第785話 至って正常だ
「アレス様! 今日はステキな時間をご一緒させていただき、ありがとうございました!!」
「うむ、こちらこそだ」
「そして、夕食後の練習会にも! 必ず参加させていただこうと思っておりますので、そのときはまた! よろしくお願いします!!」
「ああ、無駄な時間だったと後悔させないよう、俺も気持ちを込めて教えさせてもらうとしよう」
「そんなそんな! アレス様にご指導いただく時間が無駄だなんて、そんなこと絶対にあり得ません!!」
「そうか……そう言ってもらえると、こちらもより一層気合を入れて臨まねばならんな! それと、身の回りでレミリネ流剣術に興味を持っていたり、魔法の研鑽を積みたいと言っていたりする友人知人がいれば、声をかけてやってくれ」
「はい! お任せください!!」
「おお、元気があって、実に頼もしいな」
「はい! 私にあるのは元気ぐらいですから!!」
「ふむ……その元気こそが全ての始まりであろうし、最後の最後で勝負を分ける要因にもなり得るだろうからな、その素晴らしい資質を大事にするといい」
「……いつも……いつも、うるさいだけって言われてきた私に……なんと嬉しいお言葉……はい! 私は自分の元気に誇りを持ってこれからも生きて行きます!!」
「うむ、ひとまずは夕食後の練習を元気に励む姿を見せてくれればと思う! それでじゃあ、またな!!」
「はい! それでは、失礼致します!!」
こうして昼食を食べ終え、俺たちは中央棟からそれぞれ男子寮と女子寮に向かって別れた。
そしてまた1人! 夕食後の練習会への参加者が増えた、やったね!!
まあ、あの様子から、ほかに何人か連れて来てくれそうな雰囲気もあるので、さらに期待が膨らむというものだ。
よしよし……これでしっかり教えて行って「学んでよかったレミリネ流!」ってみんなに思ってもらえるようになったら、言うことなしだね!
ただ、それには俺もレミリネ流剣術についてより深く、深~く理解して、みんなに分かりやすく伝えられるようにならねばなるまい!
であるならば!?
練習あるのみ!!
というわけで俺はまず、自室までの道のりをレミリネ師匠との稽古を脳内で何度も何度も反芻しながら移動。
「……ッ!?」
「こ、このピンと張り詰めた空気は……魔力操作狂いから?」
「なんて真剣な雰囲気なんだ……」
「えぇ~そうかぁ? いつもどおり、傲慢丸出しのツラで歩いてるってだけだろ」
「……やっぱ、そうだよなぁ?」
「お前たち……本当に分からないのか?」
「魔力操作狂いの全身から臨戦態勢バリバリの魔力がほとばしっているというのに……」
「でも、どうしてだろう……彼から感じられる魔力は、鋭くも温かい……」
「はぁ? なんだそりゃ……変なもんが視えてるんだったら、ポーションでも飲んで……いや、教会に行って祓ってもらったほうがいいか……でも、それはさすがに大げさか……まあ、とりあえず医務室の先生に診てもらったらどうだ?」
「そういや、お前ら……ここ最近『魔力操作がアツい!』とか抜かしてたよな? それの副作用で変なもんが視えちまってんじゃねぇか? まあ、そういう症状は、どっちかっていうと魔力の扱いに慣れてない平民共に起こることが多いらしいけどな……」
「いや、俺たちに問題はない……至って正常だ」
「ああ……むしろ魔力操作狂いから発せられている魔力に何も感じることができていないお前たちは、危機感を持つべきだろう」
「そうだね……魔力操作に真剣に取り組めば取り組むほど、彼と僕らの差に大きな隔たりがあることを気付かされるばかりだ……」
ほう、ここにも魔力操作に目覚めた男たちがいるようだ……感心感心。
とまあ、そんな会話も耳にしつつ……自室に到着。
「ただいま、キズナ君! いやぁ、今日もエリナ先生は最高に輝いていたよ!!」
そう挨拶をして、まずは机に向かう。
まあ、ここしばらく武闘大会メインの生活を送っていたため、そのぶん勉強時間のほうが圧迫され気味になっていたからさ。
気持ちとしては、夕食後の練習会に向けて即行で自主練を開始したかったのだけど、さすがにねぇ。
それに、座学の成績が悪いとさ、「脳筋アレス」って呼ばれるかもしれないし……
いや、「魔力操作脳アレス」のほうがあり得そうだな……
う~ん、それだと……いつもの魔力操作狂いと大して変わんないかぁ……
おっと、余計な思考に集中力を持っていかれるわけにはいかない!
……そんなこんなで、3時間程度を勉強に費やしたのだった。
「フゥ……我ながら、なかなか頑張ったのではないだろうか……」
それはそれとして……お待ちかねの! 自主練ッ!!
「それでは、レミリネ師匠! 本日もよろしくお願い致します!!」
そうして、早速イメージのレミリネ師匠に稽古を付けてもらう。
フフッ……シュウの奴も武闘大会のとき、レミリネ師匠の姿がまた少しはっきりしてきたと言ってくれたしな!
そんなふうに言ってもらえれば、俺がイメージするレミリネ師匠の姿も! より一層鮮明になってくるというものだよ!!
というわけで、夕食後の練習会のためでもあるが、何より俺自身の喜びのため、イメージのレミリネ師匠との稽古に全力で取り組むのだった。
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