第790話 察しが悪いのは俺たちなのに……
「よっしゃ! 今日のお勉強はこんなもんでいいかな!?」
昼食を終えて自室に戻り、3時間ほど座学に費やしたのだった。
「やっぱりさ、エリナ先生に『予習復習をきちんとこなして授業に臨んでますよ!』ってところを見せたいもんね!!」
そんなことを呟きつつ俺は、ペンからマラカスに持ち替える。
ああ、マラカスっていうのはもちろん、トレントブラザーズのミキジ君とミキゾウ君のことである。
夕食後の練習会に向けて、なるべく上手くみんなに教えられるよう二刀流の練習を重点的にやっておこうと思ってね。
というのが、今朝ファティマに聞いた話によると、令嬢たちの中から「二刀流を学んでみたい」ってリクエストの声がいくつか上がっていたみたいだからね、その希望に応えましょうって感じなのさ。
「それでは、本日もよろしくお願いします! レミリネ師匠!!」
そうして、イメージのレミリネ師匠との稽古が始まる。
また、今日の稽古は模擬戦をメインとせず、組演武のような型重視の内容にしてもらった。
まあ、夕食後の練習会で教えるのは、現段階だと型が中心になるわけだからね。
それに俺自身、こうやって定期的にきちんとした型の動きを再確認しておくのも悪くはないだろうと思うし。
そうじゃないと、実戦重視と言えば聞こえがいいだけの型が崩れた動きになっていっちゃいそうだからねぇ。
「……ハッ! セイッ!!」
こうして一振り一振り、噛み締めるような丁寧さで型の練習をしていく。
そんな濃密な時間が夕食前まで続いていくってわけだね!
「……ハァ……ハァ……今日も、稽古を付けて頂き……ありがとう、ございます!!」
もしかしたら「型だけで、そんなに息が上がるものなの?」って思われるかもしれないが……自分の身体をどこまでも細かく注視しながら動くとなると、想像以上に精神的疲労がくるものである。
そのため、「細けぇこたぁいいんだよ!」ってな感じでモンスターを気の赴くままにシバキ倒したほうが楽だとさえ言えるかもしれない。
まあ、実力上位のモンスターに無策で突っ込んで行ったら返り討ちに遭うかもしれないので、相手にもよるっていうのは大前提だけどね……
それはそれとして、これだけ密に型練習をしておけば、夕食後の練習会でも安心だろう……
というわけで、参加者のみんな! 今日から二刀流の練習も入れていくので楽しみにしててくれよな!!
そんなこんなで浄化の魔法で身体を清潔にし、男子寮の食堂へ向かうとしよう。
フフッ……今日もしっかり運動したから、夕ご飯も美味しく食べれるよ! やったね、腹内アレス君!!
そしてルンルン気分で食堂に到着し、気分に任せて料理を皿に盛りつけていったところで……ロイターたちのいるテーブルに着席。
「ふむ……機嫌がいいようだな?」
「そのようですね」
「ほう……分かるか?」
「まあ、お前ほど分かりやすい男もなかなかいないのではないか?」
「……なッ!? 分かりやすい……だと……?」
クッ……このクールフェイスのアレスが……なんたる言われよう……
「まあまあ、僕らはアレスさんとの接点が多いからということもありますし……そう落胆せずとも……」
「……おっ! ここだったか!!」
ここで、ヴィーンたちもやってきた。
「この感じ……どうやらまた、アレスさん検定をして遊んでいたようですねぇ?」
「アレスさん検定かぁ……僕もそろそろ2級に挑戦してみてもいい頃合いかもしれませんね」
「……私もアレスのように、言葉によらずとも想いを伝える能力に長けていれば……」
「あっ、いえ! ヴィーン様、そんなことは……!!」
「そ、そうですともヴィーン様ぁ! それは我々の推し量り力が劣っていただけのことですからぁ!!」
「そもそも僕は、あのアレスさん検定でさえ3級の推し量り力しかありませんでしたし……」
「……そうか、そうだな……おそらく私は、ずっとお前たちの推し量り力に甘えていたのだろうな……そして当然、お前たちの推し量り力は劣ってなどいない……あくまでも私の伝える能力が劣っていたのだ」
「ヴィーン様、そりゃ優し過ぎるってもんだぜ……察しが悪いのは俺たちなのに……」
「そんなお優しいヴィーン様にぃ! 我々は一生ついて行きますよぉ!!」
「ずっとお傍に!!」
「……そうか……ありがとう」
「まあ……お前たち4人の絆がより深まったのであれば、よかったのではないか? うむ」
「主従の絆……それは時として、親子や夫婦の絆をも上回るものだと言われていますからね……僕もヴィーンさんたちを見倣わせていただこうと思います」
「とりあえず、お前たちの美しい絆を見せてもらったのはいいとして……ソイルよ、『あのアレスさん検定でさえ』という表現に引っかかりを覚えたのだが?」
「……あっ!? えっと、それはその……あはは……すいませんでしたぁ!!」
「この調子だと、2級はまだまだお預けってとこだろうな?」
「そのようですねぇ……」
「……ソイル、頑張れ」
とまあ、こうして俺たちはノリに任せたおしゃべりを楽しみつつ、夕食の時間を過ごしたのだった。
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