第760話 現状を確認する場
「ここッ!! ………………あ、あぁ……夢だったか……ひとまずおはよう、キズナ君」
あの時間が夢だったことに寂しさがないではない……ただ、たとえ夢でも俺の気持ちの上では、レミリネ師匠たちに武闘大会の優勝を報告できたのだ、それで満足しておこうじゃないか。
「キズナ君……今見た夢にレミリネ師匠たちが出てきてくれてさ、武闘大会のことを話したりタタカイゴッコっていう模擬戦をしたりしてたんだよ! いやぁ、夢とはいえ逢えて嬉しかったね! それでさ、昨晩キズナ君に話したのがいい感じで練習になってたみたいでね、夢の中ではさらにスラスラと臨場感たっぷりに話せたんじゃないかと思うんだ! そんなわけで、昨日は聞き役をやってくれてありがとね!!」
そんなことを話しながら、着替え等の朝練に行く準備をする。
「よし、これでオッケー! それじゃあキズナ君、朝練に行ってくるよ!!」
そう声をかけて、いつものコースに向かう。
そして同じようなタイミングで……お馴染み! きゅるんとした少女であるファティマが来た!!
「よう! 今日も絶好の朝練日和だな?」
「おはよう、天気と同じようにアレスも御機嫌のようね」
「おう! とびっきりの眠りを得られたからな!!」
「そう、それはよかったわね……さて、話は走りながらにしましょうか」
「おっと、そうだったな! そんじゃ、レッツゴー!!」
というわけで、俺たちは並んで走り始める。
「それにしても、昨日の今日でサボらず朝練に取り組んでいる……さすが1年生女子の部優勝者だな?」
「それをいうなら、あなたもでしょう? 1年生男子の部優勝者さん?」
「ハハッ! まあな!!」
「それに武闘大会はより大きく成長するための、あくまでも通過点であり……自分の現状を確認する場だもの」
「現状を確認する場……なるほどね」
ファティマにとって武闘大会は、前世でいうところの模試ってぐらいの感覚みたいだね。
まあ、たとえ模試でA判定を取れたとしても、それで慢心してサボり倒したらアウトだろうからなぁ……
「昨日のノアキア戦……彼女が勝負に乗ってくれたから勝てたけれど、冷徹に攻め続けられていればおそらく負けていた……別にノアキアのことを最初から甘く見ていたわけではないけれど、やはりエルフ族の魔法はレベルが高かった……」
「ふむ……とはいえお前なら、どうにかしてインフェルノを発動させていた気がするけどな?」
「そうね、可能な限り手を尽くしたと思うわ……でも、それが通用したかどうか……そう考えると、昨日は実力より運の要素が大きい勝利だったといわざるを得ない……」
「まあ、運とはいうが……仮に俺がノアキアの立場だったら、実力の全てを出しきらせるためにインフェルノの発動を許しただろうし……たぶん、アイツもそんな感じで結局は受けて立つという選択をしていたんじゃないか?」
「確かに、それは考えられるわね……でも、ノアキアの選択はどうあれ、私の実力がまだまだ足りないという事実に変わりはない……それから、ゼネットナットも獣化を完全にコントロールできるようになったら、今のままでは厳しくなる……」
「ああ、理性を保ったままの獣化は脅威に違いない……」
とはいえ、その筋道をゼネットナットに示したのはお前だろうに……
なんて思わなくもなかったが、ファティマとしても切磋琢磨する相手が必要なのだろうからねぇ。
「あとはそうね……女子だけじゃなく、あなたたち男子にも実力者が大勢いる……そんな現状を確認できたわけだから、私ももっともっと鍛錬を積む必要があるということ」
「ほう……さすがファティマ、素晴らしい向上心だ! 俺も負けてはいられんな!!」
「ふふっ、実力者ぞろいの本当にいい年に生まれたものだわ……まあ、今年の1年生が成長著しいのはアレス……あなたの影響が一番大きいのでしょうけれどね……」
「そうかぁ? それは照れるなぁ~!」
まあ、俺としても「魔力操作の練習をしろ!」って啓蒙活動を続けているだけに、その成果が出ているのだとすれば嬉しい限りだ。
「ああ、そうそう……まだお礼をいっていなかったわね……」
「お礼? なんの?」
「あの魔法……あれを不完全ながらもなんとか制御することができたのは、あなたにもらったこの平静シリーズのおかげだから……これを着て魔力操作の練習をしていなかったら、たぶん能力不足であの魔法を制御できていなかった……だから、そのお礼よ、ありがとうね」
「えっ、あっ、まあ、そのなんだ……どういたしまして……」
ファティマさん……不意打ちでその笑顔は眩しいです……
それにほら、お前の姿を眺めに来ていたであろうヲタクの男子たちが失神して倒れる音が聞こえないか?
きっと彼らは、お前の眩しい笑顔に当てられて魂が抜けちゃったんだぞ?
でもまあ……しばらくすれば起きるだろうから、彼らのことはそっとしておこう。
たぶん今頃、幸せな夢を見ているだろうしさ……
そんなこんなで、昨日の反省点などを話し合いつつ約1時間の朝練を終えた。
ちなみにだけど、女子は女子で早速昨日から食事に風呂にと新たな親交を深めていたそうだ。
まあ、特にノアキアやゼネットナットはファティマのことをかなり気に入っていたみたいだからねぇ……
あと、原作ゲームでドワーフ族のヒロインだったドーズは、2回戦で対戦したパルフェナと特に仲良くなったようだ。
それはつまり、ラクルスは……パルフェナによってドーズルートも閉ざされてしまったということかもしれない。
まあ、これからラクルスがどう動くかにもよるんだろうけどさぁ……でも、やっぱちょっと無理めな気がしちゃうねぇ……
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