第750話 創り上げたという連帯感みたいなもの

「おかえり! ファティマちゃん!! ノアキアさん!!」

「パルフェナとの約束……なんとか守ることができたわ」

「うん、そうだね……凄かったよ、ファティマちゃん」

「そうねぇ……この私が負かされたのだから、ファティマの強さは本物ね」

「今回は運よく勝たせてもらえたけれど、次はどうなるか分からない……この勝利に慢心することなく、より鍛錬を積んで行こうと思うわ」

「ファティマにパルフェナ……あなたたちから人間族の強さ、さらにいえば世界の広さを教えてもらった……私こそ、より鍛錬を積む必要があると痛感しているところよ」

「ノアキアさんに教えてもらったのは、私のほうだよ! だから、2人に置いて行かれないよう、私ももっともっと頑張んなきゃ!!」


 試合をとおして育んだ友情……いいもんだねぇ。

 そこにもう1人……


「やったな、ファティマ! ま、アタシに勝った女なんだから、当然っちゃ当然の結果だろうけどな!!」

「ありがとう、ゼネットナット……あなたが贈ってくれた声援も、私の力になったわ」

「お、おう……そっか……」


 強気な物言いの目立つファティマが、素直に感謝の言葉を述べる……その威力に、ゼネットナットもテレまくりのようだ。

 そこで、下手に指摘したらキレられそうなので、尻尾の状況などについては黙っておこうと思う。


「それはそうと……ノアキア~オメェもファティマに負けて、だいぶ丸くなったみてぇだなぁ?」

「ええ、そうね……あなたと同じように、私もすっかり懐かせられてしまったみたい……そして、私にも尻尾が生えていたら、今頃嬉しそうに尻尾を振っていたかもしれないわねぇ?」

「……な……ッ!!」


 軽くイジりに行ったゼネットナットに対し、ノアキアが反撃をかました。

 しかも、俺でさえ控えていた尻尾イジりを添えて……

 ノアキアよ……キレられても知らんぞォ!?


「ふふっ、これからはファティマに懐かせられてしまった者同士、仲良くしていきましょう?」


 そしてノアキアは、無駄に透き通った笑顔を浮かべながら、握手をするべく手を差し出した。

 そんな透明感の高過ぎる笑顔……エルフ族の美貌の無駄遣いだろってツッコミを入れたくなるほどである。

 さて、ゼネットナットよ……その差し出された手にどう応えるんだい?


「ま、まあ……ファティマに負けたってことに関しては立場が同じだからな……今日のところは握手しといてやらぁ!」

「うふふ、嬉しいわぁ……これからよろしくね?」

「ふ……ふん! お前の心がけ次第だな!!」

「あらあら、それは大変……気を付けなくてはなねぇ?」

「……そう思うなら、まずそのニヤケ面を引っ込めやがれ」

「あらぁ、私なりに誠意を込めた笑顔のつもりだったのだけれど……伝わらなかったのなら、残念だわぁ」


 う、う~ん……ノアキアヲタ辺りなら、感涙に咽び泣くような美しい笑顔だったかもしれないが……

 若干、ノアキアのイジり気質なところが感じられなくもない笑顔だった気もちょっとしたかな?

 たぶん、ゼネットナットはそれを感じ取ったのかもしれないね。


「ノアキアさん、ゼネットナットさん、親愛の握手なら2人だけでするんじゃなくて、私たちともしようよ! みんな力いっぱい試合した仲なんだしさ!!」


 ここでパルフェナが声を上げた。

 それにより、パルフェナとファティマだけでなく、その場にいた本戦進出者たちみんなで握手を交わすなんてことが始まった。

 また、その流れは女子たちだけでなく、男子たちにまで波及することとなった。

 ふぅむ……こういったところで、何気にパルフェナの人を繋げる力は強いんだなぁって思わされるねぇ……

 だって、これによって対戦している、していないに関わらず男女共に友情が芽生えた感があるんだもん。

 まあ、本戦進出者たちの中には、共に武闘大会1日目を創り上げたという連帯感みたいなものがもともとあったからっていうのもあるかもしれないけどね。

 そんな俺たちを見てか……


「クッ……やってくれたわね……ミーティアム家……」

「す、凄い……本戦に残れるような次代の有力者たちを総取りするだなんて……」

「あのたった一度の握手で、ファティマ様が得たものの価値は計り知れない……まったくもって、恐ろしい方ですね……」

「ファティマ……様の恐ろしさは当然として、私としてはパルフェナの存在も大きい気がするわ……」

「確かに……パルフェナのフォロー力ってかなり高いもんねぇ……たぶん、パルフェナがいなかったら、あの方はもっと女子のあいだで孤立していたに違いない……」

「あんなふうにグレアリミス家がミーティアム家を支えているからこその強さっていうのも、かなりあるでしょうねぇ……」

「うんうん、パルフェナちゃんは優しいもんね! だから私、パルフェナちゃんは好きだなぁ~!!」

「ほら……私たちの中にすら、こういうのがいるし……」

「まあ、ウチもパルフェナには一目を置いてたし……」

「悔しいけど……あのスタイルには、私もお手上げよ……」

「……パルフェナねぇ……あの子ほどじゃないけど、確かに苦痛に歪んだ顔が画になる子であることは、私も認めるところだわぁ……でもやっぱり、あの子が一番……ウフフフフ……」


 とかなんとかやっているうちに、ようやく舞台の整備が完了したようだ。

 あとは本日のプログラムとして、表彰式を残すのみって感じかな?

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