第706話 己の獣性に打ち克つのよ!
おぉ~っ! もふもふだぁ~っ!!
……とまあ、ゼネットナットの外見が、ケモ娘好きならある程度喜んでくれるのではないだろうかといった感じに変わった。
それで、一番の変更点といえば……やはり、全身がもっふもふの毛で覆われているところだろうか。
獣化をする前だと、獣人族らしさを感じさせてくれる部分が耳と尻尾ぐらいしかなかったからね……それと比べると、ケモ度がアップしているといえるだろう。
ただ、獣化したからといって四足歩行になるわけではなく、二足歩行は維持したままのようである。
それと、制服は着たままだ。
なぜなら、魔法的な作用で自動的にサイズ調節をしてくれているからだね。
俺もこの世界に来た当初、ダイエットをして思いっきりサイズが変わったのだが、そのときも制服側が勝手に俺のサイズに合わせてくれたんだよなぁ……なんだか、懐かしい気がしてくるよ。
「あぁっ、獣化しちゃった……ファティマちゃん、大丈夫かなぁ?」
「だ、大丈夫に決まってるさ……たぶん……」
「まあ、ファティマ嬢のほうから獣化を要求したのだから、それなりに勝算はあるのだろうさ……」
「あれがウワサに聞く獣化……ゼネットナットさんだからこそというのもあるだろうけど、なんとも麗しい姿だ……」
「確かに……野性味の中に、女性ならではの優美さも感じられる……」
「僕もね、なんていうか単純にカッコいいなって感じるよ」
男子たちの反応としては……ファティマへの心配と、ゼネットナットへの感嘆といったところだろうかね。
「さあ……獣化が完了したのなら、そろそろ来るといいわ」
「グルゥゥゥ……ガァァァァァァァッ!!」
『咆哮を上げながらゼネットナット選手! 猛烈な勢いでファティマ選手を強襲!!』
『獣化の効果によって、身体能力が恐ろしいまでに向上していますね……』
まさに瞬間移動……あの速さを肉眼で捉えるのは、ほとんど無理だろうね。
まあ、俺レベルに魔力を眼にガンガン注ぎ込むことができれば……どうにかなるかもしれんがね?
「全然見えないけれど……きっとあれなら、やってくれるに違いないわ!!」
「ついに! あのクソ女がボコボコにされるってわけね!?」
「見て! 地面がどんどん陥没してるっ!!」
「ゼネットナットのパワーに……舞台の強度が耐えきれていないのね……」
「獣化……スゴイ……」
「ファティマったら、獣化をさせるだなんて自分から墓穴を掘るようなマネをして……あははっ! どうしようもないぐらいのおバカさぁ~ん!!」
「……早く……早く! あの子のグズグズの泣き顔を魅せてちょうだいッ!!」
「でもさ、ファティマさんのあの表情は全く恐れを感じていない……それどころか、ワクワク感でいっぱいに見えるよ?」
「またアンタは、サガるばっかいって……」
「とはいうものの、憎たらしいまでの余裕ぶった表情を浮かべているのは確かよねぇ……」
「ゼネットナット……せっかく私たちが応援してあげているんだから、期待に応えなさいよ……」
う~ん……まあ、ゼネットナットを応援しているといえば、応援していることになるのかなぁ……?
そんな感じで、ファティマアンチの令嬢たちは相変わらずの反応だった。
「それではダメ……激情に流されず、理性を取り戻すのよ」
「ガァァァァァッ!!」
「冷静になることの重要さは、さっき実感したばかりでしょう?」
「ガァッ! ガァァァァァッ!!」
『なんと、これは凄い! ファティマ選手、獣化したゼネットナット選手を諭しながら戦闘を展開しています!!』
『獣化の影響により、ゼネットナットさんの動きがやや単調なものになってしまっているのだろうとは思われますが……かといって、あの速さに対して言葉をかける余裕があるとは……』
まあ、ファティマさんだからねぇ……
「自分を見失ってはダメ、己の獣性に打ち克つのよ!」
「ガァァッ! ガァァァァァァァッ!!」
「そんな本能剥き出しの動きでは、簡単に読めてしまうわ! 気付きなさい!!」
「ガガァッ! グガァァァァァァァァァッ!!」
ふむ、動きが読めているというのは、まさしくそのとおりなのだろう……対応自体はできている。
しかしながら、ゼネットナットが繰り出すパワー全開の一撃一撃がファティマの展開している障壁魔法や魔纏を破壊したり削ったりしているのも確かだ……
そのため、今のところクリーンヒットとまではいっていないが、ファティマの手足に小さいながらもダメージが蓄積されていっているのだ。
ちなみに、鉄扇は既に壊れてしまっている……まあね、素材がミスリルとかオリハルコンみたいな特殊金属じゃないからね……しょうがないよね……
「口でいって分からないのなら……仕方ないわねッ!」
「……グガッ!? ガッアァァァァ……ッ……!!」
『おっと! ここでファティマ選手の反撃だァッ!!』
『ゼネットナットさん自身の勢いを利用して腹部に突きを叩き込む……これは効いたに違いありません』
「……ガァァッ!!」
「させない!!」
『しかし! ゼネットナット選手も、それだけでは怯まないッ!!』
『素晴らしい反応です! つかまえようと伸びてきたゼネットナットさんの手を、よく躱しましたね!!』
「さあ、もうそろそろ目覚めなさい! さもなければ……このまま倒させてもらうわよッ!!」
「……ガァァァ……ァッ……!?」
さらに一発、ファティマの拳がゼネットナットの頬を捉えたのだった。
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