第683話 序盤から迫力満点ですね!
『審判の開始の声とともに、ロイター選手! 早速ファイヤーストームの大技だぁッ!!』
『それも、並のファイヤーストームとはレベルが違いますからね、普通ならこの一発で決まるところでしょうが……』
『おぉっと、シュウ選手! 渦巻く炎の中から無事生還し、そのままロイター選手に突進!!』
『しっかりと防御を固めていましたか……やはりシュウさんでしたね』
『とはいえ! それはロイター選手も予測済みだったのか、向かって来るシュウ選手に鋭い突きを放ちます!!』
『互いに胸のポーションを狙い合ったようですが……防御能力の高い2人のこと、きっちりと捌けたようですね』
そうしてロイターとシュウはすれ違い、再び向き合う。
そしてまた、激しい打ち合いが始まる。
『この3回戦第2試合、シュウ・ウークーレン対ロイター・エンハンザルトですが……スタンさん、序盤から迫力満点ですね!』
『はい、初手から一気に決めに行こうという気迫が感じられます』
『初手から一気に……ということはこの試合、意外と早く決着がつく可能性もあったり?』
『う~ん、そうですねぇ……どちらかが一瞬のタイミングを上手くつかめれば、そうなる可能性もあるとは思いますが……』
ふぅむ、実力者の2人だからなぁ……そんな隙を簡単に晒すわけもないだろうし……おそらく、そのタイミングは本当に一瞬過ぎて、ほとんど運みたいなものになる気がする。
となると……この試合も長引くことになるかな?
「ロイター様~っ! 頑張ってくださいませ~っ!!」
「ロイター様こそ王国一のお方なのですから! そんなメガネなど叩きのめしてくださいッ!!」
「そのメガネを……かち割るのです!!」
「ロイター様! 私のサンズ様の仇を取ってください!!」
「いや、アンタのじゃないけどね……まあ、それはともかくとして、負けるな~」
「ロイター様ぁっ! 私の愛のパワーを受け取ってぇっ!!」
「……はぁっ? あなたなんかの愛はロイター様にとって、邪魔になるだけよ! ……だから! 私の愛を受け取ってくださいなっ!!」
「いいえ! ロイター様に必要なのは私の愛よ!!」
「あなたたち、何をおっしゃっているのかしら? ロイター様にふさわしいのは、このわたくしよ?」
「なんですって! 冗談じゃないわよ!!」
「……あんたら、くだらない言い合いなんかしてないで……みんなで仲良く応援したら?」
「「「……ッ!!」」」
うん、ロイターのファンクラブ会員たちは、この試合でも元気いっぱいだね。
それに、サンズのファンクラブ会員もロイターの応援に回っているようだ。
ああ、いや……もともとロイターとサンズのセットでファンっていう子もいるかな。
それはそれとして……やっぱり、ロイターの女子人気は凄いなぁ……
いわゆるガチ恋勢っていうのも、なかなか多いみたいだしさ……
ただまあ、ファティマに強く惹かれているロイターからしたら、さほど嬉しくないことだろうけどね……
「シュウ! 負けんじゃないわよ!!」
「シュウ様がその気になれば! すぐにでも決着ですわ!!」
「そうよ! ロイターなんて、シュウのいないところで優勝しただけの男なんだからね!!」
「そう! ホントそう!!」
「この王国で一番強い男はシュウだってこと、しっかりと理解させてあげるといい」
「ガツンと行って! ビシッと勝つのよ!!」
「シュウこそが! 本物の実力者なんだからねっ!!」
そして、シュウを取り巻く武闘派令嬢たちも、早速応援に熱が入っている。
また、武闘派令嬢たちからすると……昨年の王国武術大会少年の部優勝というロイターの実績は、シュウが出場していなかったからできたことに過ぎないという認識のようだ。
それについては「ロイターをあまり甘く見るなよ?」といいたいところではあるが……俺もロイターと決闘した際、そういうノリで闘ったからなぁ……あんまり他人のことをいえないんだよね……
とまあ、ロイターとシュウの女子人気としては、ロイターのほうが人数は多い……というか、シュウを推しているのは武闘派令嬢がほとんどだからね、必然的に人数は限られてくるといえるだろうさ。
それでまあ、ロイターのほうが女子人気が高いのが影響してか……男子たちは、どっちかというとシュウを応援してるようだ。
まあ、ロイターへの嫉妬ってわけだね。
とはいえ、そうやって嫉妬している暇に魔力操作などの鍛錬をして、自分を磨いたほうが何倍も何十倍も身のためになると思うんだけどねぇ……
しかも、ロイターは現状に満足することなく自分磨きを続けているわけだから、その差は開く一方だし……
いや、一応俺も折に触れて啓蒙活動はしてるんだけどね……それでも、みんなに伝わり切っていないのが歯がゆいところだよ。
そんなことを頭の片隅で思いつつ、ロイターとシュウの戦闘を目で追っている。
もちろん、眼に魔力を込めまくりでね!
戦闘スピード自体は、たぶんサンズとシュウの試合のほうが高速だったと思う。
でも、細かいフェイントとか緩急の付け具合が絶妙だったりするからね……眼に魔力を込めていないと、そのちょっとしたテクニックを見落としそうになるんだよ。
だから、そうやって眼に魔力を込めて、丁寧に試合を観察するというわけだ。
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