悪役転生者は自由人～原作ゲームのシナリオを無視して行動したいと思います～

第722話 次の一撃で最後にしたいと思います

『なんと……なんということだ……シュウ選手の激烈な打撃の嵐をもってしても、アレス選手の魔纏を突き破ることができないなんて……』

『それだけ大量な魔力が超高密度に圧縮されていた……ということなのでしょうね……』

『ち、超高密度に圧縮とはいえ……限度があるでしょうに……』

『それを可能としてしまうところが、アレスさんの凄さなのでしょう……』

　……ふぅむ……とても激しい攻撃ではあったが、なんとか耐えきることができたようだ。

「なんだそりゃ……」

「た、確かに驚異的な防御力を誇るってのは周知のことだったんだろうけど……まさか、これほどまでとは……」

「ああ、冗談めかして『絶対防御』とかいっていたが……そのものズバリじゃないか……」

「あんなのどうやって破るっていうんだよ……ふざけんじゃねぇ……」

「しかも、何が哀しいって……あれだけやって、魔力操作狂いにはダメージらしいダメージがなさそうなところだよな……？」

「そうだな……シュウは全身全霊、まさしく身も心も燃やして攻撃を繰り出していたはずなのに……」

「あそこまでいくと……もはや卑怯だとすらいいたくなってしまうぜ……」

「うん……シュウ君がかわいそうだよ……」

「まあ、結局のところ……どうやっても『才能の差』ってシンプルな答えに行き着くしかないのかもな……」

「ふむ、シュウ殿も飛び抜けた才能の持ち主であったが……アレス殿の才能はそれをさらに凌駕していただけのことだったと……」

「あ～あ、そうやって考えていくと、なんかシラけてきたなぁ……」

「いや、ぶっちゃけこの決勝……それどころか、そもそも本戦からして雲の上感あったけどな……」

「ま、とりあえずシュウもダメっぽいし……サクッと魔力操作狂いの優勝でいいんでねぇの？」

「そうそう、これ以上無駄に長引かせないで終わればいいさ……」

「というか！　俺たちとしては、このあとのファティマちゃんの試合が本番だからな!!」

「「「そのとおりッ!!」」」

「そ、そうか……まあ、頑張ってくれや……」

「ぼ、僕はね……実はノアキアさんが気になるんだ……」

「「「なんだとッ!?」」」

「ひゃっ！　すいません、すいません!!」

「いやまあ、誰に注目しようがソイツの勝手だろうけどな……」

　気の早い奴は女子の部に意識が向かっているみたいだけど、まだ決着がついたわけじゃないんだよね……

「そ、そんなバカな……シュウの攻撃が効かないなんて……」

「アレス・ソエラルタウト……なんて奴だよ、まったく……」

「ま、まあ、アレス君が強いということは誰もが理解していたことよね……でも、それでもここまでとは……」

「シ、シュウが……このまま終わるわけ……ない……」

「そ……そう！　ホント……そう……」

「とはいえ……現状、あの魔纏という魔法を撃ち破る方法があるのかしら……」

「それは……その……」

「……ダメだダメだ！　弱気になっちゃダメだ！　ウチらがシュウの勝利を信じないで、誰が信じんだよ!?」

「「「……!!」」」

「そうよね……私たちがシュウ君を支えなければ……」

「シュウは……誰よりも強い！」

「当然だ！　アレス・ソエラルタウトなんかに負けるわけねぇって!!」

「シュウ！　まだ勝負は終わってないぞ！　絶対に勝てぇっ!!」

　ふむ……シュウを取り巻く武闘派令嬢たちも弱気になりかけたが、立て直して応援を再開したようだな……

　そんなことをふと考えたところで……

「……フゥ……やれやれ、あれでも足りませんか……本当に頑丈な魔纏ですね……」

　そういって、シュウが立ち上がってきた。

『……ま、満身創痍ながらシュウ選手！　不屈の闘志で立ち上がってきましたッ!!』

『アレスさんが展開したブリザードによってそれなりにダメージを受けていたところに、捨て身といっていいほどの全力攻撃……そこで逆襲の一撃をその身に受けたわけですからね……よく立ち上がってきたといっていいでしょう』

『ええ、ええ！　本来ならそのまま失神していてもおかしくないダメージのはず！　それにもかかわらずシュウ選手、鍛え方が違うといわんばかりに悠然とした面持ちです!!』

『まあ……実際に鍛え方が違うのは確かなのでしょうが……』

　ふむ……なんだかんだいって未だに不敵な笑みを浮かべているところを見るに、シュウの奴……まだ手があるようだ。

「さて……僕の体力も魔力も残り少なくなってきたので、次の一撃で最後にしたいと思います」

「……ほう？　それはつまり、とっておきの一撃をくれるというわけだな？」

「ええ、もちろん……僕に出せる最大の威力であることをお約束しましょう」

「なんと！　最大の威力とな!?　それはとても魅力的な響きだ……いいだろう！　その挑戦、受けて立つ!!」

「フフッ、アレス君ならそういうと思いましたよ……ただし、くれぐれもいっておきますが、気を抜かず全力で受けてください」

「ほほう、そこまでいうとは……凄い自信だな？」

「はい、本気でアレス君の魔纏を突き破りに行くつもりですからね……それぐらいはいわせてもらいますよ」

「ハハッ！　ハーッハッハッハ!!　面白い！　実に面白いぞ!!　ならば俺も約束しよう！　最高の魔纏を展開して受けてやるとな!!」