第764話 先輩たちの誇らしげな表情が眩しい

『……さて、未だ決勝戦の興奮も強く残っていることと思いますが……これにて今年の武闘大会、その全試合が終了となりました。このあとは舞台の整備と小休憩を挟みまして、表彰式及び閉会式が執りおこなわれます。そこでこの3日間、数々の名勝負を繰り広げた選手たちの姿を、もう一度その目にお収めいただければと思います』


 ナウルンからアナウンスがあったとおり、先ほど武闘大会3年生女子の決勝がおこなわれ、その決着がついたところだ。


「ふぃ~っ! これで今年の学園主催の武闘大会も終わりかぁ~っ!!」

「毎年のことながら、やっぱりこの瞬間は! 何よりも切ないったらないよな!?」

「ああ……ぶっちゃけ、これで俺の一年は終わったって感じだよ」

「まあね……年内ではもう、これだけの規模の大会はないだろうからねぇ……」

「一応、小さな地方大会とかなら探せばあるんだろうけど……そこまで労力をかけて観に行くほどの内容じゃないだろうしなぁ……」

「だな、このレベルの試合を観ちまうと、もう……その辺の腕自慢共がチョイチョイやり合うのを観たところでツマランだけだろうさ」

「そうはいうけどよ、今年の学園主催の武闘大会とそのほかの大会を比べるっていうのは……ちょっとどころか、かなりかわいそうだといわざるを得んだろ?」

「確かに……現役の騎士や魔法士なんかが参加している王国武術大会と比べても、今年のこの大会はレベルが高かったもんなぁ……となると、それ以外じゃぁ……ねぇ?」

「うん、そうだねぇ……」


 ほうほう……現役の騎士や魔法士たちと比較できるほど、俺たちはいい試合を観客に披露することができたってわけか……うむ! それはよかった!!

 そのような評価を得て、学生たちは自信を持つことができるだろうし、現役の騎士や魔法士たちは「こうしちゃおれん!」って感じで奮起し、訓練により一層気合が入るというものだろう。


「……とはいえ、例年に比べて全体的にレベルが高かったのは確かだけどよ……本当に飛び抜けて凄かったっていえるのは一昨日の1年だけで、それ以外はそこまで極端に凄かったとまではいえんだろ」

「まあねぇ、一昨日の1年生に比べて昨日の2年生はちょっと物足りないなって思ったところ……今日の3年生はねぇ、さらに見応えが薄かったのは確かだったと思う……」

「分かる! なんか、昨日は『……あれ?』って感じだったけど、今日は『う、う~ん……まあ……』って感じだった!!」

「正直、日程が逆だったほうがよかっただろうな……3年、2年ときて、今日が1年の試合だったら、もっと盛り上がっただろう」

「だよな! 間違いない!!」

「たぶんだけど……今年の3年より、1年のほうが強いだろうな……」

「うん、オレもそんな気がする……」

「お前ら……そういうことは、あんまり大きな声でいうもんじゃないぞ? どこでどうお貴族様たちに伝わるか分からないのだからな……」

「おっと……いかんいかん……」

「でもまあ、実際そう思っちまったんだから、仕方ねぇだろ……」

「……ふぅむ……とりあえず、お貴族様たちの耳には入ってなさそうだし、ひとまずヨシとしとくか……」


 ゴメンだけど……地獄耳のアレス君には、君たちの会話が聞こえちゃったよ。

 とはいえ、それで誰かに告げ口とかをする気はないけどね。

 ただ、確かに今日は、俺から見てもまあまあ地味な試合がいくつかあったので、あの観客たちの感想も頷ける部分がある。

 しかし、だからといって一切学ぶところがなかったというつもりはない。

 派手さこそないものの、試合を丁寧に組み立てていた先輩の闘い方とか……ああいうのは、大雑把な俺には比較的苦手な闘い方なので、なかなか勉強になったと思う。

 とまあ、そんな感じで個人的にはこの武闘大会、選手としても観客としても楽しめたし、何より学びのある時間を過ごさせてもらえたので、ありがたい限りだ。


「……よし、そろそろ待機場に向かうとするか」


 ここでロイターの号令の下、俺たちは閉会式に出るため待機場に向かうのだった。

 そして整列の後、華々しく入場。

 そこでまずは3年生の表彰式を見守る。

 やはり、この3年間で獲得したメダルの数や種類によって、その後の出世に大きく関わりがあるのだろう……先輩たちの誇らしげな表情が眩しい。

 その中には、今年初めて本戦出場を果たした先輩もいるようで、嬉し涙に頬を濡らしているほどだ。

 ただ、俺としては3年生の中に特別親しくしている人もいないので、普通に拍手を贈るぐらいって感じかな?

 とはいうものの、闘いぶりを見学させてもらったことについては感謝の気持ちを乗せて拍手をしているけどね。

 そんなこんなで今日の表彰式はメダルの授与だけで、偉い人のスピーチとかは閉会式の中でおこなわれるって感じだ。

 まあ、重複しておこなう必要もないだろうからねぇ。

 そうしてメダルの授与が終わったところで、そのままの流れで閉会式に進む。

 だが、閉会式とはいっても、俺たち選手は特に何かをするわけでもなく舞台で整列しているだけで、偉い人たちの話を聞いてるだけって感じだね。

 というわけで、特に問題もなく進行し、閉会式が終わった。

 フゥ~ッ、これでお祭りも終わりって感じか……そう思うと寂しいもんだね……

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