第698話 自身の戦闘スタイルを貫けるか……
「……ッ!! あっぶねぇなぁ……!!」
「よく躱すことができたわね? 褒めてあげるわ」
「その減らず口……すぐに叩けなくしてやるよッ!!」
『3回戦第2試合! ファティマ・ミーティアム対ゼネットナット・ウォルフの試合が始まりました!! そして、早速といわんばかりに急接近するゼネットナット選手に対し、ファティマ選手はウインドカッターで迎撃! それを持ち前の見事な反射神経でゼネットナット選手が回避したといった格好だァ!! いやぁ、スタンさん……序盤から、手に汗握る展開ですね!?』
『はい、少しでも反応が遅れていれば、ゼネットナットさんの初手で終わっていたところですが……臆せず、反対にポーション瓶を狙ってウインドカッターを放つとは、さすがファティマさんです。また、その反撃に上手く対応できたゼネットナットさんも同じく、さすがだったと思います』
ふむ……ゼネットナットの初手の動きは、瞬殺でおなじみのシュウの一撃並の速さがあったと思う。
しかも、身体強化の魔法なしでとはね……素晴らしい脚力といえるだろう。
また、あの回避能力も併せて、やはり獣人の身体能力の高さはたいしたものだよ。
『さて、そんな白熱した試合を早々に展開している両選手ですが……スタンさんは、この試合をどう見ますか?』
『そうですね……物理戦闘に特化したゼネットナットさんが、どのようにして近接戦闘に持ち込むかといったところが最初のポイントになってくると思いますが……とはいえ、ファティマさんは魔法戦闘だけではなく物理戦闘も得意としていますからね……接近を遂げたあとの攻防にも注目したいところです』
『ファティマ選手の鉄扇術は、強いだけではなく優美さも兼ね備えておりますものねぇ……この試合でもそれが観られるか、私も個人的に楽しみとしているところです』
『確かに、ファティマさんの鉄扇術はまるで美しい舞のようでもありますからね……果たしてゼネットナットさんは、その動きに翻弄されず自身の戦闘スタイルを貫けるか……そこが最終的なポイントとなってくるでしょう』
ファティマの鉄扇術の優雅さには、俺も思わず手を止めて見入ったことが何度もあるぐらいだからね……気持ちはわかるよ。
それでまあ、演武を見せてもらっているときはそれでいいんだろうけど、模擬戦中は「うぉっ! あぶねっ!!」ってなるんだよねぇ……
さて、ゼネットナットは「そんなもん、知ったことか!」って感じで、荒々しくファティマを攻め立てることができるか……お手並み拝見といったところかねぇ?
「ファティマちゃ~ん! 頑張れぇ~っ!!」
「超絶カワイイ! ファティマちゃん!!」
「究極ラブリー! ファティマちゃん!!」
「俺の想い~受け取ってよ! ファティマちゃん!!」
「ノンノン! ファティマちゃんは俺のモノ~!!」
「独り占めはダメダメ~! 俺たちみんなのファティマちゃ~ん!!」
「ファ~ティ~マ! ファティマ!!」
「「「ファ~ティ~マ! ファティマ!!」」」
前世の友人だった、アイドル好きの鈴木君みたいな奴がいっぱい……
見た目にきゅるんとしているせいか、特にファティマのファンはこういうタイプの奴が多いんだよなぁ……
そして俺の隣にも……
「よし、いいぞ! ファティマさん!!」
ロイターが熱心にファティマの応援をしている……
まあ、応援の言葉自体はそうでもないが、その熱量はファティマ推しのヲタクたちに引けを取らないレベルだ……
こんな姿を見て、ロイターのファンクラブ会員たちは幻滅しないのかねぇ……?
「あはは……このお姿も、ロイター様のまぎれもない真実の一面ですからね……」
なんていいながら、サンズが苦笑いを浮かべている。
「真実の一面ねぇ……」
「おい、お前たち! 何をゴチャゴチャといっているのだ!? そんな暇があるのなら、ファティマさんの応援をせんか!!」
「おっと、これは失礼しました……ファティマさん、頑張ってください!」
「ファティマ~ファイト~!」
「なんだその応援は、2人とも気合が足りんぞ!? ほら! もっと腹から声を出すのだ!!」
「はい、それでは……ファティマさんッ! 頑張ってくださいッ!!」
「ファティマァッ! ファイットォッ!!」
「うむうむ……やればできるではないか! その調子で、力いっぱい応援してゆくぞ!!」
「「……はい」」
「いったそばから! 声が小さいッ!!」
「「ハイッ! ごっつぁんです!!」」
やっぱり、ファティマが女子たちからの嫉妬を買ってるのって、ロイターのこういうところに原因がある気がするよ……
マジでロイターってば、ファティマのこととなるとキャラが明らかに変わるんだもんなぁ……
「ほら、セテルタ! お前も声が小さいぞ!!」
「ハイッ! ごっつぁんです!!」
「ふむ……トーリグにハソッド、それからソイルは一応及第点といったところか! だが、ヴィーンよ……もうちょっと声を出せるだろう!?」
「「「ハイッ! ごっつぁんです!!」」」
「……ここは私も、『ごっつあんです』といわねばならないところか?」
こういうヴィーンのちょっと天然な生真面目さ……なんかいいよね?
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