第714話 覚えているか?
「……ここッ!!」
「狙いは素晴らしいですが! だからといって当たってあげるわけにはいきません!!」
「……チィッ! これもダメか!!」
『ここぞとばかりに狙いすましたアレス選手の一撃をシュウ選手! 見事に捌きます!!』
『死角を突いた上手い一撃だったと思いますが……さすがシュウさんですね、よく視えています』
ホント、よく視えてるよね……
「正直、今の魔力操作狂いの一撃はヒットすると思ったぜ……」
「やっぱそう思った……よな?」
「シュウ君って、なんていうかさ……全てお見通しって感じがするよね?」
「ああ、どんなフェイントも通用しない気がする……」
「確かに……対応力が半端じゃねぇもんな!」
「魔力操作狂いの前に立つのも嫌だけど……かといって、シュウの前に立つのも御免被りたいところだ……」
「うん……それぞれ、別の恐ろしさがあるもんねぇ……」
どんなフェイントも通用しない……か。
うぅむ……どうにかシュウの想定を超える一撃を入れたいところだが……
「ハッ! フンッ!!」
「おぉっ! これもいいコンビネーションですね!!」
「まともに当たっていないのに褒められても、あまり嬉しくはないがな! ……そこッ!!」
「おっと! ……まあ、僕としてもそう簡単にやられるつもりはないですからね……ただ、良い攻撃には『良い』と惜しみない賛辞を贈るだけですよ!!」
「ほう! そうかいッ!!」
「ええ! そうですッ!!」
『両者共、これでもかというほど楽しそうに攻防を繰り広げています!』
『心から認め合える者同士の対戦ともなれば……当然といえるでしょう』
『良きライバルに巡り合えた……つまりはそういうことですね!?』
『はい、特にシュウさんはそう感じたからこそ、今まで参加してこなかった武闘大会に参加する気になったのでしょうし……』
『そういえば……ロイター選手との試合中にも、そのような会話がされていましたっけ……』
『ええ、そうでしたね』
良きライバルね……まさしくそのとおりだ!!
そして、思い返してみるとシュウって……前世の俺という意識が目覚めたあと、かなり早い段階から俺のことを評価してくれていた気がする。
まあ、俺のシャドーボクシング的格闘練習を見て「クラー拳」呼ばわりされたこともあったけどさ……
といいつつ、それもバカにしてってわけではなく、異国の武術だと変な方向に高く評価してのものだったっけ……
「……思えば、お前はかなり早い段階から俺のことを評価してくれていたな?」
「ああ、そういえば……初めて学園の運動場でアレス君が鍛錬している姿を見てからというもの、気が付けば目で追うようになっていましたね……」
「覚えているか? お前はあのとき、俺の動きを見て『クラー拳』と評したということを……」
「ええ、そうでしたね……実はあのときの僕は、アレス君の腕と足がそれぞれ4本ずつあるように見えていまして……それで、思わず『クラーケンの動きを模している』だなんていってしまったのですよ……」
「……なッ!?」
「いやはや、お恥ずかしい限りです……」
腕と足が4本ずつだって!?
なんだよそりゃ……
いや、ちょっと待てよ……俺の考え過ぎかもしれないけど、もしかして前世の俺と原作アレス君それぞれの腕と足を認識してたってことじゃないだろうな……?
なんていうか魂の同化が不完全で、胴体部分はちゃんと重なっていたけど、腕と足までは重なっていなかった……みたいな感じでさ。
だって、今も腹の中に原作アレス君の部分が俺の意識とは別に存在しているんだからさ……可能性としてはあり得る気がするんだよね……
「そして、僕が今まで武闘大会に参加してこなかったのは……実はこれが理由だったりするんですよね……」
「……ふむ」
「最近になってようやく、ある程度は制御できるようになってきましたが……今より小さい頃はそれが上手くできず、僕の眼には虚実が入り混じって視えていたのですよ……」
ああ、いわゆる魔眼ってやつね……前世の創作物とかでよく見聞きしてきたし、だいたいのことは想像がつくよ……
「なるほど、そんな状況では危なっかしくて武闘大会どころではなかったというわけか……それに、見たところその眼は魔力の消耗が激しそうだもんな……まあ、だからこそ、その魔道具のメガネで抑える必要があるって感じかな?」
「ええ、そのとおりです……このメガネがないと、制御の難易度が跳ね上がってしまいますからね……」
ただ、制御できるようになる代わりに、だいぶ眼の性能が抑えられているんだろうなぁ……
たぶん、やろうと思えば確度の高い先読みとかもできそうだし……まあ、そういうのは魔力の消費が物凄いことになるだろうから、簡単にできるようなことじゃないと思うけどね。
それに実際のところシュウは、眼に頼る必要がないぐらい本人の戦闘能力が高い……というより、眼を制御するために魔力をメチャクチャ無駄に垂れ流してるまであるだろうし……
そう考えると、余計な魔眼持ちになって損とまでいえるかもしれないね。
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