第691話 さほどの問題ではないでしょう!!
「……ウッ……グゥッ……まだ、まだだァ!!」
「ハァ……ハァ……まだ耐えますか……ハァ……やりますねッ!!」
『な、なんという耐久力! 数えきれないほどの打撃をその身に受け満身創痍となりながら、なおも倒れないロイター選手!! この男を倒すためには、一体どれだけの攻撃が必要なんだァ!?』
『微かに見えるロイターさんの体の様子からすると、確かに満身創痍には見えます……ですが、胸に挿してあるポーションと致命的なダメージとなるような部位だけは、なんとか守ることができているようですね』
『そ、それはつまり……あのシュウ選手の超高速攻撃が、ロイター選手には視えているということでしょうか?』
『うぅ~ん、そうですねぇ……おそらくはもう、ほとんど視えていないと思います』
『視えていない!? だとすると、ロイター選手はどうやってここまで耐えきっているのですか!?』
『身体強化や魔纏等の魔法で基本的な防御力を高めつつ、あとは勝敗に関わる部位だけをガードして身を固めることに専念する……そして、防御力を超えて破壊されてしまった部位は回復魔法でその都度治すといったところでしょうか……』
『あの超高速攻撃の中、瞬時に破壊された部位を治してしまえるところが、ロイター選手の恐ろしいところだと改めて思い知らされますね……』
『ええ……凄まじいまでの回復能力だと、強く強く思うばかりです……また、そうして我慢を続けているうちに、そろそろシュウさんの体力にも限界がくる頃ではないかと思います』
『おぉっ! それはロイター選手も我慢する価値があるというものですね!?』
まあ、俺もこの前の決闘で、これでもかってぐらいロイターの骨をポキポキやったったからね……あれのおかげで、ロイターの回復能力はとんでもない上昇を遂げたのではないだろうかと思うわけだ。
しかも、あのときより基本的な防御能力も総合的に磨いているようだし……
そのように考えていくと……まさに、ロイターこそ不沈艦と呼ぶにふさわしい存在といえるだろう!!
「いつも女子たちにキャーキャーいわれていて、それが羨ましくて腹立つぐらいモテまくりのカッコいい男が……ああまで打ちのめされて、カッコ悪い姿を晒している……それなのにどうしてだか、そんなロイターがとてもカッコよく見える……」
「ああ、普段は何事もスマートに決める男が、あんなにも泥臭い闘い方ができる……それこそが、ロイターの一番の凄さだよな……」
「見方によっては、あんな無様な闘い方……並の男には無理だ……」
「だな……俺なら、ほどほどのところで終わりにしたくなっちまう……」
「ロイターさん……アンタって人は、どこまでカッコいいんだよ……」
「うむ……ロイター殿こそ! まっこと、王国一の根性者なり!!」
「……ヘッ! どいつもこいつもロイターロイターって、キモチワリィ! この前の決闘といい、今回といい……あんな奴、ただのサンドバッグ野郎ってだけじゃねぇか!!」
「……なッ!? お前には……あの魂を震わせる煌めきが感じ取れないというのか……?」
「そんな……ウソでしょ……?」
「なんとまあ、不憫な男よのう……」
「えぇい、黙れ黙れ! 鬱陶しい! なんといわれようと、キモチワリィもんはキモチワリィんだよ!!」
「……まあ、分からないのなら仕方ないか……でも、君にもいつか分かるときがくるといいね?」
「その訳知り顔をやめろ! キモチワリィ!!」
「それはそうと……ロイターも凄いが、あんな激しい超ハイスピードな攻撃を繰り出し続けているシュウも、ただ者じゃないよな?」
「何やってんのかほとんど分かんねぇけど……とにかく、とんでもない動きだってことだけは分かる」
「……あれ? なんか、体の軋みを訴える独特な鈍い音が増えた気がしないか?」
「どれどれ……ッ!?」
「もしかしてこの音……シュウの体が上げている悲鳴か?」
「エッ!? 僕はてっきり……ロイターさんの被弾箇所がさらに増えているのかと思ってたよ……」
どうやら気付いた奴が出てきたようだな……
ロイターの防御力を突破するため、シュウは己の肉体の許容限界を超えてパワーを注ぎ込み続けていた。
そうして負荷に耐えきれなくなった肉体のダメージが、ついに顕在化され始めたというわけだ。
さて、シュウはこのままダメージを無視して超高速攻撃を続行するか……それとも、ある程度パワーを抑えることを選択するのか……
「ハァ……ハハッ……ハハハ! ここまで……ここまで攻めて倒せないとは! ……ハァ……さすが、ロイター君です!!」
「なんの! シュウこそ……とっくに肉体の限界を超えている……だろうに……よくやる!!」
「フフッ……肉体の限界など! 僕らの目指す高みを思えば……ハァ……さほどの問題ではないでしょう!!」
「フッ……そう、だな! この調子なら……さらに、さらにと限界を超えて行けそうだ!!」
「ええ! そのとおり……ですッ!!」
シュウの奴……やはりというべきか、そのまま超高速攻撃の続行を選択したようだな……
しかしながら、あいつら……もう魔力も尽きかけだし、いつぶっ倒れてもおかしくないレベルでボロボロだっていうのに……なんて、楽しそうだなんだ。
あんな試合ができて、とっても羨ましくなってくるじゃないか……
どうせだから、2人とも勝者ってことで決勝に上がってこないかな……って、そんなルールはないから無理だってことは分かってるけどさ……
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