第681話 こんなに欲張りな男だったっけ?
「アレス&ヴィーンのご帰還だぞ!」
「……ただいま」
席に戻ってきた。
また、ラクルスやテクンドの前を通りかかったとき、ねぎらいの言葉や頷きをもらったりもしながらだった。
その際マトゥも、ヴィーンに対してよく頑張ったなって感じで満足そうに言葉をかけていた。
こういった闘った者同士の間に芽生える友情……とってもいいよね!
「おお、帰ってきたか」
「お2人とも、いい顔をしていらっしゃる」
「ヴィーン様! 最高に輝いてました!!」
「ヴィーン様の闘いぶりに! 深く深く心が震わされましたよぉ!!」
「ヴィーン様、そしてアレスさん……お2人の闘いは、きっといつまでも色褪せることなく! 僕の心の中で光を放ち続けます!!」
「そうだねぇ、あれほどの試合を見せてくれれば僕にはもう……いうことなしだよ!」
「2人ともお疲れ様! とってもステキだったよ!!」
「ええ、これからもっともっと大きく成長していく期待を感じさせる、いい試合だったと思うわ」
そういって、夕食後の模擬戦メンバーたちに出迎えられた。
うん、なんか戻ってきたなって感じがするね。
そして少し落ち着いたところで……
「……シュウ・ウークーレンさん……ロイター・エンハンザルトさん……3回戦第2試合が始まりますので、準備をお願いします!」
呼び出し係の人が、2人を呼びに来たのだった。
「……ふむ、私の出番が来たようだ」
「ロイターさん! 思いっきり応援してますよ!!」
「僕のぶんも、頑張ってきてくださいねぇ!!」
「ロイターさん……どうか、油断されませんように!!」
「……期待している」
「ロイターのカッコいいところ! 会場全体に見せつけちゃって!!」
「ロイター君! ふぁいとっ!!」
「シュウは、なかなかの強者……どう闘うか、楽しみにさせてもらうわ」
「ロイター様……ご武運を!!」
「ロイターよ……決勝の舞台で待っているぞ?」
「ああ、皆の期待に応えよう……そしてアレス……この試合に勝って、お前との再戦を果たすぞ! 楽しみにしていろ!!」
「フフッ……ハハハハハ! いいぞ! その意気だ! だが、再戦しても勝つのは、この俺だがなァ!!」
「フン! そう高笑いをしていられるのもあとわずかだ、せいぜい今のうちに笑っておくといい!!」
「いうじゃないか! これは、ますます面白くなってきたぞ! ハハハハハ!! ……ただ、今回お前が対戦するシュウは、ソイルとサンズを破って勝ち上って来た男だからな……俺のことばかり見ていて、目の前の強敵から意識を逸らさんよう気を付けろよ?」
「ロイターさん……」
「ロイター様……」
「フッ……それは私も承知している、心配には及ばんよ……さて、それでは行ってくるとしよう、ではな!!」
こうして、俺たちから激励を受け、ロイターは舞台へ向かうのだった。
そしてまた、シュウに視線を向けてみた。
すると奴は……今回も、のほほんとした笑顔を見せている。
しかしながら、奴の笑顔のその奥に……鋭さも感じ取れるのだ……
なるほど、シュウの奴め……かなりマジだな……
ロイターよ……これは心してかからねば、大変なことになるぞ……
そんなことを考えていると、シュウから視線が送られてきた……その一瞬、ゾクリとさせられてしまった……
いやはや、これは困ったな……
これまで育んできた友情から、ロイターを応援したいところなのだが……シュウとも闘ってみたいっていう気持ちが、どんどん膨らんでくるんだ……
嗚呼! 決勝の舞台で! ロイター闘いたい!!
でも! その気持ちと同じぐらい! シュウとも闘いたい!!
うぅ~む……俺って、こんなに欲張りな男だったっけ?
前世では、もうちょっと遠慮がちなシャイボーイだった気がするんだけどな……
かといって、これは……原作アレス君成分が強く前面に出てきたってわけでもなさそうだし……
まあね! 結局ね! この世界には、俺から見て魅力的な男が多過ぎるってことなんだよ!!
ちょっと見渡せば、次々に現れてくるし!
ちょっと刺激してみれば、これまたどんどん開花していくし!!
もう! まさにパラダイス!!
この世界は! 最高だ!!
こんな世界に送ってくれた転生神のお姉さん! この上ない感謝を捧げます!!
「……アレスさん、興奮してしまう気持ちも分かりますが……もう少し抑えましょう」
「……ん? おお、サンズよ……お前とも、あの舞台で華々しく対戦したかったものだよ……」
「アレスさん……そうですね、僕も闘ってみたかったです……」
「それならね、僕だってアレスと闘いたかったさ! いやぁ~もうちょっとだったのになぁ、惜しかった!!」
「俺も1回戦に勝ってればなぁ……チャンスはあったんだけどなぁ……」
「僕も、ロイターさんと対戦して満足はしていますがねぇ……それでも、欲をいえば……」
「そうだね……僕も闘ってみたかったなぁ……」
「……あの舞台でアレスと対戦できた私は、これ以上のない果報者だな」
「まったく……男女で分かれていて、最初から機会の用意されてない私たちの身にもなって欲しいものだわ」
「それはまあ、残念だけどねぇ……それはそれとして、この試合が終わったら私たちの出番なんだから! 頑張ろうね、ファティマちゃん!!」
「そうねぇ……私たちも、それなりに楽しめるといいのだけれど……」
そういってファティマさんは……相変わらず余裕たっぷりだった。
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