねぇ、みなさんにアレスさんの不在を感じさせずにやってみせますよぉ!」
「アレスさんに教えてもらったことを、しっかりみんなに伝えたいと思います!」
「……今回の旅をとおしてアレスたちは一回り大きく成長していることだろう……それに負けないよう、私たちも頑張るとしよう」
「旅の目的が一番望ましい形で達成されることを祈っているわ」
「そうだね! なるべく多くの人が笑顔になれたらいいなぁって私も思うよ!!」
「うむ! 聴き応えバッチリの結果を持って帰ってくるから、期待していてくれ!!」
ロイターたちからも言葉をかけてもらい、そろそろ出発しようかといったところ……
「さて……ワイズたちも挨拶は済んだか?」
「はい、最高の激励を皆から頂きました!」
「おう! 俺もバッチリですよ!!」
「よかろう……では早速! 行くとしようか!!」
「「はい!!」」
そうして俺たちはウインドボードに乗った。
「諸君もこれからウインドボードの操縦訓練をするようだが、しっかり頑張ってくれたまえ! そして、見送りありがとう! ではな!!」
「皆に感謝を……それでは!」
「こんなにたくさん見送りに集まってくれて嬉しいぜ! そんじゃあ、行ってくる!!」
「しっかりなぁ!!」
「ワイズ! お前の男らしさってやつをガッチリ見せつけてこいやァ!!」
「ぼんやりしてて、トードマンなんかに奪われんなよォ!!」
「ダセェ結果に終わったりなんかしたら、思いっきり笑ってやっかんな! 覚悟しとけよッ!!」
「ご武運をお祈り致す!!」
「ご武運……?」
「……はて? 何か変でしたかな?」
「ああ、いや……まあ、恋愛も戦いと言えば戦いと言えるか……」
「そうよ! 恋愛こそ、生涯をかけた戦い! ワイズ君、絶対に負けちゃダメよぉ!!」
「ワイズさんに想ってもらえてノーと言える子なんか、きっといません! 自信を持ってくださ~い!!」
「まあ、仮にダメだったとしても……私が慰めデートしてあげるわ」
「あっ! 抜け駆けする気!?」
「ワイズの傷心に付け込んでゲットしようだなんて、それはズルいんじゃな~い?」
「別に? 私は傷付いた男子の味方ってだけよ?」
「はぁ!? ナニソレ!?」
「なんか、いい女気取りの勘違い娘がここに1人おる……」
「あ、あの……それじゃあ僕……今まで女の人とお付き合いしたこととかなくて……もし、その……よかったら……デ、デ、デートとかをですね……その……して……いただけたら……あっ! 僕みたいな非モテが……すいません! すいません!!」
「……ふぅん? まあ、いいけど?」
「エッ!? ほ、ほ、本当……ですかッ!? やった……やったァァァァァァッ!!」
………………
…………
……
空に浮上しているあいだ、地上から歓喜の声が聞こえてくる……
うむ、よかったな、自称非モテ系男子よ……
まあ、その子が君の運命の相手となり得るかどうかは分からないが……とにかく! その機会を最大限に活かして、男としてグレードアップを果たしてくれたまえ!!
そして、俺たちの出発時にああやってデートのお誘いが成功したって状況が起こったことは、「この旅が成功しますよ!」って兆しのようにも感じられて、とても幸先がいいと思う。
とまあ、そんな感じで地上から離れて飛んでいるうちに、見送りに来たみんなの声が聞き取りづらくなっていく中、2人の様子を見てみたところ……
「ふむ……昨日の夜聞いたときは少々自信なさげのようだったが、ちゃんとウインドボードに乗れているじゃないか」
「そうですね……ただ、今のところスピードが極端に速くないからだとも言えます」
「だよなぁ……そんでもって当然アレスさんのことだから、こっからガンガン速度を上げて行くんですよね?」
「ああ、そのつもりではあるが……先にやっておきたいことがある」
「先にやっておきたいこと……ですか?」
「な、何をすることになるんだろう……」
「いやいや、そう身構えることでもない……ただ、これからスピードを上げて行くにしても、お前たちの魔力が早々に尽きてしまいそうだからな……そうなる前に、俺の魔力をスムーズに送れるようにしておこうと思うのだ」
「アレス殿の魔力を我々に……?」
「そ、そりゃあ俺たちの保有魔力量じゃ、メイルダント領まで何回休憩がいるか分かんねぇもんなぁ……特に速度を出そうと思ったら、ほとんど一瞬で使い切るって言ってもいいぐらいに魔力がもたないだろうし……」
「まあ、もちろんお前たちにも、空気中の魔素を取り込み体内で魔力変換をするっていうのを高いレベルでできるようになってもらうつもりではあるが……それなりに練習量が必要だからな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます