第733話 ほかの属性も使ったらどうなの?

『ノアキア選手がレイピアにトルネードを纏わせたことにより、どうやら物理戦闘オンリーの攻防から魔法を絡めた戦闘へと移行していくようです!』

『まあ、両者共に魔法をメインとした戦闘スタイルが本来のものでしょうからねぇ……』

『確かに! そう考えると、ここまで物理戦闘オンリーで攻防を繰り広げたのは、まさに意外だったといいたくなってきますね!!』

『はい、そして今まで観てきたように物理戦闘だけで素晴らしい実力を持つ2人が、ここからは本格的に魔法も使っていくのでしょうから、さらに白熱した攻防になっていくのだろうと思われます』

『おおっ、それは凄い! ここからの展開は、これまで以上に目が離せませんね!!』


 ふむ……様子見の段階は終わったって感じかな?


「ようやく、ノアキアも本気になったってところね!」

「きっと、スンゴイ魔法でファティマのクソ女をやっつけてくれるハズ!!」

「やった、やったぁっ! メチャクチャ楽しみぃぃぃぃぃっ!!」

「くふふっ……やっと、やっとあの子の苦痛に歪む顔を魅せてもらえる……! アハハッ……ハァーッ! ハァ―ッ!!」

「そうよ、そう……ミーティアム家の小娘ごときが、調子に乗っていられるのも今のうち……思いっきり挫折を知るといいわ……」

「……でも、どうかなぁ? ゼネットナットさんとの試合みたいに、また競り勝っちゃうんじゃない?」

「う~ん、それはないとも言い切れないか……いや、ダメよ! 私たちが弱気になっちゃダメ! 絶対にノアキアさんが勝つのよ!!」

「そうそう! ノアキアには、ファティマの偉そうなツラをグッチャグチャにしてもらわないといけないんだからっ!!」

「ゼネットナット戦の終盤、あのときのボッコボコ具合も見物だったけど……あれ以上のものが見れたら最高よねぇ……」

「ノアキア……せっかく、この私たちが応援してあげているのだから、必ず期待に応えなさいよ?」


 あらら……ファティマアンチの令嬢たちも、マイナス方向に火力を増し始めているようだね……

 ただ、どんなに嫉妬の炎を燃やしたところで、ファティマには届かないんだろうなって思うんだ。

 だからさ……そろそろ君らも、自分磨きにシフトしてみたらどうだろうか?

 そうすれば、いつかはファティマと対等のステージに立てる……それどころか、努力次第ではもっと上に行ける可能性だってあるんだよ?


「……アッ!! アレス様がこっちを睨んでいらっしゃる……!?」

「も、もしかして……私たちがファティマの文句をいっていたから?」

「ウソでしょ……まさか聞こえてたっていうの?」

「ヒッ、ヒィィィィィッ!!」

「……くっ! なんて女! 強い男に守られているからって、いい気になっちゃってさぁっ!!」

「そうよ! 卑怯な女め!!」

「アレス様にロイター様、そしてサンズ様やヴィーン様たちといった超一流の男性たちに囲まれていて……ファティマさんが羨ましいなぁ……」

「そうよねぇ……本当に……」

「私もっ! 一度でいいから囲まれてみたいなっ!!」

「……男なんてどうでもいい……私はただ、純粋にあの子の苦痛に歪む顔を愛でたいだけ……ハァ……ハァ……早く、早く魅せてちょうだいな……」

「ふ、ふん……あの小娘が悪いのよ……ミーティアム家なんかに生まれるから……」


 別に、睨んだつもりはないんだけどなぁ……

 まあ、受け取り側によっていろいろ変わってしまうのは仕方ないか……


「へぇ……風属性をそこまで上手く使いこなせるだなんて、なかなかやるじゃない」

「ありがとう……でも、あなたは風属性が得意属性というわけではないのでしょう? そうであるなら、変な縛りはやめてほかの属性も使ったらどうなの?」

「そうねぇ……さすがに風属性だけで勝負を決めようとすると、時間がかかり過ぎてしまうかしら……」

「いえ、時間がかかり過ぎるどころか……私に勝てないわ」

「ふふっ、相変わらずの強気ねぇ?」

「事実だもの」

「まあ、いいでしょう……お望みどおり、ほかの属性も使ってあげる!」

「それは楽しみだわ!」

『おぉっと! ファティマ選手の足元から勢いよくウッドランスが突き出してきたぁッ!!』

『……あれは一見、地属性のウッドランスに見えますが……どうやら違うようです』

『えっ! ウッドランスでは……ない!?』

『よく見てください……ほら、枝が伸びてきたでしょう?』

『あっ、本当だ! ウッドランスかと思った木の槍から、いくつも枝が伸びきました!!』

『カイラスエント王国……というより人間族の魔法大系には大きく取り上げられていませんが……どうやらあれは、木属性の魔法ですね』

『木属性! あの扱いの難しさから、地属性に含まれなかったといわれている木属性ですか!?』

『はい、その木属性です』

『おぉっ! 我々人間族にとって扱いの難しい木属性をあんなにあっさり扱うことができるなんて、さすがエルフ族というよりほかにありませんね!!』

『ええ、これを機会にじっくりと木属性の魔法を見学させていただきたいところです』


 まあ、そりゃエルフ族だもんねって感じだ。

 それに、ここで木属性を繰り出すってことは……ファティマよ、ノアキアも本気で勝ちに行くつもりのようだぞ?

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