第712話 相手が誰だって負けんじゃねぇぞ!!
『ついに! ついに決勝戦、アレス・ソエラルタウト対シュウ・ウークーレンの試合が始まりました!!』
『ここまで数々の名勝負を繰り広げてきた2人ですからね……この試合もきっと、見応えたっぷりの素晴らしいものとなるに違いありません』
『ええ、まさしくですね! また、この試合によって1年生男子の中で一番強い男が決まるわけですから、特に意識せずとも自然と心が燃えてくるというものでしょう!! といったところで、まずはシュウ選手が挨拶代わりといわんばかりに高速移動からの突きを放つ! そして、それをどんと構えたアレス選手がキッチリと捌くッ!!』
『高速移動で距離を詰めて突きの一撃を叩き込むというのが、シュウさんの予選から一貫したスタイルですね』
『はい、予選ではその一撃でシュウ選手は勝利を重ねていましたもんね!?』
『そうですね……そして、本戦ともなるとさすがに皆さん、しっかりと対処しました』
『シュウ選手からすれば、対戦するにふさわしい相手かどうか見極めるための一撃といえそうですね!!』
とりあえず、これで門前払いは免れたって感じかな?
「あの一撃で沈められた者としては、悔しさしかねぇ……」
「あれなぁ……来ると分かってても、全くどうにもできなかったんだよなぁ……」
「試合開始の声を聞いたと思った次の瞬間、医務室のベッドの上だもんね……」
「これが本戦に残った奴らと俺たちの違いってわけか……チィッ! 自分の弱さにイラついてくるぜ!!」
「まっ! この無念な気持ちを噛みしめながらね、彼らのワザを学ばせてもらうとしましょうや!!」
「うむ、嘆いてばかりもいられないものな!」
「腕を磨いて……来年の武闘大会こそは!!」
「おう! そうだな!!」
ふぅむ、こうして対戦してみて改めて思うが……やはり武術オタクだけあって、シュウの技術力はすこぶる高い!
まあ、だからこそ意味があるわけだがね!!
『両者とも、序盤から実に見事な物理戦闘を展開しています!』
『ええ、お手本として心の奥深くまで刻み込みたい攻防です』
『スタンさんのおっしゃるとおりですね! 私もしっかりと心に刻み付けようと思います!!』
『……むむっ! 今のシュウさんが見せた軟らかく受けてからの鋭い突き! とてもメリハリが利いていて、凄くいいですよ!!』
『確かに! また、その鋭い突きを紙一重で躱したアレス選手も素晴らしい反応でしたね!?』
「なんというか……初手の瞬殺劇やロイターとの試合の印象もあって、シュウといえばひたすら高速戦闘ってイメージがあったけど……そればっかりじゃないんだな……」
「あんなふうにゆったりとした動きの受けから、突然鋭い突きを繰り出してくるとか……緩急あり過ぎて眼が追い付かないよ……」
「いやいや……眼どころか、体そのものが追い付かんよ……」
「そこんところ、魔力操作狂いもいい反応するよなぁ?」
「そうそう! それでさらに魔力操作狂いの本領は魔法なんだろ? ホントいやんなっちゃうよな!!」
「というか、魔力操作狂いの無尽蔵ともいえる魔力や体力のことを考えれば、シュウとしても序盤から全力全開で高速戦闘を仕掛けるわけにはいかんのだろうし……そうなると、ああやってゆったりと構えつつ要所要所で鋭く攻めるって闘い方を選択せざるを得んのだろう」
「まあ、最初から最後までずっと超ハイスピードで動かれるよりは、ゆっくりしてくれたほうが観る側としては助かるけどな……」
「うん、それはそうだね……」
俺としても、眼に魔力を込めながら戦闘を継続するっていうのは、それなりにしんどいからねぇ……
とはいえ、そんな様子を見せるわけにはいかんので、至って平静な顔を保つようにしているわけだ。
まあ、そういうメンタルな部分は日々平静シリーズによって鍛えられているからさ!
「シュウ! 相手が誰だって負けんじゃねぇぞ!!」
「シュウ君ならきっと勝てるわ! だから落ち着いて勝機を見極めるのよ!!」
「1年生男子どころか……シュウは世界で一番強い男なんだ! であれば、こんなところで負けるはずがないっ!!」
「そう! ホントそう!!」
「……ていうか、そもそもアレス・ソエラルタウトって真面目に剣術を学び始めたのは、つい最近のことなんでしょ? シュウとは積み重ねた鍛錬の量が違うんだから、その辺のところをガッチリと見せつけてやってほしいわ!!」
「武術の才能も努力も、シュウのほうが圧倒的に上……これは絶対」
とまあ、シュウを取り巻く武闘派令嬢たちの声も耳に入ってくるが……確かに、前世の俺という意識が目覚めるまで原作アレス君は鍛錬らしい鍛錬をほとんど積んでいなかったからねぇ……
そう考えると期間的に、努力量ではシュウにいくらか劣るかもしれない……
しかしながら、才能では負けていないはず!
となれば……アレス・ソエラルタウトっていう世界トップクラスの才能を観客たちに見せてやらんとな!!
「ヒッ! ま、魔力操作狂いが……捕食者の笑みを浮かべた……」
「シュウの奴……大丈夫かな?」
「ま、まあ、シュウだってとびっきりの実力者なんだ、そう簡単に喰い散らかされて終わることはない……はず!」
「だといいけど……相手はあの魔力操作狂いだからなぁ……」
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