第751話 表彰式である
『選手入場! 本日、熱い闘いを繰り広げた32人の選手たちを皆様、温かい拍手でお迎えください!!』
ナウルンのアナウンスにより、待機場で整列させられていた俺たち武闘大会1日目の本戦出場者は、入場を開始する。
そして、武闘大会自体は明日明後日とまだ続いていくので、今日は閉会式というわけではない。
それじゃあ、今日は何がおこなわれるのかというと、表彰式である。
まあ、3日目にまとめてやってもよかったんだろうけど……というかそういうときもあったらしいけど、それだと3日目のチケットが取れなかった人が残念がるらしいので、それぞれの日に表彰をするってスタイルに落ち着いたらしいようなことを聞いた気がする。
それから、表彰式だけなら表彰台に立つ奴だけが舞台に上がればよくね? なんて思われるかもしれない。
これについては、優勝とか上位入賞者だけでなく、本戦出場者全員にメダルが授与されるからである、それも国王陛下から直々にね。
だからこそ、武闘大会の本戦出場が物凄く栄誉なことになるって感じなんだろうね。
まあ、貴族とはいえ、国王陛下に面と向かって接する機会っていうのは極々限られているだろうからねぇ……下位貴族だったり、後継者候補でもなかったりすれば、特にだろうしさ。
また、入場しているあいだ会場中から拍手のほかに各自の推しの名前をコールする声も聞こえてくる。
その中には、俺の名前をコールする声も聞こえてきて、悪い気はしない。
それも、一般の観客席から聞こえてくる声が多いような気がする。
まあ、もともと俺には、リッド君やゼスたちみたいな平民の知り合いが結構いるからねぇ。
それから、貴族席のほうに目を向けてみると、ご夫人方が慈愛のこもった柔らかな笑顔を浮かべながら拍手をしてくださっている。
そうしたご夫人方とは明らかに目が合っている気がするので、特に俺に向けた慈愛の笑顔だと思っておきたい。
いや、発想がアイドルヲタクかよって感じもしないではないが、それはそれ、思うことは自由である。
とまあ、聞こえてくる名前の割合としては、ロイターとかもともと固定ファンの多い奴の名前がやはり多いように感じるが、とりわけラストバトルの印象の強さもあってか、ファティマの名前が一番多く聞こえてくる気がする。
そこで、貴族のご夫人方に目を向けているあいだに自然と目に入ってくる視覚情報として、中央の文系貴族らしきオッサンたちがファティマに向けている視線に苦々しいものが混じっているように感じられる。
まあ、そういったオッサンたちは、俺にも似たような視線をくれているけどね。
この辺についてはねぇ……やっぱり、武系と文系で仲が悪いからっていうのがあるんだろうなぁ……
ただ、たとえ文系貴族であっても、ご夫人方の多くは俺に対して温かい笑顔を向けてくれているので、かなり恵まれていると思うし、ありがたいものだよ。
そんなわけで、マイナスな感情を向けてくるオッサンについては知らんが、ご夫人方に何か困ったことがあった場合、力になれればと思う次第である。
そんなことをつらつらと考えているうちに入場を終え、舞台中央に並ぶ。
そして、国王陛下も席を立ち、舞台に降りて来られる。
ふぅむ……やはり国王陛下、威厳たっぷりだねぇ。
まあ、原作ゲームにも登場しているので、どんな姿をしているのかとかは事前に知ってはいたんだけどね。
そんで、威厳たっぷりとはいえオッサンという見た目ではなく、ハンサムな大人の男性って感じだ。
まあ、この世界の見た目年齢は当てにならんのだが、王女殿下と俺たちが同学年だけあって、国王陛下も俺の母上たちと似たようなご年齢だろう。
『これより、国王陛下から武闘大会1日目の本戦出場者たちへメダルが授与されます……まずは1年生男子の部1回戦第1試合出場! テクンド・ダンルンカク!!』
こうして、1人1人へ国王陛下からメダルが授与されていく。
順番としては、1回戦第1~8試合までの出場者、2回戦第1~4試合までの出場者、3回戦第1と第2試合までの出場者、決勝の準優勝者と優勝者って感じで、男女それぞれおこなわれる。
また、メダルに関していうと、1回戦と2回戦はサイズが違う金のメダル、3回戦はミスリルのメダル、決勝は準優勝と優勝でサイズが違うオリハルコンのメダルが授与される。
ここが前世とは違う異世界であるといっても、本戦に残ることができれば金メダル以上が確定するという状況……うぅむ、感覚がバグりそうだね。
そんなこんなで、国王陛下は本戦出場者たち1人1人に言葉をかけながらメダルを授与していく。
その中でも、特に王女殿下の取り巻きを務める男たちは、あまりの感激に目を潤ませ……涙がこぼれるのを堪えているぐらいだ。
まあ、頑張り次第によっては、将来のお義父さんになる可能性もゼロではないわけだからねぇ……
そうこうしているうちに、シュウへのメダル授与が終わり……
『武闘大会1年生男子の部優勝! アレス・ソエラルタウト!!』
ついに俺の番がきた。
「アレス・ソエラルタウト、見事な闘いぶりであった」
「恐悦至極に存じます」
「ふむ……こうして改めて近くで見てみると、目元にソレスらしさもあるが……やはり、リリアンによく似ているな……」
「……! 左様で、ございますか」
親父殿に似ている部分があるのは気に入らないが……国王陛下に母上似とお墨付きをもらえたのは、嬉しいものである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます