第721話 拳の圧力
ふぅむ……どうやらこの熱気、火属性の魔法によるものではなく……
「……ァァァァァァァァァアアアッ!!」
「……ッ!!」
『猛烈に吹き荒れるブリザードの中からッ! シュウ選手が飛び出して来たァァァァァァァァァァァッ!!』
『シュウさんの全身から立ち込めている蒸気……もしやあれは、シュウさんの燃え盛る闘気によるもの……?』
『打撃! 打撃! 打撃ィッ!! ブリザードの中から飛び出して来たシュウ選手! 勢いそのままにアレス選手を殴りに殴りまくるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』
『魔力の腕も総動員した渾身の打撃の嵐……なんとも壮絶ですね……』
「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
「……クッ……グゥゥッ……!!」
『アレス選手も懸命に防御するがッ! しかししかしッ! シュウ選手の勢いが激し過ぎて、防御が追い付かないッ!!』
『この上ない怒涛の攻めではありますが……とはいえ、アレスさんにはまだ強固な魔纏がありますからね……それを突き破ることができるかどうか……』
……チィッ! 今の俺の武技だけでは、この無数に重なる拳の圧力に対処しきれないというのかッ!!
仕方ない! 魔纏でこの攻めを耐えきってやろうじゃないかッ!!
「な、なんなんだよありゃ……」
「本物の闘気って……あんな鬼気迫るもんなんだな……」
「なんていうか……ロイター戦のときより、激しくねぇか?」
「いや、激しいとかそんなレベルの話じゃねぇぞ……」
「シュウの奴……ここで勝負を決めるつもりのようだな……」
「というかもう、勝負どうこうの問題じゃなくて……魔力操作狂いだから耐えることができているだけで、普通ならあのシュウの拳一発で直撃部分が消し飛んでてもおかしくないぞ?」
「直撃部分どころか……俺なら全身が蒸発させられているかも……」
「あ、あり得ない話じゃないな……」
「シュウの野郎……やり過ぎなんて言葉じゃ足んねぇぞ……」
「この連続する強烈な打撃音……しばらくのあいだ、耳から離れそうにないぜ……」
「そうだね、心の奥深い部分に刻み込まれそうだよ……」
「結局のところ、普段の穏やかそうな姿は仮初めのもので……あれこそがシュウの本質なのだろうな……」
「コ……コワい……」
「つーか、先生たちも止めなくて大丈夫なのかね?」
「うぅ~む、一番近くで見てる審判の先生ですら止めようとしてないもんな……」
「それだけ魔力操作狂いのことが信頼されてるってこと……なのか?」
「そ、その信頼も恐ろしいよね……」
「ああ、ぶっちゃけそんな信頼は嫌だ……」
クッ……シュウの奴め……好き放題に殴ってくれるものだ……
「いいぞ! シュウッ!!」
「きっと、アレス君だって無限に耐えきれるわけじゃないわ! ここが頑張りどころよ!!」
「シュウの拳は全てを砕く……それがこの世の理……」
「そう! ホントそう!!」
「砕け砕けぇっ! シュウ! 砕き尽くすんだぁっ!!」
「勝利は目前! 優勝の栄誉をその手につかみ取るのよ!!」
「どの手……」
「「「それはもういいのっ!!」」」
フンッ……無限にだって耐えて見せようじゃないか……!
「アレス、お前を倒すのはこの私なんだ……それまで負けるのは許さんぞ……」
「そうですよ、アレスさん?」
「フフッ……あのアレスが負ける? そんなのナイナイ」
「そうだ! 俺たちはいつも、模擬戦でアレスさんの強さを嫌というほど思い知らされてんだ!!」
「ええ、ええ! アレスさんが優勝を目の前にして負けるわけがありませんねぇ!!」
「きっと、アレスさんのことだから……シュウさんの強さを全力で味わっているだけに違いありません!」
「……ああ、そうに違いあるまい」
「こっちからはアレス君の魔力に揺らぎも感じられないし! まだまだ大丈夫だよっ!!」
「まったく、楽しそうな顔をするものだわ……本当に……」
まあね、シュウほどの実力者との戦闘は学びが多いからさ、ついつい楽しくなっちゃうのも否めないよね?
「アレス兄ちゃん! 絶対に大丈夫だって信じてるよ!!」
「おうとも! アレスのアニキは最強だかんな!!」
「アレスあにぃに教えてもらった魔纏の凄さはッ! ボクらが一番よく知ってるんだァッ!!」
「アレスお兄様! 私たちが付いてますわ!!」
「あんちゃん! 負けんな!!」
「やべぇパンチかもしんないけど! 耐えきってアレス兄のカッケェところを見せてくれよぉ~っ!!」
「兄ちゃん! 兄ちゃん!!」
「「「兄ちゃん! 兄ちゃん!!」」」
おっと、リッド君たちに心配をかけるのはよくないよな……
「……そろそろ、その拳を引っ込めてもらおうかッ!!」
「フッグゥッ!!」
ここで、シュウに魔力の塊をぶつけたった。
まあ、単なる魔力の塊に過ぎないとはいえ、かなりの密度で魔力を込めたし、それを避けようもないサイズで放ったのだ。
『押せ押せだったシュウ選手でしたが! アレス選手から逆襲の一撃を喰らって吹っ飛ばされてしまったァァァァァァァァァッ!!』
『シュウさんは完全に攻撃に集中していたようですからね……それをあの至近距離では回避することもできず、また防御にも手が回らなかったのでしょう……』
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