第737話 降参勧告
『ファティマ選手のトルネードが時間の経過とともに徐々に弱まってきており……もう少しで解けてしまいそうです!』
『あの規模のトルネードを、よくここまで維持してきたといえますね……そしてノアキアさんとしても、これだけ木の生成に魔力を注ぎ込んだのは初めてのことではないでしょうか……』
『そうでしょうとも! これはもう、魔力量勝負でもありつつ、意地の勝負にもなっていたでしょうからね!!』
『まあ、エルフ族相手に魔法で張り合おうと思える人など、そうそういないでしょうし……』
『そう考えると、最初から無理だと諦めずに挑戦したファティマ選手の姿勢は、誠にアッパレといいたくなりますね!!』
『ええ、そうですね……といいつつ、まだ決着は付いていないので、ここからファティマさんがどう出るか……体力も魔力も尽きかけている中、最後まで意地をとおしてトルネードを発生させ続けるか、はたまた別の手段に切り替えるか……いずれにしても、決着のときは近いでしょう』
『なるほど! 泣いても笑っても、次の一手が勝敗を決めるというわけですね!!』
「ま、まだまだやれるよ! ファティマちゃ~ん!!」
「そうだ! 俺たちが付いてるぞォッ!!」
「エルフ族がなんぼのもんじゃぁぁぁい! ファティマちゃんは天に愛されてるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「俺たちは普段、ファティマちゃんの愛くるしい姿に日々の癒しや彩り、その他もろもろの恩恵を得ている! じゃあ、その感謝を返す機会は今をおいていつだ? 今こそが、その絶好の機会なんじゃないか!? なら、もっともっと全身の全霊で! 応援するっきゃねぇだろ!!」
「そうだ! そうだ!!」
「一人が万民のために……万民は一人のために尽くす……それこそが我々の在るべき姿なりッ!!」
「僕の想いの力……その全てをファティマ様へ……」
「この試合が終わったら、ぶっ倒れてもいい……いや、倒れなきゃオレの応援はウソになっちまう! オレのフルパワーをファティマちゃん! 受け取ってくれェェェェェェェェッ!!」
「よっしゃ! 行くぞォッ!!」
「「「応ッ!!」」」
「ファ~ティ~マ! ファティマ!!」
「「「ファ~ティ~マ! ファティマ!!」」」
会場全体の雰囲気がノアキア優勢という感じに染まりつつある中、ファティマヲタたちなど一部が懸命に応援の声を張り上げている。
もちろん俺たちもロイターを中心として、ファティマの応援に力を入れている。
『あぁっと! ついに! ついにファティマ選手のトルネードが解けてしまったァァァァァァァァッッ!!』
『ふぅむ……ここまで本当によく堪えましたが……』
「……フゥ……さすがにあなたは幻影じゃなさそうね?」
「……ッ!!」
『トルネードが解けた今! 遮るものがなくなったノアキア選手の木が、次々とファティマ選手に襲いかかって来るゥゥゥゥッ!!』
『幻影魔法に回すだけの魔力もなくなってしまいましたか……これは厳しいですね……』
「来た! 来た! 来たァァァァァァァァァッ!!」
「今よ、ノアキア! ガッツンガッツンにやっておしまいッ!!」
「さぁて、ファティマのクソ女め! とっておきの絶望タイムを味わうといいわっ!!」
「ロイター様を誑かした悪女に! 正義の鉄槌をッ!!」
「同じく、アレス様を誑かした悪女に! 正義の鉄槌をッ!!」
「う~ん……どっちかっていうと木槌じゃない?」
「相変わらずアンタはもうっ! そういうことじゃないでしょっ!?」
「とにかく! これで、ファティマに騙されている男子たちの目が覚めてくれればいいの!!」
「そ・の・と・お・りッ!!」
「アハハッ! アガる、アガる! 超アガってきてるゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
「ハァハァ! ハァハァハァーッ!! いい……凄くいい顔……でももっとよ! もっといい顔を魅せてちょうだぁぁぁぁぁぁい!!」
「ふふっ……ようやく万事休すといったところかしら……そうでしょう? ミーティアム家の小娘……」
「まあ、これでファティマに勝てたら、ノアキアの上から目線も多少は大目に見てあげてもいいかなぁ?」
「そうねぇ……私たちって、と~っても心が広いものねぇ~っ!」
本日最高といえるほどの盛り上がりを見せているファティマアンチの令嬢たち……
だが、ファティマの目には、まだ闘志が宿っている……
それはつまり! これで終わりではないということ!!
『次々と襲い来る攻撃に後退を続けていたファティマ選手でしたが! とうとう壁に追い込まれてしまったッ!!』
『そして、ファティマさんの背にはもう……コモンズ学園長の施した防壁魔法があるのみ……』
「……ハァ……ハァ……」
「……フゥーッ……パルフェナに続き、まさかこの私がここまで苦戦させられるとはね……世界の広さを教えてくれたあなたたちには感謝しなければいけないわね……それはそれとして、まだほかに手はあるのかしら? ないなら、降参を勧めるわ」
「はぁっ!? そんなのダメよ!!」
「そうよ! ここからが一番いいところなんだからぁっ!!」
「寝言なんかいってないで! さっさとボッコボコのギッタギタにしなさいッ!!」
「ノアキア……私たちの期待を裏切る気!?」
「ったく! サガることいってんじゃないわよ!!」
「でもまあ……プライドの高いノアキアさんが、ファティマさんをいたぶって遊ぶわけもないよね……」
ノアキアの降参勧告に不満タラタラのファティマアンチの令嬢たちはともかくとして……ファティマの返答はいかに?
といいつつ、答えは分かりきっていることだけどね……
「さあ……どうなの? まだ続けるつもり?」
「……ハァ……ハァ……もちろんよ……ようやく準備が整ったのだから……」
「ふぅん……いいわ、こうなったらとことん付き合ってあげる」
「……フフッ……フゥ……嬉しいわ……」
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