第724話 衝撃
「「「キャァァァァァァァァァァッ!!」」」
「ま、魔力操作狂いの腕が……」
「消し飛んじまった……」
「うっ……うげぇッ!!」
「お、おい! ポーションでも回復魔法でも、早く使えって!!」
「運営! 何してんだよ!? 担架だろ、早く!!」
『な……なんてことだ……アレス選手の両腕がはじけ飛び! 両肩口から鮮血が噴出……ッ!!』
『……シュウさんの一撃は、アレスさんの魔纏を突き破り……その勢いは、腕2本を犠牲にすることでようやく止めることができた……といったところでしょうか……』
うぃ痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!
……と、泣き叫びたいところだが……ここは我慢だ……
おそらく顔面……いや、体中から脂汗が滲んでしまっているだろうが……表情だけでも、いたって平静ですって感じを保たねば……
そ、そうしなければ……俺のクールなイメージが崩れてしまう!
それだけは……なんとしても避けねばッ!!
フゥーッ……フゥーッ……平静に……クールに……
フゥーッ……フゥーッ……平静に……クールに……
フゥーッ……フゥー……
「……フゥ……やれやれ……アレス君の魔纏を突き破るまでは……できたようですが……あと少し……威力が足りなかったようですね……ざんね……グッ、ハァ……ッ……!!」
「……あっ! おいっ!?」
ロイター戦の結末を思い出させるように、シュウは全身から血を噴出させながら……前のめりにゆっくりと体勢を崩した。
そこで俺は、両腕が吹っ飛んでいたため、ややフラつきながらも胴体で倒れそうなシュウをなんとか受け止めた。
また、その際……胸の辺りでパリンと小さく音がした。
……ああ、俺のポーション瓶が割れたようだな。
「……シュウよ……お前は威力が足りなかったといったが……じゅうぶんな威力があったようだぞ……?」
「……フ……フフ……それは、アレス……君が……受け止めてくれた……から……その衝撃によるもの……でしょう?」
その程度の軽い衝撃でポーション瓶が割れるわけない……おそらく、直撃こそしていないもののシュウの拳圧を受けて、ポーション瓶の強度はほとんどゼロになっていたのだろう……
だから、ちょっとした接触で割れた。
そうして割れたポーション瓶から流れ出てきたポーションが、触れ合っていた俺とシュウの体をゆっくりと癒していく……
「……勝者! アレス・ソエラルタウト!!」
「……なッ!! なぜ……ルール上、ポーション瓶を割られたのは、俺のはずでは!?」
先生! ここにきて、変な忖度はいらないですよ!!
「アレス君……何も間違っていませんよ……なぜなら、僕の拳が魔纏に当たった時点で既に……僕のポーション瓶は砕け散っていましたから……」
「……えっ?」
「そのとおりだ……インパクトの際に発生した魔力の奔流によって、先にシュウ・ウークーレンのポーション瓶が割れていた」
「そう……だったの……ですか?」
なんだろう……微妙に納得感が薄いのだが……
『審判からアレス選手の勝利が宣言されましたが……どうやらアレス選手本人は釈然としない様子……』
『う~ん、そうですね……アレスさんの魔纏を突き破ることができるかどうかという勝負についていえば、シュウさんの一撃が見事突き破ることに成功したわけですから……アレスさんとしては、勝負に負けたという感覚が沸き起こっているのかもしれません……』
『なるほど! いわゆる試合に勝って、勝負に負けたというやつですね!?』
『ええ、おそらくは……ただ、魔纏を突き破られはしたものの、アレスさんはまだ戦闘継続が可能……それに対し、シュウさんは不可能だった……よって、内容的にもアレスさんは勝ち名乗りを受けるに値すると思います』
『確かに、アレス選手は回復魔法でジワジワと腕を再生させるだけの余力があったようですが……シュウ選手は力尽きて倒れるところでしたからね……』
そ、そうか……
まあ、俺の納得感はどうあれ、審判の先生は正しく判定を下してくれたのだろうからな……
……とか思っていると、1人の女生徒が観客席から俺たちの目の前に降り立ったのだが……えぇと……どちらさん?
「一度ならず二度までも無理をして……もう少し丁寧に闘いなさい」
「いやはや……面目次第もありません……」
「本当にそう思っているのかしらね……まあ、説教はあとにするとして……替えのメガネよ……」
「……すいません……腕がまだ動かないようでして……」
「はぁ……仕方ないわね……」
そういって謎の女生徒は、シュウにメガネをかけさせてやった。
また、今まで気付かなかったが、どうやらポーション瓶と一緒にシュウのメガネも吹き飛んでしまっていたようだ。
それと、ポーション瓶やメガネだけでなく……
「それから、私の制服だけど貸してあげるわ……」
「あはは……お世話になります……」
「まったく……」
実は、先ほどの一撃でシュウの上着も消し飛んでいたみたいなんだよね……なんというサービス展開……
ちなみに、サイズ自体は調節機能があるからね、自動的にピッタリってわけさ。
「フェイさん……いろいろと、ありがとうございます」
「別に、いいわよ……」
「え、えぇと……?」
「ああ、アレス君……こちら、フェイ・リーリゥさんといいまして、僕と師を同じくする姉弟子にあたる方です」
……あ、姉弟子だとォッ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます