第754話 訓練法のひとつとして
さぁて……お待たせ、腹内アレス君!
約束どおり、今日の夕食は思いっきり食べちゃうよ!!
というわけで、表彰式が終わって食堂に急いでやって来た俺は、気の赴くままに食品をかき集め、それをガツガツと食べまくる。
そう! 食べまくるったら、食べまくるのだ!!
うぅ……美味い! 美味過ぎるぅ!!
やっぱり、今日は魔力も体力もメチャクチャ使ったからねぇ、全身が食料というエネルギーを欲しているのだろう……それもあって、いつにも増して食事が美味しく感じられるのだろう。
そんなことを頭の片隅で思いながら食事を続けているうちに、急いで来たこともあって貸し切り感のあった食堂内も学生たちが増え、ガヤガヤとし始めてきた。
「いやぁ、今日の武闘大会は凄かったよなぁ?」
「俺は学園入学前にも、親に何度か観戦に連れて来てもらったことがあるが……男女共にそのとき観たどの試合よりも、今日は圧倒的にレベルが高かったと思う!」
「分かる! 僕も全くの同感だよ!!」
「なんといっても、俺たち同年齢の奴の中で、実績的に考えて誰もが最強だと思っていたであろうロイターですら、まさかの3回戦敗退だったんだからなぁ……今回はレベルが高過ぎだよ……」
「まあ、ロイターさんに関していえば、前期にやった魔力操作狂いとの決闘で負けに近い引き分けになっていたけど……あれも、ファティマさんのことで頭に血が上り過ぎていて冷静さを欠いていたからって説が濃厚だったからねぇ……その後もロイターさんが一番強いって思ってた人も割といたんじゃない?」
ふむ、俺も学園内でされている会話をちょくちょく聞いていて、ロイター最強説は根強いみたいだったもんねぇ……
「ああ、少なくとも今回の組み合わせが決まったとき、俺なんかは直感的に魔力操作狂いとロイターが決勝で再戦を果たすって思ったぐらいさ」
「だなぁ……3回戦で当たったシュウも、ウークーレン家ということで強い強いとはいわれてたけど、それまで実績もなかったし、さすがにロイターのほうが強いと思ってたからなぁ……」
「そうそう! 俺もぶっちゃけ、シュウは名前先行型だと思ってたぐらいだよ!!」
名前先行型……まあ、それまで大会関係に参加していなかったみたいだし、シュウが戦闘している姿を見たことのある奴が少なければ、そう思われてしまうのも仕方ないかもしれんね……
「でも、シュウが今日当たった相手は、最近名を上げ始めているソイル、物理戦闘能力はロイターと同等かそれ以上と目されているサンズ、そして誰もが強いと認めるロイターを撃破した上で、あの魔力操作狂いと決勝だもんな……アイツの強さは本物だよ……」
「ていうかさ! シュウ君が最後にあの人に放った一撃……あれ! ヤバ過ぎってレベルを遥かに超えてたよね!!」
「ああ! 正直、魔力操作狂いがダメージを負う姿っていうのを俺は今日! 初めて見た!!」
「予選で魔力操作狂いと対戦した奴から聞いた話だけどさ……あの魔纏とかって魔法、絶対に破ることは不可能だって断言していたぐらいだもんなぁ……そいつだって、学年が違えば本戦進出も夢じゃないほどの使い手だったわけだから、かなり真実性の高い発言だったと思うぜ?」
「まあ、彼の使う魔纏という魔法の強度を疑う人など、ほとんどいないでしょう」
「そうだよねぇ……もしかしたら、コモンズ学園長が本気で展開した防壁魔法より堅固だったりして?」
「ふぅむ……その可能性も、ゼロではないだろうな……」
「とにかく! そんなスンゴイ魔法を突き破ることができたシュウさんの一撃! あれこそ世界最強の一撃と呼ぶにふさわしいだろうね!!」
「そうだな、さすがに『世界最強』とまでいってしまうと、ややこしい奴が文句をいってきそうだが……それぐらいいいたくなるぐらいの攻撃力があったのは確かだろう」
「まあ、どんなに強い一撃でも、体にかかる負担がデカ過ぎるみたいだから、何度も打てるようなもんじゃなさそうだけどな……」
「あったりまえだろ! あの攻撃力で連発なんかされたら、堪ったもんじゃねぇよ!!」
そうだね……さすがに俺でも、シュウのあの一撃を何度も耐えきれんだろうから、実戦であれば真正面から受けようとは思わないだろう。
まあ、こんなふうに俺の正真正銘本気の魔纏を突き破ることができる奴が存在するってことが分かった……この事実がこれから先、俺のサボり心を戒め、さらなる精進に向かわせてくれることだろう……そう思うと、ありがたい限りだね。
「……でもさ、その魔力操作狂いの魔纏って魔法をものともせず、ファティマちゃんが奴を引っ叩いてたのを見たことがあるぜ? そう考えると、やっぱファティマちゃんが学園の1年で最強かもしれないよなっ!?」
「1年どころか……ひょっとしたら、学園最強でもおかしくねぇんじゃね?」
「ハハッ……さすがに、そのときは魔力操作狂いだって本気じゃなかっただろ」
「わっかんねぇぞぉ~?」
「実際……どっちが強いんだろう?」
「昔は男女混合で武闘大会が開催されてたらしいから、その疑問にも答えが出たんだろうけどねぇ……」
「そうはいってもお前……本気で女子と闘えるか? 俺ならたぶん、たとえこっちが実力で劣っていたとしても、心のどっかで手加減しちまうと思うぜ?」
「う、うぅ~ん……よほどの名誉がかかっていれば……あるいは?」
「一応、僕は実家で女性相手でも本気で戦闘できるよう教育を受けたので、やろうと思えばやれるけど……本音をいえば、やりたくないね……」
「まあ、だいぶ前の俺たちの先輩も、それで女に負けたのが原因で大問題に発展し、それから男女別になったわけだからなぁ……まあ、その先輩も、女が相手で手加減したのかどうかってところは真偽不明らしいけどさ……」
「なんにせよ……ロイターさんとファティマさんが当たった場合、ロイターさんの敗退は確実だろうね……」
「ハハハ、いえてる!!」
「おそらくロイター殿とて、おなご相手の戦闘教育は受けているであろうが……まあ、それとこれとは別であろうのう……」
「うん! そう考えるとやっぱ、男女別でよかったっていえるだろうね!!」
「まあ、ロイターに限らず、あの魔力操作狂いだって、実力はどうあれファティマちゃん相手に本気で攻撃はできないだろうよ……そうなると、ひたすら魔纏とかいう魔法で防御するだけ……それに対しファティマちゃんは……あれ? そういえば、あのインフェルノって魔法、下手したら魔力操作狂いの防御魔法も喰えちゃったりする!?」
「どうかなぁ……ノアキアさんの防壁魔法で防げていたみたいだから、さすがに無理じゃない?」
「でも、ファティマちゃんだって、かなり威力をセーブしてたみたいだし、ワンチャンあるんじゃね?」
「う~む、意外と面白い対戦になるかもな……」
「まあ、あの人らって、いっつも夕食後に模擬戦してるから、そんとき見てみれば分かるんじゃない?」
「とはいえ模擬戦は、どこまでいっても模擬戦だからなぁ……」
ふむふむ、インフェルノを魔纏で受けるねぇ……訓練法のひとつとして、アリかもしれんな。
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