第771話 見送りを終え、街中をぶらりとする
「子供たちのこと、よろしく頼んだぞ」
「はい、お任せください」
「わたくしたちが責任を持って、お送りいたしますわ!」
「そうそう! だから、アレス様は安心してくださいねっ!!」
「どんな敵が現れようと……子供たちには指一本触れさせない」
ギドを筆頭としたアレス付きの使用人たちの心強い返事……うん、彼らに任せておけば大丈夫だろう。
ちなみに、この夏ソエラルタウト領から学園都市まで一緒に旅し、リッド君たちと最初に接点を持ったこともあってか、ヨリやノムル、サナの3人娘がギドに次ぐポジションでリッド君たちを村に送る任務に当たるようだ。
まあ、今回ここに来ているアレス付きの使用人たちの中でも、実力的に3人娘のほうが上回っているからっていうのもあるかな。
「アレス兄ちゃん! またね!!」
「またいつでも、村に遊びに来てくれよな!」
「寂しいけど……そのぶん、次に会うときを楽しみにしてるよ」
「ええ、そうですわね! アレスお兄様がいらっしゃる日を、心から楽しみにお待ちしておりますわ!!」
「いっぱいいっぱい剣術も魔法も練習して! 今度会うときはもっともっと強くなってるからねっ!!」
「へへっ、そんときはアレスのアニキをメチャクチャ驚かせてやるぜ!」
「ボクも! ボクも!!」
………………
…………
……
そうして子供たちから、次々に別れの言葉を受ける。
こんなふうに別れを寂しがってもらえて、こちらとしても寂しさがないではないが、嬉しさも感じてしまうね。
とはいえ、一生の別れというわけでもないのだから、あまり湿っぽくならないようにしたいところだ。
さらにいえば、学園都市からそこまで遠く離れているわけでもないんだしさ。
「みんなにまた会える日……そして、さらに成長した姿を見れることを楽しみにしているよ!」
「うん! 楽しみにしててよ!!」
「よっしゃ! 俺はやるぜ!!」
「おう! 村に帰ったら、早速素振りすっぞ!!」
「そしてもちろん! 馬車の中では魔力操作を練習するよっ!!」
「まっ! ただ座ってるだけじゃ、つまんないもんなぁ?」
………………
…………
……
ワイワイと子供たちの元気な声が響く。
そして、馬車の中でも魔力操作を練習するという姿勢……うん! とってもいいね!!
「それじゃあ、みんな! 元気でね!!」
「アレス兄ちゃんも! 元気でね!!」
「「「元気でねっ!!」」」
こうして、子供たちを乗せた馬車が見えなくなるまで手を振って見送った。
そんなこんなで子供たちを見送りながら思ったのが、アレス付きの使用人たちに守られての移動……これはその辺の貴族家と比較しても、なかなか豪華といえるかもしれない。
いや、「ギドがいる時点で圧倒的なんだから、そもそも比較にならんだろ!」っていわれてしまうかもしれないが、ギドを抜いて考えたとしても、やはり豪華といえるだろう。
そう思うぐらい、3人娘を中心にアレス付きの使用人たち全体のレベルが高いのだ。
そんなわけでみんな、俺が見ていないところでもしっかりと鍛錬を積んでいるようだ! 感心感心!!
また、子供たちだって、現時点ではまだ保有魔力量的に何発も連射こそできないものの、魔法を使うこと自体はできるので、その辺のモンスターや盗賊なんかが襲いかかって来たとしても、自衛をする程度はしっかりとこなせるだろうと思う。
そのため、ぶっちゃけ襲いかかる側のほうがかわいそうだといえる状態なのではないだろうかって感じだ。
そんなことを思いつつ見送りを終え、街中をぶらりとする。
まあ、ぶらりというか、武闘大会で応援してくれた学園都市内の知り合いたちにお礼の挨拶をして回るって意味合いのほうが強いといえるだろう。
そして応援以外にも、試合と試合のあいだに飲んだトレルルス特製のポーションなんかもコンディションを整える上でとっても役に立ってくれたからねぇ。
やっぱ、不味いポーションより美味しいポーションのほうが、飲んでてテンションも上がるってなもんだしさ!
それはそうと、街中を混乱させてしまうのもどうかと思うので、闇属性の魔法によって俺っていう雰囲気は抑え気味にして街中を回る。
フフッ……俺も、なかなかの気遣いさんだねぇ。
というわけで、見送りが終わった午後の時間の多くを挨拶回りに費やした。
そして、そのとき挨拶をしたみんなから称賛の言葉をいただき、より一層これからのモチベーションを高めさせてもらったのだった。
まあね、俺にだって承認欲求はそれなりにあるわけだからさ、褒められたぶんだけヤル気も出るってもんだよ!
といいつつ、鍛錬を積んで実力を磨くってことがこの上なく楽しいと感じるので、たとえ誰にも褒められなかったとしても、俺はレベル上げをやめるつもりはないけどね!
まあ、レベル上げといっても、ステータスとして数字で表示されることはないのだが……それはそれ。
そうして挨拶回りも終わったところで、いい感じに日も暮れてきたので学園に戻る。
そんでもって、夕食をいただきに男子寮の食堂へ向かう。
一応、夕食についても令嬢たちに誘われることもあるのだが、さすがに夕食ぐらいはね……
とかなんとかいいながら、今日の昼食は子供たちと一緒だったけどさ。
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