第811話 遅れて笑いが込み上げてくるってやつ!
「ただいま、キズナ君! 今日の練習会もメチャクチャ充実した時間だったよ!! それでさ……」
部屋に戻り、まずはキズナ君に挨拶。
そして寝る準備を整えながら、明日からしばらく留守にすることを説明した。
「……というわけでね、我が心の同志であるワイズに協力するため、メイルダント領に行くことにしたんだよ……それでたぶん、この学園に戻ってくるまで1週間程度はかかると思うので、そのあいだの留守番をお願いできるかな?」
先ほど聞いた話によると、目的地であるメイルダント領は馬に乗っての移動で往復1週間程度らしい。
そこで、ウインドボードでカッ飛ばせば、もっと移動時間を短縮できると思うので、トードマンを見定める時間も含めて1週間程度の日程を見込んでいるって感じだ。
ただまあ、植物が快適に過ごせる環境を整えてくれる魔道具を部屋に設置してあるので、何かトラブルが発生して1週間を超えてしまったとしても特に問題はないだろう。
「一応、目的を達成できたらダラダラせず速やかに戻ってくるつもりだけど……何かあって戻ってくるのが遅くなってしまったら、ごめんよ」
大丈夫だとは思っているが、念のため遅くなるかもしれないことを先に詫びておいた。
まあ、「1週間経ったのに、戻ってこない……」ってキズナ君に心配させてしまったら悪いもんね。
こうしてキズナ君に今後の予定を説明したところで、そろそろ精密魔力操作をして眠りに就くとしよう。
また、さっきワイズとケインに言ったように、俺もウインドボードに乗るイメージをしながら丁寧に魔力操作をおこなう。
やっぱりさ、「やれって言った本人がやってない……」ってなったら、2人からの信頼度が下がってしまうだろうからねぇ……そういうところは大事にしたいと思うんだ。
あと、限界スピードギリギリで飛ぶってなると魔力の消耗が激しいので、おそらく「魔力が足りなくて、もう飛べません……」という状態に2人が陥ってしまうことが考えられる。
そんな状態になっても飛行を続けられるよう俺が2人に魔力を送ってやるつもりなので、そういったイメージのトレーニングも予めしておく。
しかしながら……これなら、もっと早く魔力交流を練習会のメニューに組み込んでおけばよかったかなぁ?
そのほうが、スムーズに魔力を送れただろうからね。
とはいえ、やっぱりさ……基礎となる魔力操作を固めてからのほうがいいかなって思っていたのも確かだからなぁ……
ふぅむ……まっ! 練習会に参加してくれているだけあって、2人とも俺に反感を持っているわけではないし、それなりに魔力操作の自主練もしているようなので、最初は多少まごつくかもしれないけど、そうかからないうちに慣れて俺の魔力をスムーズに受け入れてくれるようになるんじゃないかな?
とまあ、そんなことも考えつつ、徐々に魔力操作の深度を深めていく……
そうして、今日という日が終わりを告げるのだった。
「……朝か……おはよう、キズナ君!」
まずはキズナ君に、目覚めの挨拶。
そして、じっくりと丁寧におこなった魔力操作のおかげで、バッチリ熟睡できたようだ。
加えて、今日は絶好のウインドボード日和と言えるほど空もスッキリと晴れ渡っている。
「うんうん……実にいい朝だね」
といいつつ、雨でも雪でも魔纏で弾くことができるので、たとえ天気が悪かったとしてもどうってことはない。
だからまあ、気分の問題って感じかな?
ただし、魔法の生成にはイメージも大事な要素なので、やっぱり気分がいいほうがいい魔法を生成できるってことはあるだろうけどね。
そんなこんなを考えながら準備を済ませ、いざ朝練へ!
「それじゃあ、キズナ君! 朝練に行ってくるよ!!」
こうして今日も、いつものランニングコースへ向かう。
ああ、そういえばファティマにも「メイルダント領に行くから、しばらく朝練に来ない」って言っとかなきゃだろうなぁ。
まあ、特別に説明しなくても、すぐ分かることだろうけどね。
「おはよう、今日もいい天気ね?」
「おう! まさしく快晴って感じだな!!」
なんて挨拶を交わし、早速ランニングを始め……それと同時に昨日の大浴場であったワイズのお悩み相談会の話をした。
「なるほど、それでミカルという子に婚約を申し込んだベイフドゥム商会の放蕩息子と言われている人の人間性を見定めに行くと……」
「ああ、そんな感じだ」
「……ふふっ」
「ん? どうした、急に笑い出して……ああ、そうか! ここにきて、トードマンのイメージがクリティカルヒットしたんだな!?」
そうそう、たまにあるんだよなぁ、こうやって遅れて笑いが込み上げてくるってやつ!
いやぁ、トードマンについて話しているあいだなんだけど、特別ファティマの反応に変化がなかったからさ……てっきりスベったかと思ってたんだよね。
でもまあ、そこはやっぱりトードマンの底力を見せてもらったって感じかな? 最終的には、キッチリと笑いをかっさらって行ってくれたよ。
「いえね……やっぱりアレスは面倒見がいいと思って……」
「……なッ!?」
「ふふっ……」
結局トードマンは不発だったらしい。
きっと敗因は、奴がギットギトに脂ぎっていたからだろう。
だからスベった……そう思わずにはいられなかった。
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