第673話 ようやく3回戦

「……アレス・ソエラルタウトさん! ヴィーン・ランジグカンザさん! 3回戦第1試合が始まりますので、準備をお願いします!!」


 小休憩を経て、俺たち本選進出者や観客たちも席に戻り、そろそろ3回戦が始まろうかとみんなが意識し始めたところで、呼び出し係の人が俺とヴィーンを呼びに来た。

 ようやく3回戦、別の言い方をするなら準決勝……

 そして、これに勝てば決勝……

 ということは武闘大会というお祭りで、俺の出番もそろそろ終わりが近付いてきているってことだな……

 となれば「もっとできたはず……」なんて心残りのない試合にしたいものだ。

 そんなことを思いつつ……ヴィーンの肩に腕を回して組んだ。

 そしてバシバシと軽く肩を叩きつつ、声をかける。


「よっしゃ、ヴィーン! 俺も気合を入れてくから、お前も悔いを残さないよう、思いっきりぶつかって来いよ!!」

「……思いっきりぶつかって……か、ああ、そうさせてもらうとしよう」


 とまあ、俺とヴィーンが言葉を交わしたところで、ロイターたちも声をかけてくる。


「まあ、相手はアレスだからな……遠慮せず、全力で行くといい」

「それに、出し惜しみなんかすると……きっとあとでアレスさんにメチャクチャ文句をいわれるでしょうからね……」

「つまんない闘いぶりだと、アレスも文句をいうだろうけど……ヴィーン! 君は僕を倒して3回戦に進んだんだからね! 僕のぶんもしっかり闘ってくんなきゃ、アレス以上に僕が怒っちゃうよ!?」

「ヴィーン様! 頑張ってきてください! 俺たちも力の限り応援してますから!!」

「ヴィーン様! おそらく、この試合が今日一番の頑張りどころですよぉ!!」

「ヴィーン様! アレスさんも! 最高の試合をしてきてくださいね!!」

「うん、アレス君とヴィーン君の試合なら、きっと素晴らしいものになると思うからね! 楽しみにしてるよ!!」

「準決勝と呼ぶに値する試合を期待しているわ」

「うむ! それじゃあ、行ってくるぞ!!」

「……では」


 こうして俺とヴィーンは、いつものメンバーから激励を受けつつ舞台へ向かって移動を始める。

 また、このとき……


「アレスさん! さっきオレに見せてくれた凄いところ、また見せてくれよな!!」

「ヴィーン……俺に勝ったお前が、ダセェ試合すんじゃねぇぞ!!」


 王女殿下の取り巻きたちが集まっている席の前を通過する際に、先ほど俺と対戦したラクルスや、ヴィーンと対戦したマトゥが声をかけてきた。

 それから……


「アレス・ソエラルタウト……」

「おう! お前のぶんもビシッとキメてくるからな!!」

「……ああ、期待……している」


 テクンドも声をかけてきた。

 しかも、さっきよりちょっと言葉が増えている!

 まあ、ホントにちょっとだけだけどね!!

 でも、それでいいんだ、別に言葉の数が多い少ないが問題じゃないからね!

 俺たちは1対1の勝負を経て、通じ合った仲なんだからさ!!

 そんなことを思いつつ、さらに進んでいると……


「アレス兄ちゃ~ん! 3回戦も頑張ってね~!!」

「もちろんアレスのアニキなら! 絶対勝つって分かってるけどな!!」

「そうそう! あんちゃんは最強だもん!!」

「お兄様~今回も勝利をお祈りしておりますねぇ~!!」

「アレス兄のカッケェところ! 3回戦でも見せてくれよぉ~っ!!」

「これに勝ったら決勝! そして次も勝って、アレスあにぃが優勝!!」

「そうとも! 間違いねぇ!!」

「あと少しだぁっ!」


 リッド君たちからも声援を受け、さらにヤル気満々だ!

 というわけで、手を振って応えた。

 こんな感じで、今回も会場中の知り合いたちの声援に手を振って応えながら舞台に向かった。

 そうして、武器選択に移行。


「……よし! 君に決めたッ!!」

「……私は、この剣にしよう」


 今回もやはり、俺は木刀を選んだ。

 そしてヴィーンは、オーソドックスなロングソード。

 あとはいつもどおり装備チェックを受けて、舞台中央へ。

 こうして舞台中央にそろったところで、お馴染みの王女殿下によるポーション挿入という儀式。

 ここで俺もヴィーンも、特に感激してますって感じを出していないので、これまた恒例の対応チェックで辛口の採点をもらったりしている。

 そんなことをのんびり考えているあいだに、王女殿下はポーションの挿入を終えて舞台を降りて行った。

 さて……これで踏むべき手順も全て踏み終えたし、あとは審判の試合開始の掛け声を待つばかりといったところか……

 そうして、移動を始めてから徐々に戦闘モードに気持ちを高めていっていたのを、最高レベルに持っていく。


「……よし、いい感じだ」

「……行ける」

「ふむ……2人とも、準備が整ったようだな?」


 そこで、審判の先生が確認の声をかけてきた。


「はい! 準備万端、整っております!!」

「……同じく、こちらも」


「相分かった……それでは、両者構えて!」


 そういって審判の先生が右手を天に掲げ、振り下ろすと同時に……


「始め!!」


 審判の先生の掛け声とともに、俺たちの試合が開始されることになった。

 さて、ヴィーンよ! 楽しませてもらうぞ!!

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