第685話 下手したら、気を失っていてもおかしくない
「うぉぉッ!!」
「フッ! フッ! ハァッ!!」
『ロイター選手の目にも留まらぬ連続突き! しかしシュウ選手、これを一つ一つ確実に捌いていく!!』
『あの連続突きがしっかり視えて、なおかつ捌けてしまうとは……改めてシュウさんの凄さを見せつけられる思いですね』
あのスピードだと、まずもって認識すること自体が困難を極める。
そして、いざ認識できたとしても、今度は体がついていけるかどうかって問題に直面するわけだ。
それをキッチリこなせるシュウはやはり……まごうことなき強者。
ただ、そんなシュウでも……あの連続突きを掻い潜って攻撃を入れに行くまでは難しいようだ。
その辺は、さすがロイターというべきだろうね。
「……ッ!!」
『上手い!!』
『なんと! 前方の連続突きに集中していたシュウ選手を、後方からファイヤーランスが襲う!!』
「……ふむ、これも対処されたか……まったく、やるじゃないか!」
「フゥ……危機一髪でしたよ……」
『シュウ選手! 後ろに目が付いているとでもいわんばかりに、見事ファイヤーランスを捌きました!!』
『うぅ~ん、今のは完璧にタイミングを捉えたと思ったのですが……これはシュウさんの対応力を褒めるしかありませんね……』
今のファイヤーランス……仮に俺が相手だった場合、上手く捌けただろうか……
もしかしたら捌き切れず、魔纏で受けざるを得なかったかもしれないな……
まあ、そうはいっても、俺の魔纏を突破できるファイヤーランスなど、そう簡単に撃てるものではないと思うけどね!
俺としても、そのために日々魔纏の強度を高める努力を欠かしていないわけだしさ!
そう考えると……あえてファイヤーランスに被弾したと見せかけて、ロイターの油断を誘いながら反撃を加えに行くのもいいかもしれない。
とはいえだ……ロイターなら、俺の魔纏の強度を知ってるだろうからなぁ……油断なく連続突きを継続してくるかもしれんね。
「僕も1回戦でシュウさんと対戦したとき、いろいろと工夫を凝らして闘ったつもりだったんですけど……ロイターさん相手にあれだけの対応力を見せることができるとするなら……シュウさんにとっては、それほどのことでもなかったのだろうなと改めて思わされてしまいます……」
「そうですね……僕も2回戦で当たったとき全力でぶつかって行きましたが、見事に跳ね返されてしまいましたからねぇ……あのシュウさんの全てを見通しているかのような視線……思い出すだけでも、ヒヤリとしたものが背中を駆け抜けるのを感じますよ」
ソイルとサンズが、対戦した者特有の感慨深い表情を浮かべながらシュウのことを語っている。
「……ですよね! 凄く分かります!!」
「しかし、そんな対応力の高いシュウさん相手でも……ロイター様ならば、必ず上を行ってくれるはず……!!」
それはサンズの、希望にも似た確信だった。
普段、割と余裕のありそうな物腰のサンズがこうまで深刻そうな様子を見せるとは……それだけ、シュウという男の脅威度が高いことを物語っているといえるだろう。
「くぅ~っ、あんだけロイターが絶妙な攻撃を加えているっていうのに! シュウに目立ったダメージを与えられていないだなんて……マジで信じらんねぇ!!」
「だよな! 普通なら、もう終わっててもおかしくない攻撃の連発だっていうのによ!!」
「でもよ……逆にシュウだって、攻めあぐねているともいえそうだぞ?」
「そうそう! ロイターも、シュウの攻撃をことごとく阻止できているからな……あの攻め切れなさは、ストレスが溜まるってなもんだよ!!」
「ふぅむ……そう考えると、ほぼ思うまま攻撃を放ち切って終われているだけロイターのほうが精神衛生上マシともいえるか……」
「ああ、どちらかというとシュウは攻撃を満足に組み立てられているとはいえず、単発の反撃をちょこちょこ打ってるに過ぎないからな……」
「そうはいうが……シュウほどの実力者なら、そのちょこちょこ打ってる反撃の一発でロイターのポーション瓶を割ることも可能だろうけどな? その証拠に、奴の眼を見てみろよ……あれ、絶対に狙ってるぜ?」
「た、確かに……ここまで距離がガッツリ離れているというのに、なんでか俺まで『ゾッ……』とさせられてしまったよ……」
「うっわ!! ホントだ……ちょっと見ただけで『獲られる!!』って覚悟を決めるしかなくなっちまった……」
「……だろ?」
「あのシュウの眼に正面からずっと晒され続けているだなんて……ロイターの奴もよくメンタルが持つよな……」
「たぶん……大半の奴は、あれだけで戦意喪失……下手したら、気を失っていてもおかしくないだろうさ……かくいう俺も、自信を持って耐え切れるとはいえないし……」
「だからこそ……ロイターも普段より丁寧めな攻撃になっているんじゃないか? アイツって、いつもはもっと大胆に向かって行くタイプだっただろ?」
「まあ、相手が接近戦のスペシャリストであるシュウだからな、基本的に距離を広めに取らざるを得ないというのもあるだろうけど……それだけじゃないってことか……」
ふむ……多くの男子たちが恐れおののいているように、シュウのあの眼……明らかに、普通じゃないもんな……
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