第747話 自分を磨くことに集中したほうがいい
「正直、エリナ先生ご自身が浄化の光を使ったほうが簡単でしたでしょうに……それを学びの機会とするため、あえてサーリィさんにやり遂げさせるとは、さすがですねぇ……」
「フッ……お前も後期からAクラスでご指導を受けていて分かっていることとは思うが、それがエリナ先生の崇高なところだな」
「そのようですねぇ……それはそうと、これでサーリィさんは浄化の光の本質を学ばれたと思いますが……今回は相手が自派閥の仲間だったからこそ、なんとか効果を発揮させることができたのでしょう……しかしながら、これが関係の薄い相手……もっというと自身が重きを置いていない相手であっても慈しみの心を起こせるかどうか……それがサーリィさんの今後を左右することになっていきそうですね……」
「ふむ、派閥の長であれば責任感などもあっただろうし、やっぱり仲間は特別だもんなぁ……ま! その辺のところは、これからの人間力に期待って感じだが……ああやってエリナ先生にありがたいお言葉を頂いているのだから、大丈夫だろ!」
「それもそうですねぇ……」
というか、エリナ先生のお言葉を心から受け止めることができないような奴は終わりだよ! お・わ・り!!
そうして、ファティマアンチの令嬢たちに言葉をかけたあと、エリナ先生は次の現場へ向かうようだ。
というのが、ファティマとノアキアに熱烈なコールを贈っている人が大勢いて気付きづらいのだが、ファティマアンチの令嬢以外にも怯えている人がいるみたいなんだよね……
それが単にハートを鍛え足りないだけであれば、これから頑張れってだけの話だが……何やらイケナイことを考えていた奴は猛省すべきところだな。
「サーリィ様……お助けいただいて、ありがとうございます……」
「もうダメなんだなって……それしか考えることができなくなっていました……」
「ふぅぅぅ……生きてるって……素晴らしいことですよねっ!」
「ウチはもう……あんな思いしたくない……」
「私も、あんな恐怖体験はごめんだわ……」
「あの黒い炎……ハンパじゃない……」
「そうね、私たちじゃ相手になんない……」
「う~ん、別に火傷とかはしてないはずなのに……なんでかジンワリ痛い感じがするのよねぇ……?」
「やめてよぅ……あのこわいのを、また思い出しちゃうよぅぅぅ……」
「サーリィ様……これ以上はもう、ファティマ様に構うのはやめにしませんか?」
「そうですよ……エリナ先生にも、自分を磨くことに集中したほうがいいって教えられたばかりじゃないですか……」
「まあ……そうねぇ……」
ほう、早速エリナ先生のお言葉を受け入れるとは……いいじゃないか。
「おぉっ! お分かりいただけましたか!!」
「よかったです……サーリィ様……」
「うん、そうだよね……あの人、普通じゃないもんね……」
「そうそう! もう、あの人と関わるのはやめとこう!!」
「ええ、命が何個あっても足りないわ……」
「とにかく! あんな思いは、もうイヤ!!」
「はぁ~っ……これであのこわいのも、忘れることができるぅ~っ!」
「……あなたたち、何を勘違いしているの?」
「「「えっ!?」」」
おやっ? ファティマアンチリーダーよ……何を言い出すつもりかな?
「今まで私は、戦闘は男の仕事と思ってサポート用の魔法を主に訓練してきた……でも、今回の武闘大会を観て、他人に任せるのも限界があることを悟ったわ……やはり、自分の手で打ち勝つ必要がある……ただ、今の私では直接戦闘で勝つのは難しいのも確か……それゆえ、今は自分の戦闘能力を磨くことに集中するべきだと理解した……ふふんっ、私はサーリィ・ヨーエンよ! あの子より才能自体は上! 来年の武闘大会では必ず勝って見せるわ!!」
「「「え、えぇっ……そんなぁ……」」」
「フフッ……フフフフフ……あなたも、たまには面白いことをいうのねぇ……私も、今まではこうやって遠くから愛でているだけでじゅうぶんだと思っていたけれど……やっぱり、もっと間近であの子の苦痛に歪んだ顔を魅せてもらいたくなってきたわ……ウフフフフ……いいわぁ、あなたの戦闘訓練、私も付き合ってあげる」
「ええ、ええ! よくいってくれたわ!!」
「ただ……来年、あの子の苦痛に歪んだ顔を特等席で魅せてもらうのは私……悪く思わないでね? ウフッ、ウフフフフ……」
「ねぇ……どうする?」
「どうするっていったって……サーリィ様に付いて行くしかないでしょ……」
「うん……ヨーエン家に逆らうわけにはいかないもんねぇ……」
「うぅ……やっぱりかぁ……」
「あぁ……悪夢再び……?」
「なんでぇ……私はロイター様に目を覚まして欲しかっただけなのにぃ……」
「私だってそうよ……はぁ……派閥選択を誤ったかな……」
「今から抜けるのはぁ……ちょっと厳しいかぁ……」
「こうなったら……ウチも浄化の光を極めるしかないか……」
「自分の身を守るためには、そうするしかなさそうねぇ……」
「いやぁ~っ……もうこわいのいやなのぉ~っ……」
「みんな……もう諦めよう? みんな一緒なら、どんな訓練も辛くないよ……きっと……」
「「「そっちの諦めかぁ……」」」
ほうほう、そう来たか。
とはいえ、ファティマなら、そんなふうに直接向かって来てくれるほうが「成長の糧になる」といって喜ぶだろうなぁ……
そうして、インフェルノではなく、ファティマ自身に美味しくいただかれちゃうってわけだね……
「……ファティマ・ミーティアム……別にあなた自身に恨みがあるわけではない……でも、あなたがミーティアム家だからいけないのよ……女子の戦闘能力においても、ミーティアム家よりヨーエン家のほうが上だということ……来年の今頃にはそれを理解させてあげるから、楽しみにしていなさい……」
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