悪役転生者は自由人～原作ゲームのシナリオを無視して行動したいと思います～

第793話 私も日の光に感謝を捧げてみようかしら

「おはよう、キズナ君！　今日も気合一発、元気に行こうぜ!!」

　というわけでキズナ君に朝の挨拶をしつつ、風の日が始まる。

　まあ、風の日は前世で言うところの木曜日に当たるわけで、明日の光の日は金曜日となる。

　その次の闇と無の日が土曜日曜となる。

　そんでもって前世と同じように、その週の授業は光の日で終わりとなる。

　この辺はおそらく、原作ゲームの開発陣が現代日本のシステムをそのまま真似たんだろうなって感じだ。

　しかしながら、この学園は授業が午前だけで終わってしまう……

　それはつまり！　エリナ先生に会えるオフィシャルな機会が午後からは用意されていないってことだ!!

　なんてことだよ！　まったく!!

　それに加えて、聞いたところによると……前世の土曜日にも、昔は学校の授業があったらしい！　なんですって!?

　その時期のシステムを原作ゲームの開発陣が真似してくれていれば！　この世界の闇の日にも授業があったかもしれない!!

　そうなってくれていれば！　俺はもう1日多くエリナ先生に会えていたかもしれないじゃないか！　チクショウ!!

　前世で「学力低下」がどうのこうのとか言われていた気がするけどさ……俺は思うんだよ「そりゃ学校が休みなら、勉強しないで遊ぶだろ！」ってね!!

　もちろん、自己規律のしっかりできる鋼のハートの持ち主なら、自学自習とかできていたと思うよ？　前世の俺はできなかったけどね！

　だからさ、学校が休みで勉強をしてなかったら学力が落ちる……当たり前のことでしょって感じだよ！

　ハァ～ァ！　結局のところ日本人の学力を伸ばしたいなら、土曜日も学校やんなさいよって言いたい!!

　そして！　この世界にもその状況が反映されて！　闇の日も授業があってくれ!!

　とまあ、前世の世界で暮らしていた俺なら絶対に思わないであろうことを心の中で叫んでみた。

　さらに言うと、教える教師がエリナ先生でなければ、「授業があってくれ！」なんて確実に思わなかっただろうし、むしろ「もっと休みプリ～ズ！」と叫んでいたかもしれない。

　ああ、いや……エリナ先生に限らず、ステキなお姉さんに教えてもらえるなら、俺としては大歓迎だけどね！

「フゥ～ッ……キズナ君……俺は今、物凄く自分勝手なことを考えていたよ……ヒドイ奴だと笑ってくれていい……」

　まあ、そもそも論として、エリナ先生に会いたいなら授業がなくても研究室に行けばいいだけだろうからね……とはいえ、微妙に律儀な俺としてはさ、特に理由なく会いに行くのは迷惑になりそうで気が引けちゃうんだよね……

　それから、もし仮に俺の願いが通じて前世日本の学校に土曜授業が復活してしまったら……俺はなんと言って授業嫌いの若者たちに詫びねばならなくなるのだろうか……その状況を想像するだけで、恐ろしさが込み上げてくる。

　ふむ、かくなる上は……転生神のお姉さん！　もし地球を管轄している神的存在とアクセス可能なのだとしたら、このリクエストは通してくれなくて大丈夫です!!

　こうして念のため、転生神のお姉さんにイメージの中で伝えてみたところ……苦笑いを浮かべておられた。

　う、うん……たぶんこれで問題ないだろう……と思いたい！

　もし、土曜授業が復活してしまったら……前世の若者たちよ！　ごめんね!!

　なんてことを考えながら、朝練に向けた着替え等の準備を済ませた。

「それじゃあ……朝練に行ってくるよ！　キズナ君!!」

　そうして声をかけ、いつもの朝練コースへ向かう。

　そしてまだ明日授業はあるけど、今週の闇と無の日は何をするか、今から多少は考えておいてもいいかなって感じだ。

　と言いつつ俺のことだから、やることと言えば自主練か……森にモンスターをシバキに行くぐらいになりそうだけどね。

　あとはそうだな……座学の成績が悪くならないよう、勉強もしとかないとねってところだろう。

　ふぅむ……こんな勤勉マンの名をほしいままにしていると言っても過言ではない俺の姿を前世の俺が見たら、ビックリしちゃうかもしれないね！

　こんなふうに、俺が真面目でいられるのはエリナ先生のおかげもあるし、アレス君という高スペックな体に転生してきたからっていうのも大きいだろうね……まあ、転生直後はダイエットに苦労させられたけどさ……

　まっ、とにかく！　日々を楽しく過ごさせてもらっているこの世界に感謝だね!!

　この世界に送ってくれて、ありがとうございます！　転生神のお姉さん!!

「おはよう……日の光がもうひとつあるのかと思うほどの眩しさね？　まあ、さすがにそれは言い過ぎだけれど」

「……ん？　ああ、こうして今日も元気に朝の日を拝めることに感謝していたのさ」

「そう、なかなか良い心掛けね……ここはひとつ、私も日の光に感謝を捧げてみようかしら」

「おう、それがいい！」

　そうしてファティマと並び、改めて感謝の祈りを捧げる。

　また、周囲の茂みなどからも、うっすらと光の魔力が感じられるので、おそらくファティマヲタたちもファティマの真似をして祈りを捧げているのではないだろうか。

　まあ、彼らの場合は日の光にではなく、ファティマに対して祈りを捧げてそうだけどね……