第810話 価値のある経験だったと言える時間にしような!!

 ハートウォーミングなリラックスタイムを満喫し、今日のところは解散しようかといったところだ。


「アレスさん、しばらくのあいだお手数かけることになりますが……よろしくお願いします」

「俺のことも! よろしく頼みますよ!!」

「うむ! ワイズは当然として、ケインにとっても価値のある経験だったと言える時間にしような!!」

「「はい!!」」

「よっしゃ! そんな感じで明日は、授業を受けて昼食を済ませたあと1時に学園の正門前辺りに集合で間違いないな!?」


 明日は光の日、前世で言うところの金曜日なので、週ラストの授業ぐらいは受けてから行こうぜって感じだ。

 これはまあ……俺が少しでもエリナ先生の授業を受け損ねたくないからってだけのワガママでもある。

 とはいえ、ウインドボードでガンガン飛ばして行くつもりなので、午前中のロスぐらいはたいした問題でもないだろう。


「はい、明日の1時に学園の正門前で間違いありません」

「まあ、俺がメインじゃないってことは承知してるつもりだけど……それでもやっぱ! なんだか今からドキドキしてくるってもんだぜ!!」

「早速明日から飛ばして行くのだ……そのとき『興奮していて眠れませんでした』などとほざいても、無視して置いて行くからな? それが嫌だったら、シッカリ眠ってコンディションを整えて来るんだぞ!?」

「ウインドボードですか……私も経験がないわけではなりませんが、果たしてアレスさんのスピードにどこまで付いて行くことができるか……」

「ハハッ! ある意味、移動から早速アレスさんの気合がバッチバチに入った指導を受けられるってわけだ! こんな経験、なかなかできるもんじゃねぇな!!」

「あ、そっか……明日からしばらくのあいだワイズとケインは、ほとんど1日中付きっ切りでアレスさんの指導を受けられるみたいな状態になるのか……」

「凄く……凄そう……」

「うぅむ……こりゃ、俺たちも気合を入れて鍛錬を積んでおかないと、ワイズたちが学園に戻ったとき物凄い差を付けられてしまっているかもしれないなぁ……?」

「たぶん……いや、もうこれは絶対に、2人の魔力操作に対する姿勢が途轍もないレベルで変貌を遂げているだろう姿が想像できちゃうね……」

「僕らだって、魔力操作に対する意識はそれなりに高まっているとは思うのですがねぇ……」

「とはいえ、アレスさんレベルの本気さには、まだまだ程遠いのも確かだからなぁ……」

「その辺のところを、ワイズとケインは徹底的に叩き直してもらうことが確定してるってわけだな……」

「う、う~ん……羨ましいような……恐ろしいような……」


 まあ、少なくとも移動中は、食事とか多少の休憩時間以外ずっと限界スピードギリギリでウインドボードを操作することになるだろうね。

 そして心身の回復を促すため、魔力操作も徹底的におこなって行くことになるだろう。


「フッ……だから言っただろう? 価値のある経験だったと言える時間にするとな! まあ、明日のためにも、今晩眠りに就くまでのあいだ、ウインドボードに乗るイメージをしながら丁寧に魔力操作をするといい!!」

「ウインドボードに乗るイメージをしながら丁寧に魔力操作を……はい、必ずやっておきます」

「うっしゃぁ! イメージトレーニングは大事だもんな!!」

「なぁ……ついでだから、俺らもやっとく?」

「おっ、そうだな!」

「どうせだから、ボクらも明日は午後からウインドボードに乗る練習をしちゃおっか?」

「あ、それイイ!」

「ナイス、アイディア!」

「ふむ……将来的にも、機動力を高める訓練をしておいて損はなさそうだ……」

「そんじゃあ! アレスさんたちを見送るついでに、俺たちも空の男になっちまおう!!」

「あ、えっと……僕、ウインドボードってやったことないんだよね……」

「そうなのか? なら、いい機会だから乗れるように練習しとこうぜ?」

「微力ながら、私も乗れるようお手伝いしますよ」

「……わりぃ、実はオレも初めてだから、一緒に教えてくんね?」

「よっしゃ、任せとけ! そんでこの際だから、みんなでとびっきりの空の男になってやろうじゃないか!!」

「「「おう!!」」」


 ほうほう、学園都市に残るみんなも、なかなか楽しそうなことをしながらレベルアップを図るようだ……実に素晴らしい。

 そんなこんなで、未だワイワイとした興奮を残しつつ俺たちは解散した。

 そして、それぞれの部屋への分かれ道があるたび人数が減っていき……最終的に部屋の近いロイターたちだけとなった。


「ふむ……今回もまた、別行動といったところか……」

「そういえば最近……あまりパーティーでの活動ができていなかったかもしれませんね?」

「まあ、僕やヴィーンたちも一緒に行動するようになってきてたし……さらに武闘大会を機に、一気に人が増えたもんねぇ?」

「ロイターよ……寂しい思いをさせてすまんな! 今度学園都市に戻ったとき冒険者ギルドの依頼を受けるとか、どっかモンスター狩りにでも行くかしようじゃないか!!」

「寂しい思いなどと、妙な言い方はヤメロ……だがまあ、依頼なりモンスター狩りなり行くのは悪くないな」

「そうですね、ファティマさんやパルフェナさんも楽しみにしてくれるのではないでしょうか」

「ま、たまにはコアメンバーだけで活動するのもいいだろうし、そのとき僕らは遠慮しておくとしようかな? といいつつ、また違うときは合同で依頼とかを受けようね!」

「ああ、セテルタやヴィーンたちと合同で依頼を受けるのも楽しそうだし! ぜひともやろうじゃないか!!」


 こうして、その先の約束なんかもしつつ、俺たちはそれぞれ自室に向かって別れたのだった。

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