第692話 やはり伝わっていくものなのだな……
『驚異的な回復力で耐えに耐え忍ぶロイター選手! 対するシュウ選手も肉体の限界を超えて闘い続け、攻撃を加えながら自身もダメージを負うという状況……まさに壮絶! 壮絶過ぎる攻防が繰り広げられております!!』
『若干……シュウさんの攻撃速度が下がってきたように感じますね……また、ロイターさんの回復速度も同じように遅くなってきているようです……』
『なるほど、両選手とも体力も魔力も……そして気力すらも使い果たす寸前というわけですね?』
『使い果たす寸前どころか……私たちに理解可能な力の全てを既に使いきっており、あとはもう、2人にしか分からない何かに突き動かされて闘っているだけといった状態だと思われます……』
『な、なんという……いったい、ロイター選手とシュウ選手をそこまで駆り立てるものはなんだというのか……』
『戦士としての本能、男の意地……いろいろな言葉で表現することはできると思いますが……つまりは、あの姿こそが彼らにとって混じり気のないピュアな姿なのでしょう……』
『ピュアな姿……ですか……なんとも恐ろしいまでの純粋さですね……』
『ええ、まさしく……』
素晴らしい……
ロイター、シュウ……お前たちはこの上ない、最高の男たちだよ……
「お、おい……あの2人……もう止めたほうがいいんじゃないか? 絶対、ヤバ過ぎるって……」
「止めるったって……どうやって? あの満身創痍な状態ですら、俺たちが束になってかかっても弾き返されてしまいそうだぞ?」
「それどころか……あの気迫の前には、近寄ることすら不可能だよ……」
「確かに、体そのものは大変かもしれないけど……でもさ、あの2人の顔を見てみなよ……とってもいい顔をしてるでしょ? あそこで止めるのは悪いよ……」
「……そうさな……あんな顔をされてしまうと、止めるに止められん……」
「オレは男だけど……そういうことに関係なく、アイツらに惚れちまったよ……」
「ああ、その気持ち……分かるぞ……」
「願わくば……僕も彼らのような男になりたい……」
「……なら、なってやろうぜ! だって、目の前に最高の手本があるんだからな!!」
「あの2人のように……俺もなるッ!!」
「なあ! そんなグレイトな男たちに……俺たちから想いのパワーを送ってやろうぜ!!」
「おぉっ! いいねぇ!!」
「ふむ……舞台とこちらを仕切る防壁魔法に阻まれているから、実質的なパワーを送ることは不可能だとしても……きっと伝わるものがあるはず! ならば、やるしかない!!」
「よし、みんな心は一つになったな!? それじゃあ、いくぞ! ロ・イ・ター!! シュ・ウ!!」
「「「ロ・イ・ター!! シュ・ウ!!」」」
「ロ・イ・ター!! シュ・ウ!!」
「「「ロ・イ・ター!! シュ・ウ!!」」」
本物の熱さってやつは、やはり伝わっていくものなのだな……
たとえそれが、今までその人の中に眠っていた熱さだったとしても、呼び覚ましてしまうぐらいに……
ロイター、シュウ……みんなから送られてくる想いを受けて、もっと熱くなれ! もっともっと熱くなるんだ!!
「男子たちなんかに! 私たちが想いの力で負けるわけにはいかないわ!!」
「そうよ! ウチらがロイター様を慕い続けた……その年季の違いというものを見せつけてやらないと!!」
「ふふっ……わたくしのロイター様への想いは、誰よりも重いということを……とくと知らしめてあげると致しましょう……」
「ちょっと! あんたの重い想念でロイター様の体の動きが鈍ったらどうしてくれんのよ!?」
「ま、まあ……もしかしたら、その重いエネルギーがロイター様とシュウ君のあいだに挟まって、ロイター様の身を守ってくれるかもしれないし?」
「ていうかさ……マズいエネルギーだったとしても、どうせ学園長の防壁魔法に弾かれるだろうから、大丈夫っしょ?」
「それもそうね!」
「ロイター様~っ! 頑張ってくださいませぇ~っ!!」
ロイターのファンクラブ会員たちも負けじと応援に熱を込めている。
「シュウ! あとちょっとだ、負けんなよ!!」
「ここまできて、勝利を譲るわけにはいきませんわ!!」
「なんてったって、押してるのシュウだ! 絶対に勝てるって!!」
「そう! ホントそう!!」
「お願い……シュウの体、あと少しもってちょうだい……」
「大丈夫……シュウは強い」
「そうさ! だから、ウチらも心配じゃなく、応援してればいいんだ!!」
「行っけぇ! シュウ~ッ!!」
シュウを取り巻く武闘派令嬢たちも、同じく応援に熱が入っている。
「……ハァ……フゥ……フフッ……もう、いつ意識を手放してもおかしくない……はずなのに……不思議とパワーが沸き起こってきます……」
「フ……フッ……同感だ……このまま、いつまでだって……闘えそうだ……」
「僕自身……ここまで熱くなることができている自分に……驚いています……」
「そうか……私は……これが2回目だ……まあ、1回目のときは……最後が少々不満の残るものだったがな……」
「フッ……フフッ……そのときの闘いは……僕も特等席で観せていただきましたよ……」
「そういえば……そうだったか……」
「この試合に勝って……僕も、2回目を経験したいところ……ですね!」
「……フン……私も、1回目の不満を解消せねばならんからな……譲るわけには……いかん!」
「フフッ……フフフフフ! ここにきて、さらにパワーを引き出してくるとは……ロイター君には驚かされてばかりですよ!!」
「そういう……お前もな!!」
「ただ……このまま、もっともっと楽しい時間を過ごしたいところですが……さすがに、そろそろ本当に気を失ってしまいそうなので……そうなる前に、決めさせてもらおうと……思います!!」
「ほう? いいだろう……受けて立つ!!」
「……では!!」
「来い!!」
この日、一番の輝きが目の前にあった。
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