第678話 準備していたかのような手際

「……うぉぉぉぉッ!!」

「限界を超えたところから、さらにパワーを捻り出してきたか! いいぞ! 凄くいいッ!!」

『斬撃! 斬撃! 斬撃!! ヴィーン選手の猛攻が止まりません!! いったいどこにそんな力が残っていたのかぁぁぁぁぁァッ!!』

『ヴィーンさんに眠っていた潜在的な力が、アレスさんの……そして会場中から聞こえてくるヴィーンコールによって刺激され、目覚めたのでしょうね……素晴らしいです……』

『潜在的な力に目覚めたヴィーン選手! さぁっ! どこまで魅せてくれるんだァァァァァァァァァァァッ!!』

『とはいえ……対するアレスさんにはまだ余裕があるようなので、さらにヒートアップする必要がありそうですね……』

「負けんな! そのまま行け、ヴィーン!!」

「もっともっと! アツくなるんだ!!」

「押せ押せ! どんどん押してけぇッ!!」

「あとちょっとだ! 勝利の栄冠をつかみ取ってみろぉッ!!」

「そうだぞ! あとちょっとで! あの魔力操作狂いに勝てるんだぞ!? なら、やることは決まってるよなッ!!」

「見せてくれ! 余裕たっぷりな魔力操作狂いの蒼褪めた顔をッ!!」

「ヴィーン様! ステキよ! 頑張ってっ!!」

「ヴィーン様~っ! 私の想いも受け取ってくださいませ~っ!!」

「知らなかった……ヴィーン君が、こんな凄い人だったなんて……だから! もっと凄いところを見せてくださいッ!!」

「ヴィーン! ヴィーン!!」

「「「ヴィーン! ヴィーン!!」」」


 ヴィーンへの応援の声がどんどん強まっていく……


「ヴィーン様! あの夏の訓練の日々を、思い出してください!!」

「ヴィーン様! ヴィーン様なら、まだまだいけますよぉッ!!」

「ヴィーン様! ヴィーン様の力は無限大です! だから! どこまでも出力を上げていけますッ!!」

「いいよ! その調子! 僕に勝った男の底力! 存分に見せ付けてあげるんだ!!」

「2人とも! もう少しだよ! 頑張ってっ!!」

「その程度で満足しては駄目、もっとよ……もっと大きくなって見せなさい」

「まったく、実に楽しそうに闘っているものだ……こちらまで燃えてくるじゃないか……」

「ええ、そのとおりですね……あんな試合ができて、羨ましくなてきますよ……」


 ソイルたちのヴィーンに対する応援も聞こえてくる。

 そしてロイターよ、お前のいうとおり……この試合、とっても楽しいぞ!


「アレス兄ちゃん! オイラたちが付いてるよ! だから頑張って!!」

「アレスのアニキのほうが強ぇんだ! 絶対勝つんだ!!」

「そうそう! あんちゃんは最強だもん!!」

「お兄様~負けないで~!!」

「俺たちの想い! 伝わってくれ~っ!!」

「兄ちゃん! 兄ちゃん!!」

「「「兄ちゃん! 兄ちゃん!!」」」


 ヴィーンへの声援が強まっていっているが……リッド君たちのように、俺へ声援を送ってくれる人たちもいる。

 もともと負けるつもりはないが、そうした俺への想いにしっかりと応えたいところだ。

 そしてヴィーンも、さらにさらにと勢いを増してきている。


「凄い! 凄いぞヴィーン!!」

「……ハァァァァァッ!!」

『ヴィーン選手の猛攻が続きます! ですが! 押されながらも、一つ一つ対処していくアレス選手!!』

『う~ん……徐々にアレスさんの防御を上回り始めているようにも見えるのですが……崩し切るまでヴィーンさんの力が持つのか……』

『さぁっ! タイムリミットの迫るヴィーン選手!! 果たしてこのまま攻め切れるのか!?』

「ヴィーン! ヴィーン!!」

「「「ヴィーン! ヴィーン!!」」」


 確かに! ヴィーンの勢いには目を見張るものがある!!


「……だが! このまま押し負けてやるほど俺は優しくないぞ!!」

「……ハァァァ! ……ッ!!」

『あぁーっッ! ヴィーン選手の剣が払いのけられ! 胴がガラ空きになったッ!!』

『ふむ……』

「……まだだ!」

「ほう!」

『なんと! ヴィーン選手! 左手に氷の剣を生成してアレス選手の止めの一振りに対応ッ!!』

『先ほどのセテルタさんとの試合経験を活かしているか……氷の剣を準備していたかのような手際ですね……』

『確かに! 右手の剣を払いのけられるのが想定内だったとでもいうような、そんな隙のなさでしたね!!』

「ヴィーンの奴! やるじゃん!!」

「いいぞ! ヴィーン!!」

「そのまま行っけぇ! ヴィーン!!」

「ヴィーン! ヴィーン!!」

「「「ヴィーン! ヴィーン!!」」」


 ……それにしても……ここにきて、急に二刀流だと?

 それに、この動き……


『……おや? なんとなくですが……ヴィーン選手の動き……王国式の動きではないような?』

『はい、どうやらそのようですね……これはおそらく……アレスさんのよく知る動き……』

「……ヴィーンよ……お前! ここにきてレミリネ流を使ってくるのか!?」

「……私も……模擬戦を重ねる中で、それなりに学んでいたからな!」

「面白い! ならば俺も二刀流でお相手しようじゃないか!!」

『おぉっと! ここでアレス選手も左手に氷の剣を生成!!』

『まさか、ここでレミリネ流同士の対戦が観られるとは……』


 ヴィーンよ……お前は、本当に面白い奴だよ……ますます気に入った!!

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