第781話 ここは挑戦してみるとしますかね!!

「おはよう、キズナ君! 今日からまた、学園の通常授業が始まるよ!!」


 というわけで、キズナ君と目覚めの挨拶を交わした。


「うぅ~ん、昨夜の精密魔力操作は格別だったみたいでさ、超グッスリ眠れたんだよ! キズナ君はどうだったかな?」


 だぶんだけど、この部屋を穏やかな雰囲気が満たしていることから、キズナ君も健やかに夜を過ごせたのではないだろうかと思う。

 そんなことを思いつつ朝練に向けた着替え……というか、寝るときから着ていた平静シリーズのインナーウェアとジャージのほかにヘアバンド、サングラス、靴下、ランニングシューズを身に付けていく。

 フッ……これぞ男の身嗜みってわけだね。


「どうだいキズナ君、今日の俺もバッチリ決まっているだろう?」


 なんてゴキゲンでキズナ君に問いかけてみるが、もちろん言葉による返事はない。

 とはいえ、マイナスイオンとでも言えばいいのか、そういうイイ感じの雰囲気が感じられるので、おそらく同意してくれていることだろう。

 それはそうと……俺も武闘大会を経て、感覚的にいくらかレベルアップできたような気もするので、そろそろ平静シリーズの7つ目に挑戦してみてもいいかなぁ?

 それに、季節も冬になりつつあるわけだから、装いも冬らしくしていくのもアリだろう。

 そう考えると、ウインドブレーカーをプラスするか……いや、まず先に手袋からでもいいな。

 ああ、それならヘアバンドも、そろそろニット帽に変えてもいいかも。

 まあ、今日はもうヘアバンドを装備したから、このままで行くけどね。

 それから、各種ウォーマーは……うぅむ、これはもっと寒くなってからでもいいかな。

 とかなんとか考えているものの、実際のところ魔纏で冷気を遮断できるし、火属性の魔力を上手く使えば寒さなんか一切関係なくなるんだけどね。

 すると結局のところ、防寒対策よりもオシャレに重点を置くって感じかな?

 そして当然のことながら、身に付ける平静シリーズを1つ増やす……それも数が多くなるごとに、どんどん魔力の扱いの難易度が跳ね上がっていくので、7つ目ともなると物凄いことになりそうである。


「まっ、物は試しだ! ここは挑戦してみるとしますかね!!」


 なんて思いつつ、手袋を装備してみたところ……


「……うぉっ!? これは……なかなか……」


 一気に全身を巡る魔力が重くなった感じがする……

 6つ目から、たった1つ増やすだけでここまでとは……


「フッ、フフッ……平静シリーズ……相変わらずのグレイトさだぜ……!!」


 ただまあ、魔力操作の難易度がギューンって感じで上がったものの、走ること自体はなんとかできるだろうと思われるので、このまま朝練に向かうとしようか……

 それに、どうしても無理ってなったら、手袋なりサングラスなり簡単に外せそうな物を外せばいいだけだもんね!


「てなわけで朝練に行ってくるよ! キズナ君!!」


 そうしていつものコースへ向かった。

 そこには、俺と同じように平静シリーズに身を包みながらもなお、きゅるんとした少女がいる……それはもちろん、ファティマだ。


「おはよう……そして遂に、7つ目に挑戦といったところかしら?」

「おう、よく分かったな! ……おやっ? そういうお前も、6つ目に挑戦したみたいだな?」


 まあ、お互い、いつもの装いに手袋を増やしていたので気付いたって感じかな。

 ちなみに、これまでファティマはインナーウェアにジャージ、ニット帽、靴下、ランニングシューズの5つを装備していた。

 そこでニット帽についてなんだけど、デザインがね……両端に猫耳みたいな形のとんがりがあるんだよ……これはあざとい! あざといよファティマさんっ!!

 いや、まあね……ファティマが猫耳ニット帽を被り始めてから、ある程度は時間が経っているので、俺自身それなりに見慣れてはいるんだけどね……

 ただ、その辺の茂みからひっそりと眺めているであろうファティマヲタたちは未だに慣れることなく、きゅんきゅんしちゃってるんだろうねぇ……耳をすませば、彼らの鼻息が聞こえてきそうな気がしてくるぐらいだしさ……

 そんなこんなでファティマにジト目なんかも向けられつつ、本日の朝練も元気にスタート。


「ふぅ……これは慣れるまでは、しばらく大変そうね……」

「ああ、そうだな……」


 もちろん、ファティマのきゅるんとした見た目についてではなく、平静シリーズによる負荷に対しての話である。


「とはいえ、ノアキアたちも先へ進むべくさらに、さらにと鍛錬を積んでいくはず……それに、これから夕食後の練習会に参加を希望する人も増えていくでしょうからね……私たちも、ずっと同じところで足踏みしたままではいられないわ……」

「うむ、そのとおりだ……ライバルたちに負けてもいられんし、一歩先に進む者として背中を見せ続ける必要もあるだろう……そうでなければ、せっかく芽生えた彼らの興味も萎んでしまうだろうからな……」

「ええ、男女問わず、みんなにはもっともっと大きくなってもらいたいものね……」


 ま、まあ、それは人としての器の話で、身体のサイズの話ではない……ハズ!

 といいつつ、この世界で身体のサイズをデカくするのっていうのは難易度が高いというか……もう、ほとんど才能だろうね。

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