悪役転生者は自由人～原作ゲームのシナリオを無視して行動したいと思います～

第677話 頑張るのも結構だけどさ……

「……クッ！　まだ……だ!!」

「ほう、まだ頑張るか！　いいねぇ！　その調子だ!!」

『おそらくヴィーン選手、とっくに限界を超えているのでしょう……それでも！　気力を振り絞って戦闘を継続しています!!』

『限界を超えて、よく耐えているといいたいところですが……その気力がどこまで持つのか……』

『ここでふと思ったのですが……この段階に入ってしまえば、アレス選手が勢いで押し切ってしまうことも可能ではないのでしょうか？』

『そうですねぇ……確かに、可能ではあると思います……ただ、そうはいっても相手はヴィーンさんですからね……雑に攻めてしまうと、思いがけない反撃を受ける恐れがあります』

『なるほど、思いがけない反撃ですか……それは慎重になる必要がありそうですね』

　ナウルンのいうとおり、ここまでくれば、あとは力づくでゴリ押しすれば勝つこと自体はできると思う。

　まあ、スタンのいうとおり、ヴィーンにはまだ反撃の秘策が残っているのかもしれないが……それも含めて、押し切れると思っている。

　では、なぜさっさと決めてしまわないかというと……それは、この時間が一番の学びタイムだと思ったからだ。

　というのが、この「限界を超えたところで、あとどれだけ頑張れるか？」ってところが、これからのヴィーンの成長にとって非常に役立つと思うのだ！

　だからね！　簡単に楽にはしてやらないのさ!!

　それにさ、こういった追い詰められた状況で放つ最後の一撃っていうのは、計り知れないものがあるからね……

　俺としても、あえてそういう攻撃を頂いて、今後の糧としていきたいと思っているのだ。

「う～ん、スタンはああいってるけど……ヴィーンの奴は、もう無理じゃないか？」

「頑張るのも結構だけどさ……正直、降参を宣言してもいいレベルだと思う……」

「そうだなぁ……だいぶフラついてるもんな……」

「それに……どうせ魔力操作狂いのことだから、ポーション瓶を割りに行かないだろうしなぁ……」

「ええ、降参しないのであれば……あとは気を失うまで闘わされるに違いないでしょうね……」

「まあ、寡黙だかなんだか知らんけど、あの普段からクールぶってていけ好かないヴィーンが白目を剥いて気絶するところは見てみたいぜ!!」

「ブフッ……俺もちょっと、見てみたいかも……」

「……お前ら2人……最低だな？」

「ホントにねぇ……頑張ってる人に対して、クズ全開でしょ……」

「どうせなら、お前らが予選で魔力操作狂いと当たって、気絶させられとけばよかったのにな？」

「あ～ムリムリ！　コイツらじゃ、気絶するまで闘う根性ないって」

「むしろ、実際に対戦するまで行けるか？　たぶん、媚びたような笑みを浮かべて、降参するだけで終わるんじゃね？」

「……いや、それどころか、彼と目が合っただけで気を失ってしまうのでは？」

「あぁッ!?　なんなんだテメェら！　あの根暗野郎の肩を持つつもりか!!」

「お、俺だって……魔力操作狂いとた、闘うぐらい……で、で、できるさ！」

「ハァ……別に、肩なんか持ってないぞ？」

「うん、普通に思ったことをいっただけ」

「そりゃ、性格的に合う合わないはあるだろうけどさ……でも、ああやって本戦の……しかも3回戦まで残ってるんだからさ、認めるべきところは認めなくちゃでしょ」

「まあね……ヴィーンってさ、いつも黙ってて何考えてるか分かんないところもあるけど……ああいうアツいところもあるんだっていうのは、一つ受け止めてあげたいよね？」

「クソが！　さっきまでテメェらだって『降参したほうがいい』とか訳知り顔でいってたくせによ!!」

「そ、そうだ、そうだ……！」

「ああ、それはいったけど……それは身を案じてのことで、バカにしていってたわけじゃないからな？」

「うん、実際にこれ以上はムチャだって気持ちもあったし……」

「ま！　なんにせよ、ヴィーン君がまだ頑張るっていうんならさ、僕らもちょっとくらい応援してあげようよ!!」

「しゃ～ね～なぁ～！　いっちょ応援してやっか!!」

「さすがに無理だろうなって気はするけど……もしかしたらがあるかもしれないもんね！」

「そうだなぁ……2回戦のときだって、多くの奴はセテルタが勝つと思ってただろ？　そう考えると、ヴィーンは持ってる男なんだよ！　だから、この試合だって意外とやってくれるかもしれないぞ!?」

「よっしゃ！　それなら、リキ入れて応援すっぞ!!　それ！　ヴィーン！　ヴィーン!!」

「「「ヴィーン！　ヴィーン!!」」」

「ヴィーン！　ヴィーン!!」

「「「ヴィーン！　ヴィーン!!」」」

「……チッ……クソ共が……勝手にやってろ……どうせ、根暗野郎の負けは確定してんだからな……」

「お、俺は……えっと……」

「……ねぇ、君はさ……思わず笑っちゃっただけなんでしょ？　それなら、そこだけ謝っといて、君もヴィーンの応援をしたらどうだい？」

「……ッ!?　そ、そうなんだ……別に悪気があったわけじゃないんだ……だから、ヴィーン！　すまなかった!!」

「うん、それでいいんじゃないかな……それじゃあ、君も一緒に！　ヴィーン！　ヴィーン!!」

「あ、ありがとう……じゃあ、俺も……ヴィーン！　ヴィーン!!」

「……チッ……どいつもこいつも、クソうぜぇ……」

『……おぉっと！　場内のヴィーンコールが勢いを増したところで元気を得たのか！　ヴィーン選手も勢いづいて攻勢に出る!!』

『ふむ……これがヴィーンさんのラストスパートといったところでしょうか』