第723話 ひたすら積み重ねてきた鍛錬の集大成

「……フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ」

「よしよし……俺も魔力を練るとするかね……」

『ここにきてシュウ選手が魔力を練り始め、それに呼応するようにアレス選手も魔力を練り始めました……』

『まあ、本来ならこうして試合中にじっくり魔力を練ることなど不可能なので……これは、この2人ならではの特別なことといえるでしょう……』

『た、確かに……片方が魔力を練ることに集中し始めたら、もう片方はここぞとばかりに攻撃を加えるでしょうからね……』

『ええ、そのとおりです』

『それにしましても、両選手とも魔力を練りに練っており……これから一体どんな光景を見せつけられるのかと、自然と震えてきてしまいますね……』

『はい、未だかつて見たことのないような……いえ、この先一生見ることがないかもしれないぐらいの光景を、我々は目にすることになるのかもしれません……』

『い、一生見ることがない……ゴクリ……』


 こうして魔力を練っていて思うのだが……いつもより、ずっとずっと魔力がゴキゲンなんだ……

 これはきっとシュウと一緒だから……その相乗効果なのだろうな……

 それはつまり! シュウのおかげで、さらにさらにと高みに上ることができているということ!!

 フフッ……フフフフフ……シュウよ! やはり、お前は素晴らしい男だな!!

 お前との出会いに、強く強く感謝する!!


「な、なんてこった……俺は村を出てきて、今日初めて武闘大会を観戦してるっていうのに……その最初の1回で、人生最高の試合を観ることになっちまっただなんて……」

「私も、今日が初めてなのだが……これまで繰り広げられてきたそれぞれの試合も含めて、ただただ驚愕するばかりだ……」

「い、いや、驚きまくってるところ悪いが……今日のは、どれも学生の試合ってレベルじゃねぇからな?」

「それどころか、この王国……いや、世界中を探したって、このレベルの試合を観るのはほぼほぼ不可能なんじゃないか?」

「ああ、俺はもう何年もこの武闘大会を観戦してきたが……こんな凄い試合が何試合もおこなわれるのなんて初めてだ……」

「お前さんのアピールはともかくとして……今日という日に、この場に立ち会うことができた幸運に感謝しなくちゃな……」

「幸運……か、そうはいっても……この先どんな試合を観ても、どうしたって今日と比べることになってしまうだろうから……それはそれで不幸かもしれないな……」

「違ぇねぇ……俺たちはもう、目が肥え過ぎちまった……きっと水準の上がっちまった俺たちの目には、よほどの試合じゃなけりゃ満足できないだろうよ……」

「そして我々は『もっと、もっと……』と飢餓感に苦しむことになるというわけか……哀しいものだな……」

「……おいおい、お前ら……ちょっとばかり悲観的過ぎやしないか?」

「悲観的過ぎ……だと?」

「ああ、そうだ……これからは、このレベルの試合がスタンダードになるってことは考えられないか?」

「「「……なッ!?」」」

「ほら、あのアレス様ってお方は、身分に関係なくいろんな奴に魔力操作を勧めて回ってるって話だろ? となれば、それを聞いて力を伸ばす奴が出てきてもおかしくないはず……どうだ、期待ができそうだろ?」

「な、なるほど……」

「要するに、この1年生だけが奇跡の学年ではない……というわけか……」

「というか、この1年生たちが、そもそもアレス様の影響を受けているのかもしれないしな……」

「そうか! それはあり得る!!」

「……ん? おい、見てみろよ……2人の様子が変わったみたいだし……そろそろじゃないか?」

「どれどれ……」


 魔力を練りに練った。

 それによって、魔力の準備は整った。

 というわけで……この世界で目覚めてから、ひたすら積み重ねてきた鍛錬の集大成ともいえるような、俺史上最高にして最硬の魔纏を展開する。


「……フゥ……お待たせしました……」

「いや、俺のほうこそ、ようやくイメージどおりの魔纏が展開できたところだ……」

「フフッ、そのようですね……この上ない防御力を誇る魔纏だということが、実によく感じられます……」

「ハハッ! そうだろう?」

「ええ、それはもう…………ですが、その魔纏! 僕の一撃で突き破らせていただきます!!」


 そうシュウは自信に満ちた笑顔を浮かべながら、宣言をしてきた。


「……ハハッ! ハハハハハ!! その意気やよし! 最高の一撃をくれたまえ!!」

「はい……それでは……フゥゥゥゥゥゥッ……」

『シュウ選手の身中で練り込まれていた魔力が今! 蓋を外されたかのように膨れ上がっていきます!!』

『あ、あんなにも活き活きとした魔力を感じることがあるだなんて……もちろん、それはアレスさんの魔力にもいえることですが……』

「……さあ、行きますよッ!!」

「よし来いッ!!」

『まさに最高と最高の激突! それを制するのは果たしてッ!!』

『どっちだッ!!』

「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」


 俺……今、最高に充実してます。

 この世界に……ありがとう。

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