第697話 強めに陰口を叩かれがち
まずは、いつもどおりの武器選択である。
そして、使用感などを確認しながら2人は最終的な決定を下すわけだ。
それで2人が選んだ物としてはファティマが鉄扇で、ゼネットナットが手甲と足甲である。
この選択からすると、物理戦闘はかなり接近した形で展開されるのではないかと思われる。
まあ、ファティマは魔法も多用するから、物理戦闘一辺倒にはならないだろうけどさ。
とはいえ、ゼネットナットはバリバリ物理戦闘の専門家だからね……そっちのペースに引きずられると、否応なく接近戦をせざるを得なくなってしまうかもしれない。
さて、ファティマはどう闘うか……実に興味深い。
『さぁて、装備チェックも終わり、両選手が舞台中央にそろいます……そして、王女殿下から胸ポケットに最上級ポーションが挿入されます』
「王女殿下とファティマちゃん……最高だ……」
「気品溢れるお姿を拝見できて……僕は幸せ者です……」
「あれぞまさしく! 美の極致なり!!」
「誰か、絵師を呼べ! あの光景を永遠に残すのだ!!」
「それは大げさ過ぎるだろ……なんて、普段の俺ならいうところだが……それぐらい、素晴らしい光景なのは認めるところだ」
「いつもファティマちゃんは堂々としているけどさ、準決勝まで上がって来たってこともあってか、それがより際立って見えるよね!?」
「まあ……それはたぶん、俺たち見る側の気分も大いに影響しているんだろうとは思うけどなぁ」
男子たちは大盛り上がりだね。
「ふん……男共は、あんなちんちくりん女のどこがいいのかしらね?」
「ほ~んと、何が『堂々としている』よ? あんなん、ただ尊大なだけでしょ!」
「そうよ、そうよ! ロイター様に気に入られているからって、調子に乗り過ぎよね!!」
「ロイター様も、あんな性格の悪い女を相手にするのはやめておけばいいのに……」
「アレス様やサンズ様、それに最近はヴィーン様たちまで独占して……腹立たしいったらないわ……」
「ま、まあ……パルフェナさんも一緒だから、独占ってわけでもないと思うけどね……」
「あと、エトアラ様たちもいらっしゃるから、そういう感じも薄まってはきてるんじゃない?」
「パルフェナなら、こっちだっていくらか我慢できるわよ! それにエトアラ先輩たちは、それぞれセテルタ君たちっていう相手が決まってるでしょ!!」
「そ、それもそうね……」
「とりあえず、ゼネットナットさんも腕に覚えがあるようですし……ミーティアム家の小娘をボッコボコのギッタギタにするところを期待させていただきましょうか」
「「「賛成っ!!」」」
ファティマは女子たちから強めに陰口を叩かれがちだけど……パルフェナは割とそうでもないみたいなんだよなぁ……
まあ、ファティマは気が強いし……それに比べて、パルフェナは周囲に気を遣えるタイプだもんねぇ……
あと、「ミーティアム家の小娘」という言い方から、ファティマ自身というよりミーティアム家全体に対する反感を持った者もいるのかもしれない。
とまあ、なんだかんだいうものの、結局のところロイターがファティマにご執心っていうのが、一番女子たちの嫉妬を買っちゃうんだろうとは思う。
「ふぅ~む、こうして改めて見てみると……獣人族も悪くないよな?」
「悪くないどころか……すっごくいいと思う!!」
「なんか、あのワイルドな感じが……たまんないよね?」
「あの耳とか尻尾……触ってみたいなぁ……」
「ちょっ! お前っ!! キレられんぞ!?」
「分かってるよ……だから『触ってみたい』って思うだけさ……」
「でもよ……上手いこと口説き落として、付き合うことができれば……触らしてくれるんじゃね?」
「獣人族と交際か……果たしてコイツの親父さんが許してくれるかねぇ?」
「う~ん、難しいかもなぁ……その場合、とりあえず後継者争いから脱落するのは目に見えてるし……」
「一応、獣人族なら人間族と寿命は変わらんから、エルフ族やドワーフ族みたいな長命な種族ほど難易度は高くないと思うんだけどねぇ……ああ、魔族は寿命以外にもいろいろ問題があるから、ここでは触れないでおくけど……」
「まっ! 結局はお前の覚悟次第ってことだなっ!!」
「覚悟次第……か」
次期当主の座か獣人族をパートナーにするか……究極の選択を迫られてます、みたいな奴がおった……
まあ、家ごとに考え方とかも違っていて、全ての貴族家が「異種族なんか、絶対にダメ!!」ってわけでもないみたいだけどねぇ……
とはいえ、獣人族は物理戦闘能力の高さに重きを置いているみたいだから、ゼネットナットを口説き落としたいなら、鍛錬を積んで強くならんとな! 少なくとも、武闘大会で本戦に残れるレベルは欲しいもんな!!
というわけで、覚悟が決まって……その際、ご希望とあらばアレス式鍛錬法を指導してやるから、いつでも声をかけてくれよな!!
そんなことを考えているうちに舞台はもう、準備が整ったようだ。
「……それでは、両者構えてッ!」
そういって審判のお姉さんが右手を天に掲げ、振り下ろすと同時に……
「始めッ!!」
さて、どのような試合が展開されるか……楽しみにさせていただきましょうかね。
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