第749話 誰かの許可が必要なことでもないし?

「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」

「「「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」」」


 時間の経過とともに、コールの声が少なくなってはいる。

 しかしながら、依然としてコールを続けている者たちもいるのである。

 ファティマヲタにノアキアヲタ……さらに、お祭り騒ぎが大好きで、とにかく盛り上がっていたい陽気な連中……

 そして、ここにも……


「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」

「「「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」」」

「……ロイターよ、いつまでコールを続ける気だ? そろそろファティマたちも戻ってくる頃だろうし、さすがにもういいのではないか?」

「……ん? ああ、まあ、そうだな………………ふぅ……私としたことが、少々ハメを外してしまっていたようだ……」

「「「……助かった」」」


 うん、少々ってレベルじゃなかったけどね……

 コール地獄から解放されたサンズたちも「助かった」とかいっちゃってるし……それも、声をそろえてね……

 そうやってゴリッゴリのファティマヲタぶりを晒しておいて、腹立つぐらい画になる顔で「私としたことが……」とかいいやがって、このイケメンが!!


「……はうぅっ! ロイターしゃま、しゅてきしゅぎぃぃぃっ!!」

「嗚呼っ! あんなふうに凛々しいお顔で、見つめられたいっ!!」

「あれこそが! 私たちのロイター様よね!?」


 ほら、早速ロイターのファンクラブ会員たちがウットリしちゃってるじゃないか……


「はぁ~っ……あんなふうに熱心に名前を呼んでもらえるファティマ様が羨ましいわぁ……」

「ホントよねぇ……」

「とはいったものの、さっきみたいな凄いところを見せつけられると、私たちじゃ敵わないなって思っちゃうよねぇ?」

「ええ、そしてもちろん才能もあるのでしょうけれど……きっと、わたくしたちには想像もできないような努力をなさっているからこそ、あれだけの実力を身に付けることができたに違いない……」

「だよね……はぁ~ぁ……」

「……あたいも……ファティマ様みたいになることができたら、ロイター様に愛してもらえるかなぁ……?」

「は? あんた、私たちの話を聞いてたの? ファティマ様みたいになるのなんて、無理に決まってるでしょ!?」

「そうね、わたくしたちにできることといえば……こうして遠くからお慕いすることのみ……」

「でもでも、そんなのつら過ぎるよ! あたいだって、愛されたい!!」

「……はぁ……そんなにいうなら、ファティマ様みたいになってみれば? なれるならね!」

「いやいや、めんどくさくなったからって、突き放し過ぎでしょ……」

「ていうかさ……こういうのは、もうちょっと問答を続けてからサジを投げるもんなんじゃないの? それを即切りとは……」

「……いいよ! あたい! 今日からファティマ様みたいになる!!」

「あっそう……好きにすれば? でもまあ、ひとついっといてあげるとすれば、自分のことを『あたい』っていってるあいだは無理だろうけどね?」

「うぅ……わ、わたい……わた……し……わたし!」

「ま、先は長そうね?」

「まあまあ、そんなイジワルいわないの」

「そうだねぇ……努力すること自体は、誰かの許可が必要なことでもないし?」

「……いい機会だから、私もちょっと頑張ってみようかしら?」

「うん、頑張りたいなら、頑張ればいいよ! そういう私は、ロイター様に憧れてるだけで満足だから、そこまで頑張れないけどね、あはは……」


 もしかしたら、これからファティマなりきりガールが増えていくかもなぁ……

 そうなった場合……ファティマヲタはもちろん、ロイターにとってもパラダイスだったりして?

 とはいえ、やっぱりファティマ本人じゃないとヤダってなるかなぁ……?

 まあ、きっかけはどうあれ、希望に燃えて努力する人が増えるのはいいことだよね!

 そんなわけでロイターよ、彼女たちが頑張る原動力で在り続けるため……こちらも輝きを絶やすわけにはいかないよな!?


「アレス……そのキラキラした顔で私を見るのはヤメロ……ついでにシュウも、無駄に眼を煌めかせるのをヤメロ……」

「はて……なんのことやら……?」

「う~ん……今日は激戦続きだったせいか、眼の制御が思うようにできていないようですねぇ……?」

「とぼけよって! お前らときたら……まったく……」


 これだよこれ、ロイターのツッコミ!

 そして、シュウのノリのよさもグレイトだね!!


「ふぅむ、やはり……ロイター様の隣には、アレス様がよく似合うわ……」

「ほんに、ほんに……」

「そんなお2人に、シュウ様という珍しい組み合わせ……こちらも凄くいいわね……」

「……いい」

「試合中は心配が絶えなかったけれど……でも、それ以上に美しくも激しい男の語らいを堪能させていただき、幸せな時間でもありました……」

「至福の刻に感謝を……」

「今後は、ロイター様とアレス様の組み合わせを基本としつつ、シュウ様にも注目していくべきね……」

「ええ、シュウ様なら、ロイター様とアレス様のどちらにも合う……そして、3人での組み合わせも実に素晴らしい……」

「あなたたち、ヴィーン様のことも忘れてはいけないわよ?」

「そうね……アレス様とヴィーン様の組み合わせも、とてもよかった……」

「そう! 私なんかは、アレス様とヴィーン様の試合を観て、この組み合わせこそがベストだと確信したぐらいよ!!」

「それをいうなら私は……」

………………

…………

……


 俺レベルの男には、ディープな話も聞こえてきつつ……


「……ただいま」

「医務室に着いてからも、ずっと私たちの名前を呼ぶ声が聞こえてきて、少し恥ずかしかったわ……」


 ファティマとノアキアが医務室から戻ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る