第745話 もう終わっちゃったんだ……

「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」

「「「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」」」

「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」

「「「ファ~ティ~マ!! ノ~ア~キア!!」」」

『とても熱く見事な試合を繰り広げた2人へ、会場中から称賛のコールが贈られています!』

『とても熱く見事な試合だったのはもちろんとして、その後にお互い敬意を向け合う姿も実に美しかった! そんなふうに武をとおして分かり合うっていうのは、本当に素晴らしいことですね!!』

『武をとおして分かり合う……そうですね、スタンさんのおっしゃるとおり! 私も素晴らしいことだと思います!!』


 うん、そうだね! 俺も素晴らしいことだと思うよ!!

 そうして、ファティマとノアキアの姿が見えなくなっても、2人を称えるコールは終わらない。

 でもね……残念なことだけど、分かり合えない子たちもいるみたいでさ……


「まったく……獣人族のゼネットナットさんといい、エルフ族のノアキアさんといい……態度ばかりが大きいだけで、本当に期待外れな方たちだったわ!!」

「「「……」」」

「ああ、そういえば……第2回戦では、魔族のズミカさんもミーティアム家の小娘に負けていたわね……はぁ~っ! 異種族の方たちって、日頃から魔力や身体能力などが人間族より優れているとか自慢しているけれど、あんな小娘1人に勝てないようじゃたいしたことないじゃない!!」

「「「……」」」

「……あら? あなたたち、黙っているけれど……どうしたの?」

「「「……」」」

「ねぇ……本当にあなたたち、どうしたの? ミーティアム家の小娘が浮かべていた、あの忌々しくも勝ち誇った顔になんとも思わなかったの?」

「「「……」」」

「ねぇっ! 下を向いて黙ってないで、なんとかいったらどうなの!!」

「い、いや……その……」

「えっと……あの……」

「口をモゴモゴさせているだけじゃ分からないでしょ! もっとハッキリしゃべってちょうだい!!」

「……ひぅッ!」

「あ、あんたいいなさいよ……」

「えぇっ、私!? なんでぇっ!!」

「しらないしらないしらないしらないしらないしらない……」

「あぁ……私、もう終わっちゃったんだ……」


 なんか、ファティマアンチの令嬢たちの様子がおかしいぞ……


「……はぁっ? 何が終わったというの!? まったく、要領を得ないわね!!」

「あ、あのぅ……サーリィ様? サーリィ様も、先ほどのファティマ……様が放ったインフェルノっていう魔法……見ましたよね?」

「インフェルノ……? ああ、あのこけおどしみたいな黒い炎のことね?」

「ひ、ひぃっ! 黒い炎! 黒い炎が迫ってくるの! 私を焼き尽くそうと迫ってくるのッ!!」

「嫌ッ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

「お願い! 許して! お願い! 許して! お願い! 許して! お願いよぉぉぉぉぉぉぉ……」

「うふふ……みんな……もう諦めちゃおうよ? みんな一緒なら、少しは恐怖感も薄れるかもしれないよ?」

「そっか……私、独りじゃなくていいんだ……みんなと一緒にいくことができるなら……それもいいかな……」

「うん、そうだね……それに、灰すらも残さず何もかも燃えちゃうなら……むしろ、この世に未練も残さず済んでいいのかも……」

「でも……それだと、私たちの友情もこの世に残しておくことができないってことなのかぁ……それは寂しいな……」

「ち、ちょっと! あなたたち! 何をいっているの!? 正気に戻りなさいッ!!」

「たぶん、どんな言葉をかけても無駄だと思いますよ? だって……あの魔法にみんな、これ以上ないぐらい恐怖心を植え付けられてしまいましたから……」

「ええ、正気を保てているのは私たち極少数だけ……それもギリギリなんですよね……」

「ハァ―ッ……ハァ―ッ……フフッ……ウフフフフ……表面上は余裕があるように振る舞いながらも、内心はインフェルノの制御を誤る恐怖と戦い続けていた……そんなあの子の悲壮な決意が滲み出ていた表情……最高に煌めいていたわ! アハッ! アハハハハッ!! これだからあの子を愛でるのはやめられない!!」

「ま、まあ……違う方向に正気じゃない子もいますけどね……」

「それは……うん、いつものことだから……それはそれとして、みんなもう手遅れなんです……残念ですけど……」


 いやいや、君たち……ファティマに対してビビり過ぎでしょ……

 さっきまでの威勢はどこいったんだよ……


「……まったく、あなたたちは何を弱気になっているの! それなら、先生たちが舞台上の炎を消しているみたいに、浄化の光でも浴びせてあげれば正気に戻るかしら!? いいわ、この私があなたたちのくだらない恐怖心を祓ってあげる!!」

「まあ、無駄だと思いますけどね……」

「ええ、もうどうしょうもないですよ……」

「ウフフ……今度はいつ、あの子のステキな顔を魅せてもらえるかしら……愉しみだわぁ……」


 まあ、ビビってない子もいるみたいだけどね……

 そうして、おそらく一番立場が上であろう令嬢が浄化の光を仲間たちに浴びせる。

 ほう……意外といってはなんだが、まあまあ強めの光を出せているようだ。

 とはいえ、ファティマのことを小娘とかいえるぐらいなのだから、その程度はできてもらわんと困るというものかな?

 さて……ファティマにビビり散らかしている令嬢たちは、無事に戻ってこれるかな?

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