第701話 それもここまでだぜ!?

「ハッ! いつまでも、オメェのターンが続くなんて思ってんじゃねぇぞ!!」

「えぇと、それは……『そろそろ、自分にも攻撃する順番を回してください』という意味かしら?」

「違ぇ! んなこといってねぇ! ざけんな!!」

「あら、違ったの? てっきり、素直になれない少女の強がりかと思っていたわ」


 ファティマさん……煽るねぇ。


「ハン! 安い挑発でアタシのリズムを崩そうったって、そうはいかねぇかんな!!」

「いいえ、特にそんな意図はないわ……ただ、思ったことを口にしているだけ」

「ふざけたことばっか抜かしやがって……でもなぁ! それもここまでだぜ!?」

「へぇ……それは楽しみだわ」

「ハハッ! その余裕……どこまで持つかなァ!!」


 ふむ……ほうほう、ゼネットナットの強気な発言も、どうやら単なる強がりではなさそうだ。


『……おぉっと? 次々と迫り来る風魔法を巧みに躱し、ゼネットナット選手が徐々にファティマ選手との距離を縮めているようだぞ!?』

『おそらく……ファティマさんの攻撃リズムを読み、タイミングを見つけて少しずつ距離を詰めているのでしょうね』

『えぇっ! 攻撃リズムを読んでいるぅ!? いえいえ、ファティマ選手の攻撃はそんな単調なものではないでしょう!?』

『はい、そんな単調ではない攻撃のリズムを読んでいる……それがゼネットナットさんの凄さということができるでしょう』

『なるほど……でも、確かにそうですね……あの攻撃の中を被弾することなく接近できていることを説明するには、それしかなさそうです』


 フッ……俺レベルの魔纏になると回避行動を必要とせず、そのまま突撃することも可能だけどね? ドヤァ!!


「おい、アレス! 顔芸をして遊んでいる暇があるのなら、ファティマさんの応援をせんか!!」

「アッ……ハイ! ごっつぁんです!!」

「まったく……」


 ロイターさんからお𠮟りを受けてしまった……

 というか、俺の名誉のためいっておくけど、顔芸なんかしてないからね?

 あくまでも、心の中でドヤ顔していただけだからね!?


「アレスさん……クール道を極めるには、まだまだ道のりは遠いようですね?」

「う、うむ……」

「ほら、2人とも……またロイターに怒られちゃうよ?」

「おっと、そうでしたね」

「サンキュー、セテルタ!」

「なぁに、いいってことさ!」

「おい、何がいいんだ……セテルタ?」

「……アッ!?」


 ……とまあ、ちょいちょいロイターに指導を受けつつ、ファティマの応援をしている俺たちであった。


『この一発を越えて……ついに! ついにゼネットナット選手、手の届く距離まで接近を果たしましたァッ!!』

『ここからは、ゼネットナットさんにとって念願の接近戦といったところでしょうか……とはいえ、ファティマさんも物理戦闘を苦にしているわけではないですし……はてさて……』

「あぁっ! ファティマちゃん!! 大丈夫かなぁっ!?」

「あの獣人女……ファティマちゃんを傷付けやがったら承知しねぇぞ!!」

「たぶんだけど……俺たち程度がどれだけ吠えたところで、ファティマさんの風魔法を躱して接近に成功できるレベルのゼネットナットさんにとっては痛くもかゆくもないだろうなぁ……」

「うっ、それは……まあ……うん……」

「とりあえず、ゼネットナット嬢がかなりの強者だということは認めるしかないようだ……」

「うぅ……ファティマちゃん! どうか、無事に勝ってくれぇっ!!」

「きっと……きっとファティマちゃんなら、大丈夫さ……」

「当然だ! ファティマ様は最高だ、負けるはずがないッ!!」

「そうだよ! 僕たちが弱気になってちゃダメだ!!」

「ああ、そうだったな! 究極美少女ファティマちゃんは、戦闘も究極だもんな!!」

「よっしゃ! 改めて、全力全開で応援すっぞ!!」

「「「応ッ!!」」」

「ファ~ティ~マ! ファティマ!!」

「「「ファ~ティ~マ! ファティマ!!」」」


 ファティマヲタたちの士気が崩れそうだったが、なんとか立て直せたようだ……


「いいわよ、ゼネットナットさん! その調子で、ミーティアム家の小娘をボッコボコのギッタギタにするのよ!!」

「そうよ、そうよ! 生意気なファティマを叩きのめしてやって!!」

「私たちの期待を裏切らないでよね!!」

「でもさ、意外とファティマさん……焦った様子がないように見えるけど?」

「ふん! そんなの、いつものことでしょ!? 何があったって、あいつはああやって偉そうな態度なの!!」

「だからこそ……負けたとき、どんな顔をするのかが楽しみになってくるってものよねぇ?」

「うふふ……あの子ったら、どんな泣き顔を見せてくれるのかしら………………あぁっ! 早く魅せてちょうだいっ!!」

「えぇ……そこまでなの……?」

「とにかくっ! やっちゃぇ、ゼネットナットォッ!!」

「あなたの爪がただの飾りでないところ! じっくりと見せてちょうだい!!」


 ふむ……ファティマアンチの令嬢たちも、にわかに活気づいているようだね。


『さぁて、ゼネットナット選手! これまでの鬱憤を晴らすかのごとく、勢いよく攻め立てます!!』

『一発一発に力が乗っていて、とてもいい打撃ですね……しかしながら、ファティマさんも受けに払いと、今のところしっかりと対応できています』

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