第770話 こういう素直さは見倣わないとだなぁ
「それじゃあ、行ってくるよ! キズナ君!!」
一言キズナ君に挨拶をして、リッド君たちと待ち合わせをしている学園都市内の広場に向かう。
というのも、リッド君たちは村に向けての出発が午後からになるので、その前に稽古を付けてあげようと思ってね。
ちなみに、リッド君たちが午後からになる理由としては、今日出発する予定の貴族たちが優先されるからである。
そうして、貴族たちが出発し終わったあと、平民たちの出発って感じになる。
まあ、平民たちとしても、下手に貴族たちと関わって難癖とかを付けられるのも困るだろうから、たとえ出発の時間が遅くなったとしても、そのほうがかえって助かるというものかもしれないね。
そんなことを思いつつ街中を歩き、広場に到着した。
「おはよう! アレス兄ちゃん!!」
「「「おはよう、兄ちゃん!!」」」
「おはよう、みんな」
うんうん、今日もみんな元気な笑顔が輝いているね!
そして、リッド君たちから一歩下がった辺りに、ギドを筆頭としたアレス付きの使用人たちも並んでいる。
まあ、リッド君たちの武闘大会観戦にまつわる一切をギドたちに任せているわけだからね、一緒なのも当然なのさ。
ああ、そうそう、義母上のほうはルッカさんを筆頭とした義母上付きの使用人たちや、ソエラルタウト家の領軍から選抜された護衛が付いているので、そちらもまったくもって心配なしである。
なんてったって、この夏休みの帰省で俺を護衛してくれたお姉さんたちも義母上の護衛に参加しているわけだからね! もう、いうことなしって感じなのだ!!
といったところで、ギドたちとも挨拶を交わし、さっそく稽古開始である。
まずはウォーミングアップがてら軽く走り、その後は素振りや型の練習に入っていく。
「うん、そうそう、いい感じだね!」
そうして子供たちの動きを観察しながら、それぞれの改善点を見つけるたび、それを伝えていく。
といいつつ、みんなしっかり練習をしてきているようで、そこまで大きく直すところはない。
それに、ギドたちも村に寄るたび稽古を付けてあげているみたいで、意外と子供たちも修正してもらう機会がそれなりに多くあるのだろうと思うんだよね。
ちなみに、俺が物理戦闘の技法として教えているのは、もちろんレミリネ流剣術である……ま、当然だよね!
とはいえ、この先ずっと子供たちにレミリネ流剣術を強制しようだなんてつもりは全くない。
あくまでも、俺が一番自信と熱意を持って教えることができる剣術がレミリネ流だということである。
また、今回の武闘大会を観戦したことで、違う流派や武器に興味を持った子だっているだろう。
そこで子供たちには、武術の基礎としてレミリネ流剣術を修めてもらえればと思っているのだ。
まあ、いくら流派や武器が違ったとしても、やはり少なからず武術としてつながるものがあって、応用を利かせることができるだろうからね。
もしくは、レミリネ流剣術との相違点に注目することで、各自の学びたい武術の理解をより鮮明にすることだって可能なはず。
そんな感じで、子供たちにとってコアとなる技術になってくれたらと願う次第である。
「……おっ! 今の踏み込み、力強くてとってもいいね!!」
「ホントか!? やったぜ!!」
「うん、あとは剣を振るとき力み過ぎず、目標に対して刃筋がブレないように気を付ければ、さらによくなると思うよ!」
「そっか! やってみる!!」
「……うん、そう! いいね、さっきよりさらに鋭い振りになったよ!!」
「おぉっ! よっしゃぁ!!」
ふむふむ……子供たちを見ていて思うのが、素直さっていうのも伸びる要素として大きいのだろうなってことだ。
たぶんだけど、知らず知らずのうちに俺の考えが硬直化していることもあるだろうから、子供たちのこういう素直さは見倣わないとだなぁって思わずにはいられないね。
ふぅむ……この時間、教えているようで、実は俺が子供たちに教えてもらってもいるのだろうな。
そんなこんなで昼食の時間まで、剣術や魔法の指導をしながら過ごした。
そしてやはり、この子供たちの魔力操作を嫌がらないところ! これが将来的に大きな差となって現れてくるだろうなって確信できるね!!
といったところで、浄化の魔法でみんなの汗や汚れをキレイにし、ギドが予約していたお店にお昼を食べに向かう。
「さぁっ、頑張ったあとはご飯も一段と美味しいはずだよ! 遠慮せず、どんどん食べてね!!」
「「「うん!」」」
「それじゃあ、いただきます!」
「「「いっただっきま~す!!」」」
うんうん、いい食べっぷりだ。
みんな……いっぱい食べて、大きくなるんだよ!
そのときふと、慈愛に満ちたファティマの微笑みが脳裏に浮かんだ。
いや……うん、子供たちがファティマの理想とするようなビッグサイズに成長するかどうかっていうのは、分からないからね?
なんてことを、念のためイメージのファティマに告げておいた。
それはそれとして、こんな感じで子供たちとお昼の時間を楽しくゆったり過ごしたのだった……しばしのお別れの時間が迫っていることを感じながらね。
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