第679話 感謝の攻防
『まさか、まさかの! ヴィーン選手のレミリネ流!!』
『しかも二刀流とは……ヴィーンさんの引き出しの多さには驚かされますね……』
『そして! 二刀流同士となったことで、両者の手数も大幅に増えていきます!!』
『さらにいえば、単なる乱打ではなく、術理に則った打ち合いですからね……実に見応えがありますよ』
俺との模擬戦を重ねることで学んでいたとはいえ、ここまで身に付けていたとは……面白い! 面白いぞ!!
「ヴィーンの奴、あの魔力操作狂いと互角に渡り合えてるぞ! すっげぇ!!」
「知らんかったけど……ヴィーンって模倣能力が高いんだな……」
「そういや、さっきのセテルタとの試合でも、ソイルの阻害魔法を使ったりしてたみたいだもんなぁ?」
「ふぅん? それだけ観察能力に優れているってことなのかねぇ?」
「でもよ……そのレミリネ流ってのも幻の剣術で、今となっちゃ魔力操作狂いが本家って感じなんだろ? そんなん相手に、あえてレミリネ流で挑むとか……ヴィーンの戦術ミスなんじゃねぇの?」
「ああ、確かに……模倣技で本家に勝てるわけないよな?」
「いや、弟子が師匠を超えることだって普通にあり得ることなんだ……一概にはいえんだろうさ」
「まあ、結局その辺は才能とか努力量によっていろいろと変わってくんだろうなぁ……」
「ひょっとすると、ヴィーンの奴……もう勝ち負けがどうとかって話じゃなく、この試合で全てを出し切ることに切り替えたんじゃないか?」
「ほう? 全てを出し切る……か」
「なるほどね……それなら納得だよ」
「なんにせよ……ヴィーンが悔いなく試合を終えられたら、それでいいんじゃね?」
「ま! それもそうだな!!」
「……ふむふむ、レミリネ流剣術には二刀流もあるのですか……いいですわね!」
「ええ、お2人の攻防……まるで満開の華のようだわ……」
「レミリネ流……学ぶのであれば、二刀流のほうが魅力的かもしれませんね」
「わたくしは、そうねぇ……一刀流のほうが凛とした美しさがあって好みだわぁ」
「あらあら、もう皆さん……レミリネ流を学ぶ方向で考えていらっしゃるのね?」
「まあっ、私ったら! いつのまに……」
「ふふっ……よろしいのではなくて? それに、これからは乙女にも剣術の似合う時代が到来するわ……いいえ! わたくしたちがその時代を築き上げるのよ!!」
「剣術乙女……いいですね! やりましょう!!」
「そうね! 男たちだけに剣術を独占させておく必要などないわ!!」
「今こそが時代の転換点……ええ、ええ! 面白くなってきましたわねっ!!」
「そして……弱き男に『ノー』を突き付ける時代でもある!」
「まあっ! なんてワイルドな発想なの!?」
一部女子たちが妙な盛り上がり方を見せているが……まあ、レミリネ流剣術に興味を持ってくれたのなら幸いである。
また、そんな人々の興味を惹いたのは……ヴィーンの使うレミリネ流が美しかったからというのもあるだろう。
「ヴィーン! ここまで魅せてくれるだなんて、やはりお前は凄い奴だよ!!」
「……それは……アレスあってのこと! ……きっかけはソイルからだったが……アレスとの出会いによって……今の私がある! ……その感謝を……この攻防にぶつけるのみ!!」
「そうか! なら全部ぶつけて来い! 受け止めてやるから!!」
「……ああ! ……そうさせて……もらう!!」
『……美しい……この試合に男のロマンが詰まっている……そういっても過言ではないでしょう……!』
『感謝の攻防ですか……これまた独特な……』
「……はぅっ! だめ……美し過……ぎ……」
「……ッ!! まだよ! まだ失神するには早過ぎるわ!!」
「そうよ! 気を強く持って見届けるのよ! 男たちの美しき在り方を!!」
「アレス様とヴィーン様ったら……見せつけ過ぎですわ……」
「そうねぇ……私たちのような訓練された者でなければ……当てられてしまっても仕方ないわねぇ……」
「……申し訳ありませんが……わたくしの手を強く握ってくださらない? このままでは……わたくしも……気を失ってしまいそうで……」
「はい、私でよければ……喜んで」
「ありがとう……ございます」
「ふふっ……いえいえ、こちらこそ」
煌めく刻も永遠には続かない……
そう、ヴィーンはもう最後の気力も尽きかけている……
でも……
「ヴィーン! ほら!! まだやれるだろ!?」
「……ああ……まだ……」
「もっともっと! 俺は受け止められるぞ!!」
「……ああ……も…………っと……」
「そうだ! お前は強い! 最後の一瞬まで出し切れッ!!」
「…………さ……い…………ご………………の……ッ!」
『ヴィーン選手……最後の気力を振り絞って剣を振り上げ………………』
『……最後まで……よく闘いましたね……』
ヴィーンは剣を振り上げたまま気を失い……そのまま前のめりに倒れるところだった。
倒れるときまで前のめりとは……さすがだ、ヴィーン!
そして俺は、ヴィーンが倒れきる前に抱き留めた。
「この一戦、深く心に刻むとしよう……ありがとう、ヴィーン」
「……」
気絶しているはずのヴィーンが……微かに笑った気がした。
「……ふむ、ここまでか…………勝者! アレス・ソエラルタウト!!」
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