第684話 ほぼ互角だもんね?
「フンッ! ハァツ!!」
「ハッ! タッ!!」
「……さすがだな、シュウ・ウークーレン……この試合に勝つのは、なかなか苦労させられそう、だ!」
「奇遇ですね……僕もそう思っていたところ、です!」
『剣と拳による、両選手の激しい攻防が続いております! 果たして、先に有効打を得るのはどちらなんだ!?』
『どちらも相手の動きがよく視えていますからね……どちらかが有効打を得るには、今しばらく時間がかかりそうです』
ロイターは剣のリーチを活かして、距離をある程度広めにとって攻防を展開しようとしている。
対するシュウは、その距離を詰めに詰めて接近戦に持ち込もうとしている。
そんなわけで、ロイターは基本的に大振りすることなくコンパクトに剣を振るって胸のポーションを狙い、シュウはその攻撃のタイミングを見計らってカウンターを狙っているといったところか……
また、この攻防はゆっくりおこなわれているわけではなく、かなりのスピード感を持ったものなので、とっさの判断ミスが命取りとなりそうである。
とはいえ、そんな判断ミスをロイターとシュウがするとは思えない。
なぜなら、ロイターは常日頃からサンズとの模擬戦で高速戦闘に慣れているし、シュウだって2回戦でサンズとの高速戦闘を制して3回戦に上がって来ているからね……そう考えると、よほどのことがない限りそんな判断ミスは起こりえないだろうと思うのだ。
そこでロイターとしては、サンズが高速戦闘で敗れたことを念頭に置いてのことだと思うが、所々わざとタイミングをずらしたりもしている。
その辺のところは、ヴィーンから学んだテクニックなんじゃないかと思う。
あのヴィーンのテクニックなぁ……俺もマネしようとはしてるんだけどねぇ……
正直、ロイターのほうが再現度が高い気がするんだよね……うぅ~ん! 悔しいッ!!
俺もそのうちきっと! 自分で納得いくレベルのモノに高めてみせるぞ!!
『おぁっと! 突然、シュウ選手の足元から火柱が上がったッ!!』
『シュウさんが距離を詰めようとした瞬間を上手く捉えましたね』
『だが! シュウ選手はサイドステップで難なく躱し、再び距離を詰めて突きの態勢に入る!! しかし、しかしィッ! ロイター選手も剣を構え、そのまま横薙ぎ一閃!!』
「ッ!! ……フゥ……なかなか危ないタイミングでしたね……」
「上手く回避したな……といってやりたいところだが! まだ終わらん!!」
「そう来なくては!!」
『ロイター選手の一閃を大きく後方に跳んで回避したシュウ選手でしたが、それで終わりではなく! ロイター選手の追撃が迫ります!!』
『強力な魔法を惜しげもなくつなぎ技として使えるロイターさんもたいしたものですが……それらの攻撃を一つ一つ的確に対処していくシュウさんも見事というほかありませんね』
まあ、ロイターの魔法は種類が同じだとしても、並の魔法士のものよりいくつもランクが上だろうからね!
だから、たとえファイヤーボール一発でも、必殺の一撃となり得るのさ!!
しかし、スタンのいうとおり……そんなロイターの攻撃をキッチリ対処して見せるシュウも、メチャクチャやるね!!
『ロイター選手の突き! そして流れるように繰り出される斬撃の数々!! しかし、シュウ選手も受けて躱してばかりではありません! お返しといわんばかりに突きや蹴りを合間合間に放ちます!!』
『ふぅむ……紙一重のヒリヒリとした攻防がたまりませんね』
確かに! 2人のギリギリの攻防は、観てるだけのこっちまで熱くなってくるよ!!
「やっぱり、ロイターは凄いな……魔法と剣の組み合わせが巧み過ぎて、あれはもう! 芸術品だよ!!」
「ああ、それに剣の腕だけを見ても、ロイター殿ほど王国式剣術を美しく振るうことのできる者など、王国中を探してもそう見つかるものではあるまい……」
「なんていうかさ……ロイター君には『流麗』って言葉がピッタリくるよね?」
「まあ、あんまりロイターのことなんか褒めたかないが……その辺は認めざるを得ない……」
「フフッ、ロイターさんはおモテになりますからねぇ……やはり、僕らのようなチャンス少なき者は嫉妬心を抱かずにはおれないといったところでしょうか……」
「ハ……ハァッ!? お前みたいな非モテと一緒にすんなって! 俺はイケてんだからな!!」
「またまた、強がりをおっしゃる」
「それはそうと……ロイターも当然のことながら強ぇが、シュウも腹立つぐらいやりやがる!!」
「うん、今のところ……ほぼ互角だもんね?」
「しかもシュウの野郎には、なんというか……まだまだ底知れない凄みみたいなものが感じられるからな……」
「底知れない凄みか……それは俺も感じるところだ……」
「その辺のところはまあ、これまでシュウは武術大会系統に一切出場していなかったからな……そういうのも関係してるんじゃないか?」
「うむ、ロイター殿の闘う姿は何度も目にする機会があったものなぁ……もちろん、日々腕を上げているようだから、それまでと一緒にするわけにはいかんだろうが……」
「ま! どっちも、まだまだこれからだぞって雰囲気を出してるからな……どんな試合が展開されていくのか、じっくり見させてもらうとしようぜ?」
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