第762話 2年連続だもんなぁ……

『武闘大会2年生男子の部優勝! ガネアッド・ブレンラウズ!!』


 現在、武闘大会2日目の表彰式がおこなわれている。

 そして今! 国王陛下からメダルの授与を受けているのが、我らが豪火先輩ことガネアッド・ブレンラウズその人である!!

 やっぱね、『豪火』って二つ名で呼ばれているだけあって、豪火先輩の火属性魔法はレベルが物凄く高いんだよ。

 また、その二つ名から受ける印象として「こまけぇこたぁいいんだよ!」って感じでゴリッゴリに力押しの巨大な炎の渦とかを想像されるかもしれない。

 もちろん、試合の展開次第ではファティマのインフェルノほど極端なものではなかったが、それなりにデカい魔法の使用を選択することもあった。

 しかしながら、そればかりではなく、ちょっとしたファイヤーボールのひとつにまで細やかな神経がとおっているようで、豪火先輩の生成する炎はまさに身体の延長といっても過言ではないほどの自由自在ぶりなんだ。

 よって、豪火先輩の魔法は豪快さだけではなく、繊細さも持ち合わせているということができる。

 それでまあ、たぶんだけど豪火先輩の名の由来っていうのは……火属性魔法が得意ってことのほかに、普段からのワイルドなカッコよさによるものなんじゃないかって思うんだよね。

 といいつつ、それも見た感じの印象で、性格的には俺みたいな後輩にまで気遣いをしてくれる、とっても優しいナイスガイなんだよ!!


「……チッ、今年もガネアッドの野郎が優勝かよ……あ~つまんね!」

「2年連続だもんなぁ……」


 あらら、豪火先輩も嫉妬されちゃってるみたいだねぇ……


「おいおい……それをいったら女子のフェイだって、2年連続だろ?」

「いや、フェイ様はいいんだよ!」

「そうとも! なんたって、クール系美人だからな!!」

「えぇ……そこなの?」

「とにかく! フェイ様が優勝するのはいいんだよ!!」


 なんか、2年生男子たちの話題がフェイ先輩のことに移ったみたい。


「正直、俺としてはさ……エレガント系美人のエトアラ嬢が優勝しくれても良かったけどねぇ……」

「ハァ? エトアラだぁ? あんなん、1年坊主なんかに熱を上げてる見る目のねぇ女じゃねぇかよ……」

「まあ、これまでずっと先輩たちや俺たち同学年の誰からの誘いも断り続けていた理由があれじゃあねぇ……ガッカリっていうのも分かるもんだよ……」


 何をいっているんだ!? 年下のセテルタを選ぶだなんて、見る目が大ありじゃないか!!


「おいおい……それをいったらフェイだって、シュウって1年生とイイ感じみたいだったろ? 昨日の決勝戦で勝負が付いた直後のやりとりを見ていなかったとはいわせないぞ?」

「ああ、あれね……フェイ様の御召し物を身に纏う栄誉を受けるだなんて……まったくけしからん輩だよ!!」

「でもまあ、あの2人は同門で幼少の頃から一緒に鍛錬を積んできたって話だし……たぶんもう、姉弟って感覚なんじゃね?」

「おいおい……それをいったらエトアラだって、セテルタって1年生となんだかんだいって接点が多かったみたいだし、そっちも姉弟って感覚になっていてもおかしくないだろ?」

「ふぅむ、今思い返してみるとあの2人、お茶会などのたびにいつも一緒だったな……口ゲンカばかりしていたから、てっきり仲が悪いものだと思っていたが……」

「そうだよなぁ……あれは完全に騙されちまったよなぁ……」


 この上なく切なそうに言葉を漏らす2年生男子……

 まあ、いくらか同情を感じないでもないが……かといって、エトアラ嬢の心には最初からセテルタしかいなかったわけだしなぁ……

 ただ、もともとエトアラ嬢は俺に婚姻話を持ってくるだなんて、形だけの結婚ならほかの男でも構わないって姿勢だった。

 だから先輩たちだって、それなりに実力を見せてさえいれば、形だけでも結婚相手に選んでもらえたかもしれないと思うんだよね。

 とはいえ、せっかく結婚できても「相手の心の中には別の男がいる」ってなったら耐えられんかもしれんが……それはそれとして、そっから自分に振り向かせるって根性を見せるのも男としてあるべき姿なのかもしれないよな……


「おい、話が逸れ過ぎだろ! 問題はガネアッドの野郎がウゼェって話だっただろうが!!」

「ああ、そういやそうだっけ……」

「でもまあ、仕方ないだろ……奴の強さは本物なんだし……」

「だよなぁ……なんであんな奴と同学年になっちまったんだよ……」

「とはいえ、今年の1年のほうがヤバくねぇか?」

「それはそうかも……2年の中で『コイツにはどうやっても勝てない』って思わされるようなヤツはガネアッドぐらいで、それ以外なら、たとえ今年本戦に進んだヤツ相手でも、そのときのコンディションとかタイミング次第では勝てるって思うもんな!」

「うむ……俺は今年、あと1勝が足りなくて本戦に進めなかったが、去年は進めたし、来年もチャンスはあると思っている……」

「まあ、それもこの学年だからだろうなぁ……これが1年の奴らだったら、1敗した時点でほぼアウトだったみたいだし、昨日の試合を観た感じ、勝てそうな奴も見当たらなかったしさ……」

「そう考えると……僕らはまだ、この学年で恵まれていたといえそうだね……」


 うん……今日観戦した試合、全体的にもうちょっと欲しいなって思ったのは確かだ……

 ただし、豪火先輩みたいな見ていて勉強になる闘い方をしている人も何人かいたけどね!

 豪火先輩と決勝で対戦した……発達した筋肉によって背中にオーガの笑みが刻まれているムキムキお兄さんとか物理戦闘能力がメチャクチャ高かったし!!

 ああ、そういえばあの人、いつだったか軽口を叩いていた1年生に凄んでいた2年生の集まりの中にいたのを目にしたことがあったっけ?

 それはそれとして、あのムキムキお兄さんに対しては、さすがの豪火先輩も物理戦闘は避けて魔法戦闘に徹するようにしてたもんなぁ……

 ただ、それもそのはずで……あのムキムキお兄さんが3回戦までに見せていた締め技とかマジでエグかったもん!

 さすがにねぇ、締め落とされたら回復魔法とかも使えないだろうし……

 そう考えると、魔法主体で物理戦闘が不得手の人なんかは近付かれたら終わりって感じの天敵みたいなもんだろうね……

 そんなこんな考えているうちに、武闘大会2日目の表彰式が終わった。

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