第682話 こうして対峙するのは初めてだな?

 まずは恒例の武器選択である。

 そこでロイターは、お決まりのオーソドックスなロングソードを選んだ。

 それに対しシュウは、徒手格闘の専門家らしくオープンフィンガーグローブを選んだ。

 まあ、リーチの面ではロングソードを選択したロイターのほうが有利になるんだろうけど……シュウは、それよりもっとデカい大剣を装備したサンズから勝利を得ているからなぁ……

 そう考えると、武器のサイズは勝敗にさほど影響しないのだろうと思う。


『さて、装備チェックも終わり、選手たちが舞台中央にそろいます……そして、王女殿下から胸ポケットに最上級ポーションが挿入されます!』

「なんていうか……早速あの2人からピリピリした雰囲気が出てる気がするんだけど……」

「おぉっ! お前もそう思うか? なんかよ、今にも荒れ狂いそうな魔力が無理に抑え込められてるって感じがするよな!?」

「うんうん、分かるよ! その感じ!!」

「彼らの魔力に呼応して……僕の魔力も暴れ出しそうだよ……」

「お前のヒョロヒョロな魔力が暴れ出したところでどうってことないぞってイジりたいところだけど……俺もたいして変わらんからなぁ……」

「ま! 多少なりともそういった魔力の流れが感じ取れるようになったのは……やっぱり、魔力操作狂いの影響かな……?」

「だろうね……めんどくさくても彼のいうことを聞いて、魔力操作の練習をやり始めた効果が出ている気がするよ……」

「つーか、そうでもしないと、奴の近くで安心してメシが食えなかったからな……」

「確かに……ときどき急に強烈な魔力圧を放ってたもんね……あれがもう! お腹の底にズドンッ!! って来るんだよねぇ……」

「えぇ……俺は怖いから奴の近くに座らないようにしてたっていうのに……お前らときたら、マジで勇気あるなぁ……」

「ま! なんだかんだ結局は自分のためになるからさ、今からでもオススメしとくぜ!!」

「そっかぁ……まあ、安心してメシも食いたいもんなぁ……となると、俺もそろそろ始めどきかなぁ……?」


 ほうほう、魔力操作の効果を実感し始めている奴らがまた少し現れたようだ……いいね! いいね!!


「それはそうと……あんなにも魔力がバッチバチしている中で平然としておられる王女殿下……さすがでいらっしゃる」

「うむ、全く動じていない……あのお姿を見るだけで、我々が仰ぐべきお方としてふさわしいことが分かろうというものだよ」

「たぶんだけど、あの場に立って堂々としていられる人は少ないだろうなぁ……」

「ああ、少なくとも顔が蒼褪めたり、冷や汗ぐらいはかくだろうさ……」

「やはり……王女殿下だ!」

「そのとおり! 王女殿下万歳!!」

「「「王女殿下万歳!!」」」


 まあ、王女殿下は原作ゲームでもヒロイン筆頭といえる存在だもんね……そりゃあ、貫禄もあって当然だろう。

 そんな感じで盛り上がりを見せている中、王女殿下はポーションの挿入を終えて舞台から降りて行った。


「シュウ・ウークーレン……こうして対峙するのは初めてだな?」

「ええ、そうですね」

「今までこういった武闘大会に参加してこなかったお前が、どういう風の吹き回しかと問いたいところだが……その必要もないか……理由はアレスなのだろう?」

「……確かに、武術大会出場という判断にアレス君の存在が与えた影響は少なくないでしょうね」

「やはりな……これまで見向きもされていなったということだから、私も舐められたものだよ……」

「いえいえ、舐めるだなんて、そんなつもりはありませんでしたよ……ただまあ、僕にもいろいろありまして……」

「いろいろ……か、ふむ……とりあえず、こうして機会が得られたわけだから、まあよしとしておこうか……」

「そうしていただけると幸いです」

「ただ……お前には悪いが、この試合に勝利してアレスと対戦するのは、この私だ!」

「フフッ……ロイター君なら、そうおっしゃるだろうと思っていましたよ……ですが、僕も譲る気はありませんよ!」

「面白い……いいだろう! 全力で行かせてもらう!!」

「はい! 僕も全力でお相手させていただきましょう!!」


 俺(と決勝で対戦する権利)を賭けて2人の男が全力でぶつかり合う……たまらんね。

 というか……俺もあいつらと闘いたいんだよなぁ……

 いや、普段の模擬戦でもいいといえばいいんだけどさ……

 でも、やっぱり、あの舞台で闘うっていうのは違うんだよ!

 なんか、気分がすっごい高揚するんだよ!!


「……さて、2人とも……いい感じで昂ってきてるみたいだし、そろそろいいかしら?」


 ここで、審判のお姉さんからロイターとシュウに声がかかった。

 それに対し、2人も準備オーケーと返答する。

 こうして、準備は全て整った。

 あとは、審判のお姉さんの開始の声が上がるのを待つだけ……


「うん、いいわね……それじゃあ、両者構えてっ!」


 そういって審判のお姉さんが右手を天に掲げ、振り下ろすと同時に……


「始めっ!!」


 審判のお姉さんの掛け声とともに、ロイターとシュウの試合が開始されることとなった。

 はてさて、どんな試合が展開されることになるのか……とっても楽しみだよ!

 2人とも、頑張れよ! 俺と闘うためにな!!

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