第720話 猛吹雪

「ハッ! フンッ! なるほど、こうなると手数は互角といったところか……」

「フフッ……まだまだ! どんどん行きますよ!!」

「……フッ! 俺の剣もつららも越えてくる拳があるとは……まったく、お前の武技には恐れ入る!!」

「お褒めに預かり光栄です……といいたいところですが、やはりこの程度の打撃ではアレス君の魔纏を砕くには至りませんか! いやはや、困ったものですねッ!!」

「フンッ! 魔纏は俺にとって最後の防衛ラインなのだからな、そう易々と砕かれてたまるかッ!!」

『舞台を埋め尽くすほどのアイスランスが次々と殺到し、そしてアレス選手本人からも斬撃が放たれてくる中! シュウ選手はその全てを魔力の腕と自身の腕でもって完全に迎撃を成し遂げ、なおかつ反撃の拳を叩き込みます! ですがですが! アレス選手の展開する魔纏までは貫けない様子!!』

『現段階において、武術の技量そのものの勝負としてはシュウさんに軍配が上がるといえそうですが、それだけではアレスさんから勝利を得るのは不可能……やはり、あの魔纏という魔力の膜を攻略してこそですね……』

『正直、私から見てシュウ選手がアレス選手に叩き込んだ拳の数々はどれも、それ一発で勝負を決められるほどの威力があったように思えましたが、それでも無理ということなのですねぇ……』

『ええ、アレスさん以外が展開した壁系統の魔法であれば、シュウさんの拳は突き破ることができていたでしょう……』


 ふぅむ……まだつららしか撃っていないとはいえ、攻撃魔法を解禁してすら優勢に立てていないのは悔しいところだな。


「あんだけアイスランスをぶち込んでおいて、シュウには一発もまともにヒットしてねぇっていうのもヒドイが……」

「ああ、あの魔纏とかいう魔力操作狂いの絶対的な防御力を誇る魔法も反則っていいたくなるよな……」

「ふと疑問に思ったんだが……ロイター戦のときのシュウみたいな限界を超えた自滅なんかは抜きにして、正攻法で奴らにダメージを負わせることって可能なのか?」

「う~ん……下手したら、先生たちですら無理だったりして……」

「いや、さすがにそれは……『ない』と断言できないところが恐ろしいところだよなぁ……」

「もう、ここまでくるとさ……僕ら人類に、彼らを倒す術ってものがあるのだろうか……とか思っちゃうよね!?」

「いやいや、一応あいつらだって人類……だろ?」

「おいおい、お前も『一応』って付けちゃってる時点で答えが出てるだろ……」

「いっそのこと……『神の生まれ変わり』とでもいってくれたほうが納得できるレベルだよ……」

「なんだったら、ちょっくら拝んどく?」

「おっ! それいいね!!」

「本当に、いい……のか?」

「何気に、魔法とか武術の技量向上にご利益ありそうじゃん?」

「とはいえ、もし仮にあの2人が神だった場合……信仰の証として物凄い鍛錬を要求されそうだな……」

「ま、まあ、既に魔力操作に取り組むことなんかは要求されてるし……今さらじゃね?」

「確かに、いわれてみればそうだな……」

「……そんなこといってるうちに、魔力操作狂いが別の魔法を使ったみたいだぞ?」

『アイスランスでは突破口を開けないと判断してか、アレス選手! ブリザードを展開ッ!!』

『ほほう……どうやら、砕かれたアイスランスの残骸も再利用してのもののようですね』

『なるほど! 無数の小さく鋭利な氷が襲いかかってくるというわけですね!? これは地味に防御が難しそうです!!』

『それに、アレスさんの展開したブリザードは容赦なく体温も奪っていくでしょうからね……シュウさんといえど、なんの対策もなければ動きが鈍るのは避けられないでしょう』


 前世で体験した猛吹雪をベースとしつつ、さらにゲームとかで見たようなエフェクトなんかも加味したイメージに魔力をどんどん注ぎ込んでいく!!


「シュウッ!!」

「な、なんて激しいブリザードなの……」

「しかも! どんどん威力が上がっていってやがるッ!!」

「そんな……ダメッ!!」

「それでも! シュウなら! シュウならぁっ!!」

「……絶対大丈夫だ! ウチらのシュウを信じようぜ!!」

「そう! ホントそう!!」

「お願い……シュウ君! 無事でいてっ!!」

「そんなブリザードなんかに負けんな! シュウゥゥゥゥゥゥッ!!」

『強烈なブリザードが猛威を振るう中、完全にシュウ選手の姿が見えません! 果たして、シュウ選手は耐えきれるのかァァァァァァッ!?』

『アレスさんはまだ魔力に余裕があるようですし……シュウさんは早くこのブリザードをなんとかしなければ、このまま押しきられてしまってもおかしくないですよ……』


 さて、シュウよ……どう出る?


「………………まだまだ…………この程度で……負けるわけにはいきません! ウォォォォォォォォォォッ!!」

『……こ、これは……熱気? そう、熱気です! 舞台のシュウ選手がいるであろう辺りから熱気が溢れてきています!!』

『ふぅむ……どうやらアレスさんのブリザードに対抗して、火属性の魔法を展開したといったところでしょうか……』

『なるほど! 確かに、それしか方法はなさそうですね!!』


 ……火属性の魔法だと?

 もちろん、熱さは感じるが……これは魔力とは少し違う気がするな……

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