第759話 報告することができた
「ただいま、キズナ君! 早速だけど俺、武闘大会で優勝したよ!!」
自室に戻って来て開口一番、キズナ君に結果を報告。
そうしてソファに腰を落ち着けたところで、改めて今日の武闘大会について語っていく。
ただ、俺のトーク力でどこまで試合のアツさを表現できているかは分からない。
でも、きっとキズナ君なら! 俺が言語化できていない部分も感じ取ってくれているに違いない!!
とはいったものの、キズナ君側の感受能力に頼りきるのではなく、俺なりに楽しんで聞いてもらえる努力を欠かすわけにはいかない。
そうやってキズナ君と俺が、お互いに楽しもうという気持ちが一致したときにこそ! エキサイティング空間の創造が成ったといえるのだろうからね!!
そんなこんなで、1回戦から決勝戦までの流れをじっくりと心を込めて語って聞かせた。
また、こんなふうに頭と口をフル稼働して武闘大会の内容を反芻したことで理解が増したというか、経験が俺自身のより深い部分に刻まれたのではないだろうかと思う。
「どうだった、キズナ君? 俺が試合で感じていたアツさ、そのほんの一部でも感じてワクワクしてもらえていれば嬉しいよ!」
キズナ君は植物なので、言葉による返事をすることはできないにしても、なんとなく楽しいって雰囲気を出してくれているような気はする。
まあ、それは俺の単なる思い込みかもしれないけど、それでいいのさ。
「フゥ……話してて俺も再びアツくなってしまったよ……このままじゃあ興奮し過ぎて眠れなくなるかもしれないから、それを鎮める意味も込めて、精密魔力操作をしようか!」
というわけで、いつ寝落ちしてしまっても大丈夫なようにナイトウェアに着替えを済ませ、ベッドの上で姿勢を整えて座る。
「よし、これで準備は整った……それじゃあキズナ君、精密魔力操作開始だ……そして、念のためおやすみといっておくよ……」
こうしてキズナ君と挨拶を交わし、前世で臍の下辺りに位置するといわれる下丹田……それとちょうど同じような部分にある魔臓を中心として魔力に意識を集中させる。
……うん、今日は魔力の元気がすこぶるいいね……これはやっぱり、俺のテンションの高さが強く影響しているのだろうなぁ。
でも大丈夫、まだ夜は始まったばかり……今日はとことん語り合おうじゃないか……
そんなわけで時間の経過を気にせず、心ゆくまで魔力との触れ合いを楽しみ、そして微かに意識が残っているあいだに眠る態勢に移行し……あとはそのまま…………魔力を感じ………………ながら……………………
……
…………
………………
『おぉっ、優勝! おめでとう、アレス君!!』
レミリネ師匠に再び逢うことができ、武闘大会の優勝を報告することができた。
そしてレミリネ師匠にも、1回戦から決勝戦までの流れを丁寧に語った。
先ほどキズナ君に語ったおかげもあって、俺の語りはさらに洗練されたものになっていたのではないだろうかと期待したいところだ。
だって、そりゃあね! レミリネ師匠を退屈させたくはないもんね!!
また、レミリネ師匠のほかにスケルトンたちや、ゲンたちもそれぞれ手を止めて俺の話を聞いてくれている。
そうしたオーディエンスたちを前に、俺の語りも自然とヒートアップしていく。
レミリネ師匠だけではなく、みんなにも俺の話を楽しいって思ってもらえていれば喜ばしい限りだ。
それから、レミリネ師匠が授けてくれた剣術や、ゲンをはじめ素晴らしい戦闘経験を俺に積ませてくれたみんなのおかげで武闘大会の優勝を達成できたこと、それについてお礼の言葉も述べた。
『ふふっ、そんな凄い子たちを相手に勝つことができたのは、アレス君自身が日頃から積み重ねてきた努力の賜物だよ……でも、その結果に少しでも役に立てていたのなら、とっても嬉しいよ』
『少しなんてもんじゃありません、この上なく力になってくれました! なぜなら、シュウが繰り出した最高の一撃だって、レミリネ師匠が教えてくれた受けの技術が身に付いていたからこそ、シュウより先にポーション瓶が割れずに済んだわけですから!!』
あのとき、とっさに腕による防御ができていなければ、シュウに胴体を貫かれていた可能性だってあったわけだし……
『うん……そんなふうに感謝の気持ちを自然に持つことができるのが、アレス君の一番のいいところなんだと思うなぁ……人は偉くなると、どうしても感謝の気持ちを忘れがちになってしまうし……だからアレス君、これからもそのいいところをなくしてしまわないようにね! そうすればきっと、アレス君はどこまでも成長していけるから!!』
『はい! ずっと大切にしていきたいと思います!!』
剣術だけでなく、心の在り方まで教えてくれる……とてもありがたいものだ。
『アレス! ハナシガオワッタラ、サッソク、タタカイゴッコスルゾ!! イッパイ、タタカイゴッコシテ、マタツヨクナッタンダロ!?』
話が一段落したところで、ゲンからタタカイゴッコのお誘いを受けた。
『よっしゃ、ゲン! 今日もいっちょやるか!!』
『オウ! ソウコナクッチャ!!』
こうして武闘大会から得た学びを、ゲンやみんなと共有するのだった。
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