第718話 最大限度の身体強化
「ソッ! ラッ! ラァァァァァッ!!」
「フッ! ハッ! ハァァァァァッ!!」
『アレス選手入魂の連続斬りッ! そして、シュウ選手も全身全霊をもって受けますッ!!』
『……いい……この攻防……とてもいいですよ!!』
『……スタンさんの口から、感嘆の声が止めどなく溢れていますが……確かに! 見事な攻防です!!』
ここまで身体強化を強めて、まだ対応してくるのか……さすがシュウだな!
「何してんのかよく分かんねぇけど……それでも、とにかくエネルギーに満ち溢れた戦闘が繰り広げられていることだけは感じられる……」
「……なんかさ、あの試合を観てると気分が良くなってくるっていうか……なんかイイ感じがするよね?」
「分かる……そんでもって、変なふうに聞こえるかもしれないけど、幸福感が湧いてくるんだよな!」
「おそらく、それだけ彼らが試合を心から楽しんでいるということなのでしょうねぇ……」
「ふむ、そういうイメージというか、意識みたいなものが自然と魔力に乗ってこちらまで漂ってきているのだろうな……」
「もしかしてだけど……失恋したときとかにあの2人の試合を観たら元気になれそうだよね?」
「まあ、元気になれそうかどうかでいえば……うん、なれそうではある……」
「……そんな精神状態で、奴らの試合を観る気分になれるかどうかのほうが論点になりそうな気がするけどな?」
「確かに……」
ふぅむ、仕方ない……さらに身体強化を強めるとするか……
とはいえ、身体強化もそこまでが限度だろうね。
仮にもっと強めた場合、溢れ出すパワーに振り回されて体の操作が思うようにいかなくなりそうだし……そうなるともう、レミリネ流剣術の動きではなくなってしまうだろう。
「……フゥゥゥゥゥゥッ…………ここからは! 今の俺に扱える最大限度の身体強化で相手をさせてもらうぞォッ!!」
「ほう、それは期待が膨らむというものですね! ……では、僕も応えないわけにはいきませんね!!」
『こ、ここでついに! アレス選手最大限度の身体強化が披露されるようです!!』
『アレスさんから最大限度の身体強化を引き出すとは……さすがシュウさんとしかいいようがありませんね……』
『まさに! まさに頂上決戦というにふさわしい闘いですね!!』
『ええ……そしてアレスさんに呼応してシュウさんもまた、己の限界を超えてくるのでしょう……』
『そうして両者! さらなる領域で激しくぶつかり合いますッ!!』
よっしゃ! 遠慮なく、ガンガン行ったるッ!!
「……ふぅ~む、この打撃音の数々……なんとも耳に心地よい……」
「ああ、実に素晴らしい……彼らが奏でるこの音色こそ最高の……男の音楽なりッ!!」
「そうか……男の肉体こそ! 最高の打楽器だったのですね!?」
「あの音が全てを視せてくれる……2人の肉体が美しく躍動する姿を……」
「……えっと、ごめんだけど……お前らがいってること、理解できない……」
「なんと!? それはかわいそうに……」
「……聴覚を研ぎ澄まし、その音を心で聴くんだ……さすれば、お主にも感じることができるであろうよ」
「そう……全ては心」
「嗚呼、今の私なら! 放浪の歌姫リストレアの作った曲を、さらに深く理解できそうです!!」
「そういえば魔力操作狂いの奴、この武闘大会ではマラカスを使わなかったんだな……」
「いわれてみれば……木刀ばっかだった気がする」
「ま、使用武器についてはともかくとして……シュウの奴、大丈夫なのかねぇ?」
「確かに……さっきのロイターさんとの試合終盤ぐらいの動きをしてそうだもんな……」
「うん、少なくとも限界ギリギリか……もう超えてそう……」
「命知らずっていうかなんていうか……さっきあれだけ危険な状態になっておいて、シュウの野郎もよくやるよな……?」
「まあね……結局のところ、僕らとは覚悟のレベルが違うってことなんだろうねぇ……」
「それに、彼がウークーレンだからということもあるのだろうさ……」
「なるほど、武の名門ウークーレン家の誇りがそうさせるってわけか……」
ロイター戦の時点では、このシュウの動きが限界を超えたものだといえただろうが……どうやら、今はそうではないようだ。
おそらく魔臓等がバージョンアップしたことにより、限界点もより高まったのだろう。
攻防を繰り返していて、なんとなくそんなふうに感じるのだが、俺の勘違いではないはず。
「どうしました? 最大限度の身体強化を使ってここまでですか!?」
「クッ! ……そんなわけあるかッ!!」
とはいうものの、押され気味であることも事実なんだよなぁ……
これはいかんな……
うぅむ……やはり俺自身が満足できるぐらいレミリネ流剣術を完璧に修めていない状態では、シュウに物理戦闘で勝つことは難しいか……
「アレス君……君のこだわりも分かりますが、そろそろ攻撃魔法を織り交ぜてみてもいいのでは?」
「ふむ……気付かれていたか……」
「フフッ……それぐらいは少しでもアレス君のことを知っていれば、誰でも分かりますよ」
「そうか……」
こうなったら……無理に物理戦闘オンリーで闘うことにこだわるのをやめて、攻撃魔法も使っていくべきか……
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