悪役転生者は自由人～原作ゲームのシナリオを無視して行動したいと思います～

第695話 誰も抗うことはできないでしょう……

「……私は……ここで負けるわけには……いかない…………決勝で……ファティマちゃんと…………勝負するん…………だか……ら………………」

『あぁっと！　パルフェナ選手、懸命に抗っていましたが……堪えきれずに意識を手放してしまったようだァッ!!』

『うぅぅむ……あれほどまでに絶大な威力を持った誘眠魔法をかけられては……よほどの魔法防御力がないと、誰も抗うことはできないでしょう……』

『な、なるほど……そう考えるとパルフェナ選手は、よくここまで我慢したといえそうですね？』

『ええ……さらにいえば、ここまで体力も魔力もかなり消耗した中でのことでしたからね……より耐えるのが大変だったことは想像に難くありません』

　どうやらパルフェナは、完全に眠らされてしまったようだ……

　そして、審判のお姉さんがパルフェナの様子を確認し……

「この状態だと、試合続行は無理そうだね……それじゃあ、仕方ない…………勝者っ！　ノアキア・イアストア!!」

「……ふぅ…………まさか、この私が一切手加減する余裕もなく全力を出させられるとは……信じられないこともあるものだわ………………パルフェナ・グレアリミス……その名前、心に刻んでおいてあげる……」

　そう呟きつつノアキアは、パルフェナにかけた誘眠魔法を解除し、颯爽と舞台を降りて行くのだった……

「……はっ!?　私は……？」

　ほどなくして、パルフェナは目を覚ました。

「……あぁ……そっかぁ……私、負けちゃったんだね……」

　周囲の雰囲気から、パルフェナは自身の敗北を悟ったようだ……

　そして、審判のお姉さんから改めて身体状態のチェックを受け……問題ないと判断されたようだ。

　まあ、試合自体はそれなりに激しい攻防を繰り広げていたけど、目に見えて深手を負っていたわけではないからね。

「あ、あのパルフェナちゃんが……負けただなんて……」

「悪夢だ……」

「うぅ……本日はもう……パルフェナ殿の闘うお姿をこの眼に焼き付けることができないのか……無念なり……」

「パルフェナ様は……僕らの女神に等しい存在だったのに……」

「嗚呼……我らが豊穣の女神……」

「クソッ！　そんな豊穣の女神が、なんだってあんな痩せ果てた大地みたいな娘なんぞに敗北せねばならなかったのだッ!!」

「おいおい、痩せ果てた大地って……それはさすがに、ノアキアさんに失礼じゃないか？」

「まあ……もともとエルフ族って、スレンダーな体型の子が多いみたいだからねぇ……仕方ない部分もあるんじゃない？」

「……あっ!!　ねぇ、もしかしてだよ……この夏の不作ってさ……この事態を予め告げていたって考えることはできないかな!?」

「それだッ!!」

「いやいや、『それだッ!!』じゃねぇよ……この夏は、特に村人とかマジで困ってたんだから、冗談でもそういうことをいうのは控えたほうがいいぞ？」

「……ごめんなさい」

「わりぃ……ついつい、ノリで……」

「おう！　分かればいいってことよ!!」

　確かに、この夏はソリブク村とか……不作に悩まされた村が結構あったみたいだからね……

　とはいえ、ちゃんと対策できたり、ソレバ村のみんなが支援に行ったりとかして、助かったところも多いみたいだけどさ。

「それにしても……何を今さらって感じだけど、やっぱりエルフ族の魔法はスゲェよなぁ？」

「うん、なんていうかレベルが違うんだなって……そう思わずにはいられないよね……」

「しかもなんてったって、あの美しさ！　人間族じゃあ、どうやったってかないっこないよな!?」

「まあ、魔法の才にしろ、美貌にしろ……エルフ族が秀でていることに否定の余地はないといえるだろう」

「ハァ……ノアキアちゃんみたいな子と一生を添い遂げられたらなぁ!!」

「やめておけ……悲しみを生むだけだ」

「確かになぁ……人間族とエルフ族じゃ生きる時間が違うもんな……」

「そうか……ノアキアちゃんを残して先に逝くことになるのか……そんな辛い思い、させられない!!」

「心配しなくても……ノアキアさんがお前を選ぶ可能性は限りなくゼロに近いと思うけどな？」

「……なッ!?　そ、そんなこと……まだ食事に誘ってすらいないんだし！　分かんないじゃないか!!」

「まっ！　どうせ誘う勇気もないだろうし……そういう可能性だけを心に思い描きながら、このまま一生を過ごせばいいんじゃねぇの？　もともとエルフ族との婚姻は難しいんだし、それぐらいがちょうどいいだろうさ」

「ぐっ、ぬぬぬ……」

　原作ゲームのシナリオによると……どういう原理かは知らんけど、一応エルフの秘術で種族転生するって方法がないわけじゃないみたいだから、本気で添い遂げる意志と覚悟があるなら「可能性はあるよ？」って感じだ。

　とはいえ、それはラクルスならではの奇跡かもしれないけどね……種族転生とか、どう考えても尋常の業じゃないだろうし……

　ああ……もしかしたら、転生神のお姉さん案件の御業かもしれないよね？

　そんなことを思っているうちに、ノアキアが戻って来た。

「……何かしら？　……ああ、そういえばパルフェナは、あなたと決勝で勝負したいといっていたわね……もしかして、その邪魔をしたと文句でもいうつもり？」

「いいえ、そんなつまらないことをいうつもりはないわ……そうね、告げる言葉があるとすれば……『決勝を楽しみにしていなさい、私が倒してあげるから』……といったところかしらね？」

「あら、さすがはパルフェナのお友達ね……実にユニークな言葉を聞かせてもらったわ……」

「おい！　ファティマとかいったな……お前の相手は、このアタシだ！　間違うんじゃねぇ!!」

　ファティマとノアキアがバチバチッと火花を散らせていたところ、獣人族ヒロインのゼネットナットが加わって来た。