第773話 基礎の基礎から徹底的に行くぞ!!

「こんばんは、アレス様! そして、今日はよろしくお願いします!!」

「「「よろしくお願いします!!」」」

「……うむ! こちらこそ、よろしくだ!!」


 運動場に到着してみると、ハンナをセンターとして数人どころではない人数の令嬢たちがスタンバっていたのだった。

 ざっと見た感じ、30人……いや、それ以上かもしれない人数がいることに驚きつつ、そしてこれだけの令嬢がレミリネ流剣術に興味を持ってくれたということに嬉しさも感じる。


「それにしても、ハンナよ……今日1日でよくこれだけの人数を集めることができたものだな?」

「そんなそんな! 私はただ、同じクラスの友達に声をかけただけですよ!!」

「ほう、そうか……いずれにせよ、こんなにたくさん集めてくれてありがとう! そして、集まってくれた皆にレミリネ流剣術の素晴らしさを少しでも感じ取ってもらえるよう、俺も心を尽くして教えさせてもらうとしようじゃないか!!」

「はい! ありがとうございます!!」

「「「ありがとうございます!!」」」


 ひょっとするとハンナは……クラスでリーダー的な立場なのかもしれないな。

 たぶん、今回集まっている令嬢の多くは同じクラスの子たちなのだろうし。

 とまあ、そんなこんなで軽く挨拶を済ませたところで、さっそく練習開始。

 ああ、ちなみにだけど、今回から参加するのは令嬢たちだけではない。

 武闘大会の予選で俺と対戦したビムたちなど、男子の参加者たちもいるのである。

 まあ、その全員がレミリネ流剣術習得を目的としているわけではなく、模擬戦参加が主な目的の者も当然いるだろう。

 とはいえ、なんにせよウォーミングアップとして素振りや型の練習なんかをする時間も最初に設けているので、興味があればレミリネ流に触れてみてくれたまえって感じだ。


「さて、どこから教えようか……とりあえず皆、基礎的なことは学園の授業で習っていることとは思うが……念のため現状を把握しておきたいので、ひとまず素振りをするところから見せてもらうとしようか」


 というわけで、互いにぶつからないよう間隔を空けて並んでもらい、素振りを開始。

 そして、その姿を見てみた感じ……ある程度経験者って感じの動きを見せる子もいるが、どっちかっていうと初心者に近い動きの子のほうが多い印象だ。

 まあ、もともと魔法戦闘がメインだって子もいるだろうし、基本的に戦闘は男のものって風潮もあったからねぇ……ぎこちない動きの子が多めなことについては、特に文句をいうつもりはない。

 とはいえ、やはり基礎を疎かにするわけにはいかないだろうから、そこんところから妥協せずきっちり行くとしますかね!

 それにさ、中途半端なことを教えて結局戦闘に活かすことができなかった……みたいな感じになって、レミリネ師匠の名に傷がついたら嫌だからね、そうならないよう全力で行く!!


「ふむふむ……よし、武闘大会も終わったばかりだし、ある程度時間に余裕があるともいえるだろう……よって! 基礎の基礎から徹底的に行くぞ!!」

「「「はい!!」」」

「そして、既に心得のある者も! 今は改めて基礎から見直す時期とするのもいいだろう!!」

「「「はい!!」」」


 こうして、じっくり丁寧に基礎から指導を始める。

 そこで、まず全体に向けて見本となる動きを見せながら教え、ある程度動きのイメージができたところで各自の練習に移る。

 そして各自が素振りをおこなっているあいだを練り歩きながら、直すべきところを見つけたところで個別に指導を加えて行く。

 その際、ロイターなどの特に武闘大会本戦に進出した実力者たちも教える側として見て回る。


「剣を振るとき、少しばかり体の芯がブレているようだ」

「は、はひぃ! ロイターしゃまっ!!」

「そう緊張することはない……といっても急には難しいかもしれないが、まずは呼吸を整えて……焦らずゆっくりでいい、一振り一振り丁寧に……」

「は、はぁいっ……」


 間近で受けるロイターからの指導……プライスレス。

 うん、あの令嬢の心情としては、そんな感じかな?

 そしてそれは彼女だけではなく、あっちこっちで目をハートマークにして指導を受けている令嬢が多数。

 ふぅ~む……これは集中力という面で若干よろしくないといえるかもしれないが……かといって、まだ初日だもんねぇ……

 まあ、日を追うごとに徐々に慣れていってくれればいいかな?

 ……いや、待てよ……むしろイケメンパワーによって、つまらないと思われがちな基礎の期間を上手く乗り越えられるかもしれないぞ?

 そう考えると、この状況は意外とアリかもしれんね!

 また、男子諸君の中にも同じように、ファティマやパルフェナなど実力派の女性陣から個別に指導を受けるのを期待した目をしている者たちがいる。

 でもね……残念ながらというべきか、諸君はある程度基礎が整っているのだよ。

 そのため、さほど指摘すべき修正点がないんだ……ドンマイ。

 それならということで、わざと下手なフリなんかしたら……そうだね、即つまみ出すことになるだろう。

 幸い、今のところそういう不届き者がいないので、この調子で真面目に頑張ってもらいたいところだ。

 ちなみに、ノアキアたち異種族組もファティマたちに付いてきて、一緒に指導に当たっている……ホント、気に入られたもんだねぇ。

 そんな感じで、今日は基礎に重点を置いた時間となったのであった。

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