第694話 ファティマとタメを張るレベル

「むぅ……思ったより、時間が経っていたようだな……」

「お帰りなさい、ロイター様」

「おぉっ! ロイターさん!!」

「お待ちしてましたよぉ!!」

「ロイターさん、体のほうは大丈夫ですか?」

「……ロイターのことだから、問題ないとは思うが……」

「今まで、医務室の先生に引き止められてたって感じかな?」

「とっくにパルフェナの試合は始まっているけれど……とりあえず、終わる前に間に合ってよかったわね? あの子、ああ見えて寂しがりなところもあるから、見ていなかったと聞いたらガッカリしてしまうわ……」

「……それで、シュウの具合はどうだった?」

「うむ、私の体についてはポーションと回復魔法で既に全快している……まあ、セテルタのいったように、医務室の先生に確認のためと引き止められたのも確かだが……そしてシュウについては、そうだな……もちろん体のダメージ自体はポーションを使っているし、先生たちも念入りに回復魔法をかけてくれていたから万全の状態に戻っているだろう……しかしながら、私が医務室を出るとき眠ったままだったからな……おそらくまだ、目を覚ましていないだろう……」

「そうか、まだ眠ったままか……だが、奴のことだ! 絶対に起き上がって来るはず!!」

「フッ、当然だ! シュウは、私から決勝の舞台に上がる権利を勝ち取った男なのだからな!!」

「そのときはきっと、ロイターと試合をしたときより一回りも二回りも強大な存在となって起き上がって来るはず……ふふっ、楽しみね?」


 さっきの試合より一回りも二回りもか……ハハッ! 最高だね!!


「くぅ~っ! そいつは置いて行かれたくねぇなッ!!」

「こうなったら……あの夏以上の鍛錬を積むしかありませんねぇ!!」

「僕たちにだって、まだまだ伸びしろがあるはず……やってやる!!」

「……私も、今日の経験から次の領域へ到達する手応えを感じている」

「……ふむ……これで、私にとって超えねばならん男が2人となったわけだ……もちろん、悔しさがないわけではないが……だが! フフッ……ワクワクした気持ちも湧いてきている!!」

「シュウさんに対しては、僕たち主従そろって借りができてしまいましたからね……いつまでもお待たせするのも悪いですし、もっともっと実力を付けて、早々にお返しして差し上げましょう!!」

「う~ん、改めて考えてみると……シュウはここまでソイル、サンズ、ロイターと全力でぶつかり合うっていう物凄い経験を積んだわけか……そして今、眠っているあいだに得た経験を心身に深く浸透させている……さらにいえば、グッスリ寝たことで起きたときには気分爽快、誰よりもリフレッシュした状態で舞台に戻って来るわけだ! アレス、これは心してかからないとだね!!」

「うむ……今寝てくれているおかげで、むしろ最高のコンディションで舞台に上がってくれるってわけか! 素晴らしいね!!」

「さて、男子たちの盛り上がりもそれぐらいにして、パルフェナの応援をしてあげなくてはね? あとで拗ねられては大変だもの……」

「おっと! そうだったな!!」

「これはいけませんでしたねぇ!」

「パルフェナさん! 頑張ってください!!」

「……保有魔力量で負けているとしても、武技では勝っている」

「うん、ヴィーンのいうとおりだよ! ガンガン押して行こう!!」

「パルフェナさんの強さは、僕らがよく知っています! その力をノアキアさんにも見せて差し上げましょう!!」

「うむ! 遠慮はいらないぞ!!」

「そのとおりだ! 出し惜しみはナシだぞ!!」

「パルフェナ……決勝の舞台で勝負するつもりなのだから、一足先に上がっていてもらわないと困るわよ?」


 こうして俺たちは戻って来たロイターを交えて、試合中のパルフェナに声援を送る。

 しかし、対戦相手であるエルフ族ヒロインのノアキアだが……正直いって、原作ゲームのヒロイン勢の中でも強いほうだと思う。

 というか、エルフ族だけあって保有魔力量がダントツだし、これまでも真面目に魔法の練習をしてきているようで、魔法戦闘力はまさにトップクラスといえるだろう。

 そして、原作ゲームのプレイ時を思い返してみると……仲間に初期加入時からいろいろな魔法を覚えており、その中には全体攻撃魔法もあって、豊富な魔力量と相まってメチャクチャ使いやすかったことを記憶している。

 とはいうものの……前世から俺って、なんとなく異種族萌えって感覚はあんまりなかったからねぇ……エルフ族ヒロインについても、確かにルックス自体はキレイな子だとは思うけど、それだけって感じなんだ。

 それにさ、一応設定上はエルフ族だけあって年齢は20歳を超えているらしいけど……エルフ族の中では、まだまだ子供って扱いらしいからね……そういうこともあって、俺の中の形式用件は満たしているといえども、やっぱり実質用件としてお姉さん感が足りないなって思っちゃうんだよね……

 あとはほら、全身的な見た目がさ……ファティマとタメを張るレベルのね……


「……ねぇ、アレス……これからシュウの隣のベッドで眠りたい? 決勝戦が始まる前にきちんと目覚めることができるかは、あなた次第となってしまうけれど……」

「アッ! イエ……スイマセッシタ!!」

「お前という奴は、まったく……」

「とりあえず……ノアキアさんのほうは、試合に集中しててくれてよかったですね?」

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