第753話 また来年を楽しみにしながら……
『武闘大会1年生女子の部優勝! ファティマ・ミーティアム!!』
ラスト、女子の部優勝者のファティマがメダルを授与される。
「ファティマ・ミーティアム、素晴らしい闘いぶりであった」
「恐悦至極に存じます」
「特に、最後に見せたインフェルノは凄かったな……まだ成人すら迎えていないというのに、発動させるだけでなく制御もあれだけこなすとは、実に天晴れ」
「過分なお言葉を頂戴し、感無量に御座います」
「今後も、思う存分研鑽を積み、そなたが理想とする魔法を完成させるがよい」
「ご期待に応えられるよう、精進して参ります」
「うむ、そなたが完成させた魔法をこの目で見る日が来ることを楽しみにしておるぞ」
「必ずや、御覧に入れたいと存じます」
国王陛下としては、もちろん期待しているものの……どちらかというと「頑張れよ!」っていうニュアンスだったのではないだろうか。
でも、ファティマさんなら……きっとやり遂げてしまいそうだっていう雰囲気があるね。
おそらく国王陛下もそのように感じたのであろう、その顔により深い笑顔が刻まれている……といいつつ、あんまり直視するのも失礼に当たるだろうから、うっすらと視界に収めているだけなんだけどね。
ただまあ、国王陛下の全身から発せられている魔力も気分上々って感じを隠してないから、そうなんだろうと思う。
それにしても……これによってファティマの魔力に依存しない魔法運用の模索に国王陛下のお墨付きが与えられたといっても過言ではないだろう。
となると、魔法の腕を磨いていないような貴族は面白くないだろうなぁ……中央らへんの文系貴族なんかだと特にじゃない?
きっと、生まれ持った保有魔力量の多さこそ正義みたいな感覚だろうからさ……
とはいえ、マヌケ族による暗躍を受けている現状、保有魔力量で劣る人間族にとってひとつの対抗手段となり得るわけだから、研究しない理由はないよな。
もっといえば、逆にマヌケ族がそういう魔法運用をやってくるかもしれないわけだし。
いや、よくよく考えてみると……魔王復活のために魔力だけでなくあらゆるエネルギーを集めている時点で既に、あちらさんはそれなりに実用化を成功させているといえるのかもしれない。
まあ、エネルギーを集めているだけで、それを使って魔法を発動させるってことはしていないみたいだから、まだ完璧に成功しているわけではないのかもしれないけどね。
もしくは……彼らのプライド的に、人間族の開発したインフェルノっていう魔法をなるべくなら使いたくないだけっていうのはあるかもしれないねぇ……
ま! なんにせよ、魔力に依存しない魔法運用に可能性を見出した人がいれば、はりきって研究していってもらいたいところだ。
そんなことを考えているうちにメダル授与が終わり、あとは国王陛下を含めた偉い人たちによる今日の感想とか会場全体に向けたスピーチを聞くって感じだね。
それで思ったんだけど、国王陛下はメダル授与のとき1人1人に声をかけ、さらに全体に向けたスピーチもしている……これをたぶん、今日だけでなく明日明後日と3日間も続けるのだろう……これ、地味にキツくね?
だって、メダルを授与するときに何かしらのコメントをするため、全試合本気で観なきゃだろうし……しょっぱい試合とかされたら、コメントを捻り出すのにメチャクチャ苦労するだろう。
俺としては、ぶっちゃけ、これだけでも国王なんかやりたくないなぁって思っちゃうぐらいだよ……
まあ、俺たち1年は今日1日、それなりに見応えのある試合をできたんじゃないかと思うが……国王陛下のためにも、先輩たちには明日明後日ぜひとも頑張ってもらいたいところだ。
ちなみに、ほかの偉い人たちは今日だけで、明日明後日はそれぞれ別の人がスピーチするみたいなので、比較的気楽だろうね……それでも、面倒なことには変わりないと思うが……
『選手退場! 皆様、最後にもう一度、32人の選手たちを温かい拍手でお送りください!!』
そんなこんなで、国王陛下も含めた偉い人たちによるスピーチが終わり、俺たち本戦出場者が退場する。
何気にこの表彰式、閉会式に近いボリュームがあったんじゃないだろうか?
それはともかくとして……楽しいお祭りも、俺の出番はこれで終わりって感じだなぁ……
でもまあ、祭りはあと2日間続くわけだから、今度は観るほうで楽しませていただくとしましょうかね。
そして先輩たちがどんな闘いを繰り広げるのか……しっかりと見学させてもらおうじゃないか!
とかなんとか考えているうちに、待機場に戻って来た。
「お前たち、今日1日とても見事な闘いぶりだったぞ! まあ、みんな疲れているだろうから長話は控えておくとして……あとお前たちが出ることになるのは明後日の閉会式なので、3年女子の決勝が終わって整備が済んだ辺りでここに集まるように、いいな? さて、俺から伝えることはこれぐらいだ、それでは解散! お疲れさん!!」
この係の先生が発した号令によって、俺たち1年の武闘大会は終了した。
輝きのいっぱい詰まった時間にありがとう……また来年を楽しみにしながら……俺は食堂に走った。
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