第780話 初心に返って
「皆さん! また明日もよろしくお願いします!!」
「「「よろしくお願いします!!」」」
「おう! 明日も有意義な時間を共に過ごすぞ!!」
リラックスタイムを終えた俺たちは解散し、各自の部屋に戻る。
そこでまず、部屋が比較的近いロイターたち以外の男子たちと別れた。
「フゥ……今日も充実した1日だったなぁ!」
「まあ、お前としては早速レミリネ流剣術を学ぶ時間としたかったのだろうが……今日のところは、特定の剣術流派にこだわらない基礎力を養成する時間となってしまったな?」
「そうですね……あれだけぎこちない動きの方がいらっしゃると、それも致し方なかったといわざるをえなかったでしょう」
「まっ! とはいえ、俺らとしても初心に返って剣の道を見つめ直すことができたって考えれば、むしろよかったんじゃねぇか?」
「加えて、人に教えようと言語化を試みる際、今まで自分がなんとなくでしか理解できていなかった部分を明確にすることもできましたねぇ」
「そうそう! なんとか分かりやすく説明しようとして、あのときは頭がフル回転してたと思う!!」
「……言葉は難しい」
「ヴィーンはそう言うけどさ、練習中チラッと見た感じ、余計な言葉がないぶんポイントが押さえられていたと思うし、相手の令嬢も分かりやすかったんじゃないかな?」
「……そうか……そうであるならよかった」
「ああ、セテルタの言うとおりだ! そして口数こそ少ないものの、ヴィーンの言語センスはいつも俺の耳を鮮やかに刺激してくれるからな、自信を持つといい!!」
そう言いつつヴィーンの肩に右腕を回して組み、手のひらで肩の辺りをビタンビタン叩いたった。
「……鮮やかに刺激……そうか……鮮やか……うむ」
そしてヴィーンは、俺の言葉を噛み締めるように咀嚼してくれているようだ。
「またアレスさんは……」
「ほ~んと暇さえあれば、ヴィーン様と肩を組もうとするよな?」
「まったくもって、距離が近過ぎますねぇ……」
そこでソイルたちがジト目を向けてくる。
「……私は、別に嫌ではない……お前たちも、肩を組みたければそうして来ていい」
「ほぅら? ヴィーンもこう言っているだろう?」
「そ、そうは言いましても……」
「……なぁ?」
「というか……そもそも論として日常的に肩を組みたくなる衝動に駆られることなど、そうはありませんからねぇ……」
とかなんとか言っているうちに、ヴィーンたちの部屋に向かう道との分岐点に差し掛かった。
そのため、ヴィーンと組んでいた腕を解きつつ、挨拶をして別れた。
「それにしても……ヴィーンの口数もだいぶ増えてきたよね?」
「まあ、そうだな」
「ええ、以前はもっと寡黙な方でしたものね……」
「それもアレスの影響力の強さあってのことって感じだね、凄いもんだよ」
「まあ、見る者によっては、単に馴れ馴れしいだけだと思うかもしれんがな……」
「実際、先ほどのモミジ祭り然り、アレスさんはスキンシップが激しいですからね……」
「なんだ、お前たち……もう、おかわりが欲しくなってきたのか? まったく欲しがりさんたちだなぁ? まあ、今日のところは我慢しておきたまえ、明日ちゃ~んと続きをあげるからな?」
「フフッ……そうかい、明日が楽しみだねぇ!」
「モミジ祭りのことはともかくとして……今日の様子から考えて、明日はさらに参加希望者が増えそうだな?」
「ええ、間違いないでしょう……運動場の広さ的にスペースの問題はそこまでないと思いますが……かといって人数が増え過ぎると、そのうち僕らだけでは対応しきれなくなるかもしれませんね……少なくとも、今日みたいな付きっきりで教えるのは難しくなる気がします」
「なるほど、一人一人に目が届きづらくなるというわけか……」
まあ、ロイターみたいなイケメンたちに間近で指導を受けられると聞いたら、そりゃあ参加したくもなるだろうな……
「まあ、僕らも教え方を試行錯誤して行くって感じになりそうだね」
「ふむ……となると、教師陣の教え方なども参考とすべく、今まで以上に集中して授業を受けたほうが良さそうだな」
「そうですね、エリナ先生の教え方などはとても分かりやすいので、ぜひともマネしたいところです」
「おぉっ、サンズ! よく分かっているじゃないか! そのとおり、エリナ先生の授業は完璧にして最高だからな!!」
「アレス……テンション上がり過ぎ」
「お前という奴は、まったく……」
「とはいえ、これまでのアレスさんの好成績は、授業を受ける熱心さによるところもあったでしょうからね……」
「うむ、サンズの言うとおりだ! それに俺が魔力操作に本気で目覚めたのは、エリナ先生おかげでもあるしな!!」
「アレスを魔力操作に目覚めさせた……そう聞くと、インパクト大だろうね」
「そういえば、お前……入学したての頃、授業中に魔素を取り込み過ぎて危うく体を自壊させそうになったことがあったな?」
「えぇ……アレスさんにもそんな頃があったのですね……」
「そういえば、あったな……あのときエリナ先生に止めてもらっていなければ、どうなっていたことか……」
「……ああ、思い出した! 確かあのとき、メチャクチャ汗だくになってたよね?」
「うむ、一人サウナ状態だった……懐かしいものだ」
そんなことを話しながら、それぞれの部屋が近くなったところで挨拶をして別れた。
そして、入学したての頃のことを思い出したところで、今夜は初心に返って丁寧に精密魔力操作をして寝るとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます